[stage] 長編小説・書き物系

eine Erinnerung aus fernen Tagen ~遠き日の記憶~

悲劇の少女―第4幕― 第21章

 (69日目深夜)
 10日前からの雨は、まだ止む気配がなかった・・・。
町の人々の興奮もようやく冷め、長き支配から逃れた人々は、
それぞれがまた、平和な日常へと戻っていた・・・。

 だが、宿屋に泊まっていた、旅人達は未だ、動こうとはしなかった・・。
その青年は、夜の闇の中、雨の音を聞きながら、天井を見てベッドに入っていた。

 この1週間、眠ることが出来ずにいた・・・。
あまりに一度に出来事が起こりすぎて、まだ、整理がついていなかった・・・。

 ・・・しかし、その青年にも睡魔が襲いかかってきた・・・。
青年は、眠気に負け、静かに目を閉じ、同時に急速に意識が遠のいていった・・・。



 (70日目早朝)
 薄い意識の中、青年は足音に気付き、ゆっくりと起きあがった。
うっすらと、回りが明るくなり始めてはいたが、
まだ、他には誰も、起きている様子はなかった。
 青年は、足音の方向へ歩いていった・・。
足音は、ベランダへと出ていったようだった・・・。

 まだ、薄着1枚では、肌寒かったが、そのお陰で眠気は消えた・・・。
青年は、辺りを見渡していた。まだ、雨は勢いを衰える様子はなかった・・・。

「・・・マーシャ・・。そこにいたのか・・・。」
「あ・・、アーシェルさん・・。」

 アーシェルと呼ばれた青年は、マーシャと呼ばれた少女の元へ近寄り、座り込んだ。

「どうしたんだ?・・・こんなに早く。」
「ごめんなさい。・・誰も起こさないようにして出てきたつもりだったんですけど。」
「・・・別にいい。・・・ここ10日間寝てなかったから・・。」

 2人は外を眺めていた・・。

「・・・・雨、・・・やまないな・・。」
「ええ・・・。」
 マーシャは、心なしか、沈んだように見えた。気まずい雰囲気が流れていた・・・。



「アーシェルさん・・・。」
「何だ・・?」

「・・・私、もう、この生活を壊したくない・・・。
 ―――もう、旅を続けたくないんです・・・。」


「・・・。」
 俺は答えるのに困った。その気持ちは、俺も全く同じだった。
ベッドで横になりながら、人々が、雨の降りしきる中、
踊り騒いで、喜び合っているのを、夜通し聞きつづけていると、
そのうち、この平和な日常を壊すのが怖くなってきていた・・・。

「・・・マーシャ。・・・でも、俺は、旅を終えるつもりは、・・・ないんだ。」

 俺は、空を見上げた。

「―――隊長が、最期に言い残した言葉・・・。
 『探してくれ・・・、俺の・・・。』って。・・・頭から離れないんだ。
 ・・・当ても何もないし、どんなものか、検討も付かない・・。
 ―――でも、・・・探さなきゃ、気がすまない。
 ・・・そこまでして、探したかったものが一体何なのか・・。」


 そこで、一度、俺は話を切った。

「バカだよな・・、俺、・・・こんな性格だから。
 いつも、知らなきゃ気がすまない・・って。」

「・・・でも、もし、見つからなかったら?」
「その時は、その時・・・。でも、きっと諦めないだろうな。
 ・・・根が単純な奴だからな、俺・・。」

「・・・でも、私は・・・。」

 俺は、うつむいたマーシャに向かって、話しかけた。



「・・・旅していれば・・、全然動かないより・・、絶対に楽しいと思う。
 ―――この街の人は、平和の方がいいって言うに決まっているだろうが、
 なんていうか・・、俺の性に合わないって言うのか・・。
 ・・・動いていないと、落ち着けないんだ・・。
 ―――マーシャが羨ましいよ。」

「そんな・・。私がうらやましいだなんて。・・私なんか、・・・いなくたって。」
「何言ってんだ?・・・俺達はずっと今まで、仲間だったじゃないか!!
 ・・・もちろん、これからだって・・・。」

「私がいたら、アーシェルさん達に・・・。」
「気にすんなよ。―――困らせたり、迷惑かけちまうのは、・・・お互い様だろ?」

 私は、黙っていました。でも、心に決めました。
「私・・・、やっぱり・・・、アーシェルさん達と旅を続けたい!!」
「そうか・・・。―――ん?・・もう、朝か・・・?」

 周りが、朝の陽で橙に染まっていきました。
「雨・・・、あがりましたね。」
 私は、アーシェルさんの方に振りかえって、微笑みました。
「―――そ、そうだな・・・。」

「・・・アンタ達、なに、朝からイチャイチャしてんのよ!!」



「うっ・・・、シーナ!!」
「シーナさん!!」
「・・・マーシャ、あんた10日間も寝てたのよ。分かってんの?!
 ・・・ったく、後で、宿代請求するからね・・・。
 ―――なんだか、・・・マーシャが笑うの、久しぶりに見たわ。
 ・・・雨も上がったし、・・・アーシェルも半病人じゃ、なくなったみたいだし。」

「半病人ってなんだよ?」
「・・・あのね、10日間もベッドで横になって、考え事してボーッとしてる奴、
 半病人って以外に、なんて呼べばいいのよ!!」

「・・・心配かけたな。」
「全然。」
「・・・。」
「あれ?・・・車が止まった・・。」
 この宿に、1台の車が止まるのが目にとまった。



「おい、・・・おまえら、起きてたのか・・。」
「ディッシェム!!」
 俺は、後ろを指差しながら、そこにいた3人に言った。
「・・・客だぜ。」
「お客様・・・ですか?」
「・・・めずらしい事もあるんだな。」
「で、こんな朝早くに、どういう奴なの?」
「いちいち説明させんじゃねぇよ。下りて自分で見りゃあいいだろうが!!
 ・・・女だよ。女が1人で来てんだ!!」

「女?・・・どういうことよ?誰かの知り合い?・・・アンタの?」
「下りてみればわかるだろう?・・・行くぞ。」
「はい!!」






 (70日目朝)
「・・・メリーナさん!!」
 私は、1階にいたその女の人を呼びました。
「マーシャ・・・。―――メリーナは、私の姉さん。・・・私はサリーナ・・・。」
「あ・・、サリーナさん・・・。」
「絶対、わざとだろ?・・・勘違いにしちゃあ、わざとらしすぎねぇか?」
「で、こんな朝に、あんたが急いでくる。・・・なんか、あるわね。」
「はい。・・・マーシャ。・・・それに、みなさん。
 ―――ロッジディーノの、ロジニの集落・・・セニフさんが、
 みなさんをお呼びになりました。・・・至急だそうです。」

「セニフ。・・・だれだ?」
「私が、前にお世話になった人です。―――この、結晶を私にくれた・・・。」
 私は、幻の雫の結晶を取り出しました。
「至急って・・・、いったいいつ出発すればいいんだ?」

「明日です。」

「・・・な、なんだと?!・・・明日出発だと!?」
「明日の朝、港からロッジディーノ行きの船が出ます。
 ・・・至急ですから、絶対に遅れないでくださいよ!!」




「・・・ずいぶん、急だな・・・。どうしろって言うんだ・・。」
 シーナの奴は、急に立ち上がってマーシャに話しかけ始めた。
「1日あれば、・・・買い物できるわね。・・・やっぱさ、
 私って、ナイフが2本ないと、カッコがつかないわ。
 だからさ、マーシャ!!・・・ついてきてね。」

「・・・は、はい。」
「やっぱり、こんな平和な街のショップに、女1人でナイフを買うって、
 ・・・絶対ヘンでしょ?・・・だから!!」

「そ、その・・・、2人でも、十分・・・。」
「何か言った?」
「い、いえ・・。」
「じゃ、決まり。・・・えっと、明日の朝よね。・・・分かったわ。」

 それだけ言って、マーシャと一緒に出ていきやがった。
「・・・客の前で、なんて奴なんだ。」
「まぁ、いいんじゃないか?・・・シーナって、そんな奴だろ?」
「それじゃあ、俺達は、さっそく・・・、協会にでも行くとすっか・・・、
 アーシェル―――いや、モンスターズハンター、アーシェルさんよ!!」

 そう言って、俺とアーシェルも、外に出ることにした。



 この街の様子も、ホントに変わってた。みんなが、今までの街を変えようとしてた。
「あの・・、すみませーん。・・・だれか、いらっしゃいますか・・・?」
 中からは、ため息ばっかりが聞こえてきた。
「・・・だれかそこにいるのかい?」
「ちょっと、・・・ナイフ、2本売ってくれるかしら?」
「―――果物のナイフなら、・・・売り切れだよ。」
「そ、そういう、ナイフじゃなくてさ・・。」
「・・・ん、あんた!!ディッシェムの連れの!!」
 突然、店の人がカウンターのところまで走って出てきたわ。
「今、泥棒持ってってくれセール、やってんだ!!
 常識を覆すような破格の値段!!おつり同然のお金で、武器防具、なんだって
 売ってやる。・・いや、売らせてやる・・、・・・・かわせてやってやる・・・。」

 だんだん、そいつの勢いがなくなってった・・・。
「・・・とにかく、買ってください。―――はやく、この武器を処分して、
 街の人達の必需品を、そろえる、ショップを構えるんだ!!・・・だから!!」

「大変なのですね・・・。」
「だから、・・・お客さん。なるべく、・・・コソっと、お願いしますよ。」
 確かに、なんとなくだったけど、背後から視線を感じてた。

「―――思ってたより、相当。」
「・・・変ですよね、私達・・・。」

「で・・、ナイフ―――ですね・・・。超高級最上級品、めったに入荷しないけど、
 めったに売れない、・・・プラチナナイフ!!」

「へぇ、いいじゃないの。破格の値段なんでしょ?いくらよ?」
「・・・値段は、―――驚けよ!!・・・たったの、80000D$!!」



 私は、突然シーナさんにロッドを奪われてしまいました。
「ひ、ひぇぇぇ。あ、・・あんた、・・・み、みんな、見てますよ・・・。」
「あ、そう。みんなの面前で死にたい?!値段、4桁ほど、言い間違えたのよね?」
「・・・4桁ですか?!」
「む、ムチャな―――。」
「しぶといわねぇ。マーシャ、なんだっけ?あの、スゴイ技。こいつに・・・」
「わ、わ、わかりました!!・・・で、では、―――8・・・0、」
「ほら、金、もう出してんだから、さっさと渡す。武器、売り払いたいんでしょ?!」
 間違いなく、シーナさんは、8D$を持ってました・・・。そして、
これ以上、言う事聞かないなら、わかってんでしょうね、という顔をしていました。

「・・・も、ももも、もってけ、この、泥棒野郎!!!」
「毎回、アンタに感謝するわ。サンキュー!!」
 シーナさんは、いやいや8D$をおいて、ナイフを手に取りました。
「ところで・・・、これ、・・本物でしょうね?」
「し、失礼な!!・・・に、偽物なんか、ここには置いてない!!
 なんだったら、試してやろうか?!偽物なら、あとかたもなく溶けちまうよ!!」

「8D$も出したってのに、何、勝手な事言ってるわけ?!焼き殺すよ!!」
 突然、シーナさんは、バーニングスラッシュの構えをとりました!!



「シーナさん!!ここは、ショップなのですよ!!冗談はやめてください!!」

「あれ・・・、炎が、―――出ない。」

「・・・本当ですね。どうしてでしょうか、―――アツッ!!!」
 マーシャは、いきなり、ナイフを触って、勝手にヤケドしてた。
「確かに、暖かくは、・・・なってるんだけど。」
「あ、あんた・・・ひょっとして、いわゆる、・・魔法戦士って奴か?」
「・・・魔法戦士?」
「・・・それなら、炎出すなんて、無理だぜ。
 ・・・武器ってのは、使い込んで、初めて、その主の力を受けるからな。」

「主の力・・・?」
「・・・こっから南西にある、クリーシェナード大陸・・・。
 ―――まぁ、滅んじまったけど、・・・その大陸の奥地に、あんたみたいな、
 炎を使う、『炎の民』ってのがいたって、聞いた事があるけどなぁ・・・。」


「―――炎の民・・、知ってるの・・あんた?」

 私は、カウンターに乗り出して、そいつに問い詰めた。
「ま、これでも、昔、いたからな。―――今じゃ、あそこは、『死の大陸』だぜ。
 ・・・立ち入った野郎は、誰も戻ってこねぇしな。」

「・・・クリーシェナード、炎の民・・・。どうしても、・・・思い出せない。」

 それから、私達は、ショップを外に出たわ。
「シーナさん?これから、どうしますか?」
「まだ、時間あるわね。そうだ、ちょっと寄るとこがあるの。いいわよね?」
「え?・・・あ、はい。」






 (70日目昼)
「アニキ・・・、どうするんすか・・、盗賊になんか成り下がって・・・。
 しかも、いきなり、・・・こんな、ヤバそうな本なんか、盗んじまって・・・。」

「バカ、生きてくには、これしかねぇ。―――売りゃぁ、明日は生活できる・・・。」
「誰か、俺らを狙ってたらどうすんだよ?」
「・・・廃棄物があるじゃねぇか・・、三流やそれ以下なら、それで十分だ・・・。」
「ま、まさか・・・俺達狙われてなんか、・・・ねぇだろ・・。」
「―――ま、まさか・・・、冗談だろ。・・・気配もしねぇし、
 だいたい、俺達なんか捕らえたって、何の得になるんだよ・・。」

「あ、あしたになったら、こんなヤバイ所からもっと、安全なところで、
 盗賊になれるんだぜ・・。―――あとすこしじゃねぇか!!」


「―――そこまでにしないか、お前ら。」

 3人は、突然の背後からの声にいささか戸惑ったようだが、同時に振り向いた。
「・・・見つかっちまったか。」
「なぁ、あんた・・・。モンスターズハンターさんだろ!?」
「そうだ。」
「俺達、人間だぜ!!・・・俺達を捕らえられるのかよ?」
「お前達に用はない。本を返すなら、何も危害を加えないし、戦う気もない。」

「―――なら、・・・俺達が何しても、・・・構わネェって事か・・・。」



 (70日目朝)
「アーシェル、それにディッシェム・・・、だな。」
「ああ。」
「にしても・・、本当に、ディッシェムみたいな殺し屋が、・・・務まるのか?」
「テメェみたいな、三流か四流かもわかんねぇ殺し屋が、
 ここの事務所の所員になってんだ。・・・わけねぇだろ。」

「それにしたって、・・・俺ら、殺し屋、いや・・・、かつての研究員達の扱いも、
 この街じゃ、ひどいもんだよなぁ。・・・立場が逆転しちまったんだからな。」

「・・・他の連中はどうしてんだ?」
「・・・盗賊に成り下がりやがった奴が多いな。奴ら、研究所本部が崩れた時、
 ありったけの研究用モンスター持って、消えやがった・・・、
 ・・・それで、この山のような手配書だ。・・・依頼する奴も勘弁して欲しいぜ、全く。
 ―――どうでもいいコソ泥とかさ、・・・ヒドい野郎は、兄弟喧嘩止めろだって。
 俺達の対象は、モンスターだってんだ。便利屋じゃねぇっつうの!!」

「ま、しんどいだろうが、ガンバレよ。―――やり残したこともねぇみたいだし、
 もう、俺達は行くぜ。・・・邪魔したな。」


「―――お前の後にあるのは、・・・なんだ?」
 アーシェルの奴は、落ち着いて切りだしやがった。
「―――伊達に、何年もやってる野郎じゃねぇようだな・・・。
 ・・・こいつらは、ディッシェムで言う、二流の殺し屋共の持ち出した、
 いわゆる、『廃棄物』の処理リストだ。―――とくに、こいつらは、相当ヤバイ。」




 (70日目昼)
 3人は隠し持っていた、スライムをばらまいてきた。
「悪いが、テメェはここでくたばっちまえ!!」
「・・・やはり、殺し屋か・・・。―――ハンティング開始!!」
 俺は、アーチェリーを空高く向け、アローをつがえ、魔力を送る!!
「やっちまえ!!てめぇら!!」
「天より落つる無数の矢の雨よ・・・、すべてを貫く刃となれ。レインアロー!!」
「な、スライムどもが、・・・や、やられちまう?!」
「そんな、バカな?!―――テメェは・・・、いったい。何者なんだ!!」

「・・・アーシェル。モンスターズハンターだ!!」

 3人の殺し屋は、突然、気絶し倒れこんだ。
「―――同じく、・・・ディッシェム。・・・モンスターズハンターだ。」

「・・・ディ、ッシェム・・・だ、と―――。」
 俺は、ディッシェムの近くへと寄った。
「どうだ、あるか?」
「ちょっと、待ってろ・・。」
 ディッシェムは、その本を取り出した。
「―――こいつか?」
 それは、一冊の古びた図鑑のようだった。
「・・・いったい、どんなスゲェ事が書いてあるってんだよ?」
「見るんじゃない。・・・人のものだろ?・・・ハンティング終了。―――行くぜ。」
「おうよ。」



 俺達は、ディシューマ連合の方まで戻ってきてた。
事務所の待合室に、そのばあさんは座ってた。
「どうだ?・・・きちんと取り返せたのか?」
「ビビらすんじゃねぇよ!!大した奴じゃなかったじゃねぇか!!」
「で・・、取り返してきたのか?」
「これだろ?」
 俺は、本を取り出して、ばあさんに見せてやった。
「あんたら・・、取り返してくれたのかい?」
「これ、・・・ばあさんのか?」
「そうだよ・・。さぁ・・・、お金を渡すから、・・・私の家へ来なさい。」
 俺とアーシェルは、中にいる奴の方を向いた。
「・・・依頼人の言葉には甘えるんだな。」
「ああ。・・・それなら、行こうか。」

 俺達は、ばあさんの案内で、その家に行った。
「ここが、ばあさんの家か?」
「そうじゃ。・・・よく、取り返してくれたの。」
「・・・んなことよりよ・・。」
「報酬じゃの。わかっとるよ。・・・ほら、約束の1000D$じゃ。」
「―――ま、ありがとよ。・・・じゃ、行こうぜ、アーシェル。」
「ディッシェム、少し待て。」
「な、なんだよ?」



「おばあちゃん?・・・ところで、その図鑑は、いったい?」
「あんたは・・・、魔法を使うのかい?」
「魔法?・・・・魔力は持ってるけど、こいつに使う事が多い。」
 俺は、アーチェリーを指した。
「・・・魔法戦士・・・、なんじゃな。」
「魔法戦士・・・?」
「魔力を、武器に応用して使うことじゃ・・・。これはのォ、
 世界中になっておる、木の実を調べる事が出来るんじゃ。」

「木の実・・・あんなもん、みんな同じじゃねぇのかよ?」
「素人目には、そうとしか見えん。じゃが、その中には、さまざまな魔法や、
 アイテムと合成したりすると、効果が高まる物が混じっとる。こいつは、
 魔法を使う者にとってなくてはならん物、・・・盗賊如きに使われる覚えはないの。」

「・・・わかりました、ありがとうございます。・・・ディッシェム、行こう。」
「い、いいのか?!」
「ああ。もう、依頼主の用件は終わったからな。では、失礼します。」

 俺達が、家から外へでて、少し歩き出したとき、急に呼び止められた。
「あんたたちは、・・・どうやら、信じても、いい輩のようじゃな。
 ・・・これは、・・・あんたらにやろうと思っとるが、受け取ってくれるか?」


 俺達は、立ち止まり、振り返った。






 (70日目夕方)
「しかし、それは、おばあちゃんの大切な物なのでは?」
「・・・これを持ってるとなァ、あぁいう輩に狙われての・・・。」
「だけどよ、・・・それ、本当にもらっていいのかよ?
 ・・・もし、俺達がそんな連中だったらどうするんだよ?」

「―――もし、そうじゃっても、もう、構わん。・・・疲れたんじゃ。
 ・・・それに、・・・そっちのあんたは、少なくとも、そんな連中とは思えない。」

 ばあさんが指してるのは、俺じゃなくて、アーシェルの方みてぇだった。
「そう言われるのであれば、構いません。危険から護るのも仕事です・・・。」
「・・・あんた、普通のモンスターズハンターとは、・・・どこか違うのォ・・。
 ―――名前はなんというのじゃ・・?」

「―――アーシェルと申します。」

「アーシェル・・。早速じゃ、ためしに、これも一緒にやろう。」
 ばあさんは、アーシェルに図鑑と、何かの木の実を渡した。
「早速、調べてみるとええ。」
「・・・リックの実、ですか?」
「おお、そうじゃ。きっと、何かの役に立つじゃろうて。
 よいか?・・・偶然、見つけた木の実が、一体、何であるかを調べるのに、
 この図鑑は使うんじゃ。目当ての木の実を探そうと思っても、
 ・・・そう簡単に見つかるもんじゃないからの。」

「ありがたく使わせて頂きます。・・・では、お元気で。」
「・・・じゃ、ばあさん。あばよ!!」
「がんばるんじゃぞ!!」



「・・・もう、・・・日が傾いてきたな。・・・どうする?もう、宿に戻るか?」
「そうだな。アーシェル、先に戻ってろ。俺、寄りてぇとこがあるからよ。」
「待てよ、・・・それなら、俺もついていこう。まだ、夜には早い。」
「なんだよ、ついてくんのかよ。」
「俺が、ついて行ったら都合の悪い場所か?」
「別に、そんなとこじゃねぇけど・・・。ま、それなら、行こうぜ。」

 俺達は、レイティナークから、南東の方へと歩いていった。
「さてと、・・・そろそろ見えてきたかな―――」
 俺と、ディッシェムは、ほとんど同時に物陰に隠れた。
「―――向こうも、気付きやがったみてぇだな。・・・警戒してやがる。
 どうするよ・・・、先に動いた方の、負けだぜ。
 ・・・向こうも、相当のやりてみてぇだしな。」

「―――出た瞬間に、俺がアローを放つ。・・・ディッシェムは、
 そのアローの背後から攻撃を開始するんだ。」

「それが、一番手っ取り早ぇな。」
「いくぞ!!」
 俺は、アーチェリーにアローを番え、路地に飛び出す!!



「あぁ?」「えっ?」
 どういうわけか、そこにいたのは、アーシェルさんでした。
「な、何してんだ?」
「ちょ、ちょっと、あんた!!・・・何してんのよ!!」
 シーナさんが、イライラしながら出てきました。
「あら?・・・ひょっとして、さっきの、あんたたちだったの?」
「けっ、ビビって損しちまったぜ。・・・なんでテメェらがここにいんだよ?」
「あんたこそ。」
「決まってんだろ。」
「それなら、立ち話するのは、あとにしようじゃない。」
 それから、私達は、4人でその場所へと歩いていきました。



「・・・え、ひょっとして、あれは・・?」
 孤児院の前に、誰かが立っていたわ。・・・間違いなくリサお姉ちゃんだった。
「リサ!!」
「シーナ・・。シーナ!!ディッシュ!!マーシャちゃんにアーシェルくん!!」
「帰ってきたぜ。」
「お姉ちゃん、・・・ずっと待ってたの?」
「あなたたちが、やってくれるって、ずっと信じてたわ。・・・よくがんばったわね。
 ―――あなたたちの事だから、どうせ10日くらいしてから、
 ひょっこりと顔を出すに違いないって思ってたのよ。」

「ウソだよ・・。お姉ちゃん、お兄ちゃん達が出て行ってから、
 毎日、ドアでお兄ちゃん達の帰りを待ってたんだから。」

「な・・、何言ってんのよ?!」
「あ、ティシ君だ!!元気だった?」
「今、夕ごはん、食べてるんだよ!!今日は、シチューだよ!!」
「そうよ!!・・・さぁ、疲れたでしょ、・・・あがりなさい。」

 私達は、それからおいしいシチューを食べ始めたわ。
「でも、よかったわ・・・。もう、二度と帰ってこないんじゃないかって、
 ずっと、心配だったんだからね!!」

「何言ってんだ、・・・絶対、この国を救ってやるって言っただろ?!」
「ふふ、そうよね。」
「それに、これで、お姉ちゃんも孤児院をやめなくて、すむのよね?」
「ええ。・・・みんな、あなた達のお陰よ。・・・ほんとうに感謝してるわ。」
 それから、いろんな話で、盛り上がってたけど、私は、お姉ちゃんにこう言った。

「―――お姉ちゃん、・・・私、・・・また旅に出るつもりなの。」



 リサは少し驚いた表情を浮かべてたけど、すぐに話し始めた。
「やっぱりね。・・・きっとそう言うとおもってたわ。」
「リサ・・、それで、俺ももう少し、こいつらの旅に、
 ついて行ってみようって思ってんだ・・・。」

 リサは、少し黙ってたみてぇだけど、すぐに答えた。
「私があなたたちを止める権利はないわ。・・・でも、せめて旅立つまでは、
 ゆっくりとここで、休んでいきなさいね。」

「・・・明日の朝。・・・一番の船で、ロッジディーノに行くわ。」
「明日―――。・・・なんで、そんな急に?」
「どうしてもいかなきゃ行けないところがあるの。・・・できるだけ、早く。」
「ゆっくりしていきたいけど、・・・また、今度の時にな。」
「せめて、今日だけは、ここに泊まっていきなさい。」
「ああ。・・・今日は、お言葉に甘えさせてもらうか・・・。」

 俺達は、シチューを食べ終わってから、ベッドに歩いて行った。
でも、結局、誰もすぐに寝付けねぇみたいだった。
「・・・明日にはこの国とも、お別れか。」
「いつか、必ず戻って来れらぁ。」
「みんな、それぞれに自分の目標に向かって歩いていれば、いつの日か、
 それに近づく事が出来る。・・・旅はまだ、始まったばっかりだ。」

「でも、セニフさん、・・・いったい、私達に何を話すのでしょうか?」

 いつの間にか、俺達は、一日の疲れで、眠り込んじまってた。


2004/10/14 edited(2004/03/02 written) by yukki-ts To Be Continued. next to