[stage] 長編小説・書き物系

eine Erinnerung aus fernen Tagen ~遠き日の記憶~

悲劇の少女―第2幕― 第14章

 (44日目 夜)
 砂漠のキャラバンで大陸を横断するには3、4日はかかるって話だったわ。
「もっと早くトンネルを抜ければ、もっと先まで行けたのよ!!
 あんなトロトロ歩いてるから・・・。」

「これ以上急いでも、仕方がない。」
「ああ、もう、わかったわよ!!」
 私達は、トンネルを抜けて、ティメヌ盆地の集落まで来ていたわ。
「でも・・・また、3人で旅が出来るんですね!!」
「そうね。また、アーシェルなんかと一緒にいなくちゃなんないなんてね。」
「そうだな、俺も20日間、1人でのんびりと過ごせたからな。」
「のんびりとですって・・・、どれだけ、私が・・・」
「心配しててくれたのか、俺を?」
「う、うるさいわよ!!誰が?!」
「もう、2人とも、けんかしないでください!!」
「ああ、もういいわ!!さっさとアンタは部屋に引っ込むのよ!!
 マーシャ、部屋戻るわよ!!!」

「・・・は、はい。あ、アーシェルさん!!」
「どうした?」
「おやすみなさい!!」
「・・・ああ、ゆっくり休めよ。」



 (46日目 昼)
 私達はティメヌ盆地の集落までやってきてた。
「キャラバン・・・誰も乗っていませんでしたね。」
「そんなやたらめったら、海を越えようって人がいないんでしょ?」
「だが・・・本当に、誰もいないな。」
 最初にここに来た時も、さみしいところだなって思ってたけど、
今日は、その時とは比べ物にならないくらい、誰もいなかった。
「とにかく・・、港に行きましょ。」
 港まで行ってみても、やっぱり、誰とも会わなかった。
「・・・どうなっている。」
「それに、船が・・・ありませんね。」
 港だっていうのに、船が一隻も見当たらなかった。
「ちょっと・・・これじゃ、私達・・・。」
「こうなれば、まず、誰かいないか探すべきか・・・。」
 私達は、それから港の近くのある建物の中に入った。
「誰か・・・いらっしゃいませんか?」
「・・・やっぱり、誰も・・・いないわね。」

 私たちは諦めて出て行こうとした。
でも、マーシャとルアートはその場から動こうとしなかった。
「本当に・・・誰もいないのですか?」
「ちょっと、マーシャ?何してるの?」
「私達は・・船でセーシャルポートまで行かなくてはならないのです!!
 お願いします!!船を・・・船を出してください!!」

「マーシャ・・・、誰かいるのか?」
「お願いします!!」
 すると部屋の奥から1人の男が出てきた。
「あなた方が・・・国王のおっしゃられていた、アーシェル様ご一行ですか?」
「あ、ああ・・俺が、アーシェルだが。」
「お待ちしておりました。船も既に用意しております。」
「教えてくれないだろうか?一体、なぜ、誰もいないんだ?
 それに、なんで、すぐに出てこなかったんだ?」

「セーシャル海峡のすぐ向こうに、既にディシューマの兵が集まっています。
 やがて、セーシャルポートが制圧されるようなことになれば、ここは、
 大陸で最も危険な場所となります。そこで、この集落近辺の者は、
 遠くの地へと離れるよう指示しました。」

「そうか・・・。だが、それならば、もっと多くの兵を集めて、
 戦いに備えるべきでは・・・。」

「王は、戦いを避けようとお考えです。そして、そのための最後の
 希望として、あなたがたの行動を見守るようにとおっしゃられました。
 ですが、用心のためとは言え、あなたがたが本人であるかどうかを
 見極めるのに、時間がかかったことはお許しください。」


「ああ、わかった。・・・だが、・・・1人で、大丈夫なのか?」
「・・・いや、ここにはあと5人がいます。ですが、既に何人かが、
 船でセーシャルポートへ向かいました。その者達が、帰らないのです・・・。」

「いつだ?」
「もう5日になります。こうして、少ない人数で固めている理由は、
 ディシューマに刺激を与えないようにすることです・・・。
 だが、ディシューマは一向に動こうとしません・・・。」

「動かない?」
「とにかく、こちらとしては、今、どういう状況なのかを知らなければなりません。」
「つまり、私達が行って、どうなってんのか教えてあげればいいんでしょ?」
「はい。お願いします。船は、この建物の裏にあります・・・。」
「わかった。すまない。」
「・・・なぜ、私達の場所が・・?」
「この子が教えてくれました。・・・それに、私はあなたの顔を見た事があります。」
「そっか、5人だけでも大丈夫なわけね・・・。
 あんた、トンネルん中にいた、修行施設の人間の1人じゃない。」

「いえ、王は私達等より、たった3人のあなた方を信用なさっています・・・。」
「行ってきます。待っていてください。」
 私達は、その後、船で静かにセーシャルポートに向かった。



「こうして、再び集まる日が・・・来てしまいましたね。」
 辺りは深い夜の闇に包まれていた。その中に、3人の者は集まっていた。
「まぁ、このまま・・やられるわけにゃ、いかんからなぁ。
 わしには、やらねばならんことが、まだ山のように残っとるからなぁ。」

「運命・・・か。」
「もう1人―――来るはず・・・じゃったのになあ。」
 大地を風が吹きぬける・・・。
「もう、止めることも、逃れることも・・・出来ないのだからな。」
「あの者のように、先に逝ってしまえば、・・・楽じゃろうけどの。」
「私達が・・・運命の結果を、・・・左右するのですから。」
「ふぅ・・・、でも、私は、これでよかったと思っている。」
「あんたも・・・変わったのぅ。」
「自分でも分からない。でも、あの人との約束は守りきれた。そう思っている・・・。」
「何言っとる・・・。あの者が、逝った時に、・・・もう、約束など、
 やぶっておるんじゃ。・・・まだ、なぁんにも・・・終わっちゃない、
 ―――いや、始まっても、おらんのだからねぇ。」

「そろそろ・・・運命の刻限ですね。」
「おでましのようじゃな。」
「私達は守り抜く。・・・あの約束と、・・・2人の人を。」






 (46日目 夜)
 セーシャルポートの街が見えてきた頃には、夜になってたわ。
「また、ここに戻ってきちゃったわね、マーシャ。」
「はい・・・。」
「何だ・・・あれは?」
「あ、あれは!!」
 アーシェルとマーシャは、街に下りたっていた、たくさんの飛行艇を指差していたわ。
「村を襲った・・私の、私の村を・・・。」
「とうとう、つながったわね。」
「ガーディア・・・。」
 ゆっくりと船は港に入っていったわ。
「よし、船を付けた。下りるぞ。どこに、ディシューマ軍がいるか分からない。
 慎重に行った方がいい。夜の闇に紛れよう。」

「今回ばっかりは、そうした方がいいかもね。」
 私達は、武器を持って闇の中に紛れ込みながら、先に進んでいった。
「いるわ。兵士が3人。港の入り口に・・・。」
「様子を見ろ、それから、別の入り口を探すんだ。
 ここで騒ぎを起こしても仕方がない・・・。」

「あるわけないじゃない、そんなもの。斬っちゃえばいいのよ。」
「気付かれたらどうするんだ?!」
「うるさいわねぇ!!じゃあ、どうするってのよ!!」

「2人とも、声が大きいです!!!」

「誰かいるのか?!」
「侵入者だ!!侵入者を発見した!!!」
「もう、マーシャ!!大声出してんじゃないわよ!!」
「気付かれたか・・・仕方ない。シーナ、行くぞ!!」
「わ、私が・・・悪いのですか?」
 私は、一気にその3人をぶった斬った。でも、もう見つかっちゃうのは
時間の問題になってたわ。



「港の方で何かがあったらしい、行くぞ!!」
 街の中には、黒服の兵士の人達がたくさんいました。
「このままじゃ、つかまっちゃうわよ!!」
「とにかく、街の中心・・・本拠に向かうぞ!!」
 私は、ふと思いついてシーナさんに尋ねました。
「・・・街の人は、どうされたのでしょうか?」
「この際、関係ないでしょ?!今は、私達のことを心配するの!!」
「で、でも!!」
「兵だ!!」
 アーシェルさんは、すぐにアローを放ちました。
それからすぐに、私達は走り出しました!!
「数が多いな。・・・3人じゃ、ちょっと辛いか?」
「ぜいたく言ってる場合じゃないでしょ!!」
「アーシェルさん!!ダメです!!」
 私は、前からも後ろからも兵士の人達が来ていることに気付きました。
「はさまれたか・・・。」
「こうなれば、暴れるしかないわね・・・。」
「ヘタに体力は消耗したくないんだがな。どうすればいい?!」

「マーシャ・・。」



 俺はその時、誰かがマーシャの名を呼んだような気がした。
「シーナ・・・、マーシャを呼んだか?」
「呼んじゃないわよ。それどころじゃないわ。」
「アーシェルさん?どうしたのですか?」
「マーシャ!!」
「は、はい!!だ、誰ですか?」
「こっちよ、こっち!!」
 声のした方向の建物には、1人の女性がいた。そして、マーシャに
手をふって呼びかけていた。
「知り合いか?」
「はい。」
「行くしかないな。」
 俺達は、その女性のところに急いで駆け寄った。
「やっぱり、マーシャだったわ・・。」
「・・・メリーナさん。」
「『さん』はやめてって言ったわよね。」
「ごめんなさい。」
「時間がない、話は後だ。中に入るぞ!!」
 俺達は、その女性に連れられて建物の中を奥へと走っていった。
「一度路地に出るわよ。それから、他のみんなのとこに合流するわ!!」
「皆さんは無事なのですね?!」
「今のとこはね。」
 俺達は、その女性に連れられ、倉庫のような場所の地下へと入った。
「着いたわ。でも、もうここも、安全じゃなくなって来たのかもね。」
 奥には、街の者らしき人々が食事を取っていた。
「メリーナさん、あ・・、メリーナ・・・。
 そ、その・・・いったい・・・どうされたのですか?」

「まったく・・・わからないのよ!!いい迷惑よ、ホントに!!」
「助けてくれたみたいね。ありがと。私はシーナって言うの。
 これからしばらくの間、よろしくね。」

「俺はアーシェルという。自己紹介が遅れたが、許してくれ。」
「誰もそんなくだらないこと、気にしてなんかないわよ。」
「2人とも、私の味方です。」
「そっか。それじゃ、こちらこそ、よろしくお願いするわ。」
「だが、この状況を・・・どう打破する?」
「そういえば・・・サリーナさんは・・?」



 メリーナって女の子の顔が急に暗くなってった。
「サリーナね。・・・行方不明なの。」
「ええ?!」
「さっきはね、私が見回りだったの。でね、サリーナも同じように、
 見回りに行ってた。だけど・・・帰ってこなくなっちゃった・・。」

「何かに巻き込まれたのか?」
「分からない・・・。でも、この状況じゃ、探しに行くなんて出来ない・・。
 どうすればいいの・・、私は・・・どうすれば・・・。」

 メリーナは顔に手をあてて涙を耐えてた。
「でも・・・マーシャがいるのよね。・・・それなら、きっと・・・。」
「・・・見回り、俺の番だな・・・。」
 男がメリーナの横を通って、外に出て行ったわ。
「とにかく、まずは作戦を立てよう。それからだ。」






 (46日目 深夜)
「・・・もう、かれこれ1週間になるわ・・・。
 食事とかは、なんとか調達できるけど、みんなイライラしちゃってるの・・・。」

「さて・・・、どうしたもんかな。」
 少し間があいてから、マーシャが話し出した。
「あの人、まだいるのでしょうか?」
「あの人?」
「私を・・いえ、私達を狙っている・・・」
「・・・そういえば、ここにいたのよね。」
「それも確かに、気になるな。」
 俺は、そう言ってから、メリーナの方に向いて話しかけた。
「メリーナ、ここを占拠してる連中・・・まだ、何もしていないのか?」
 その後、少し間があいた。
「目立ったことは何もしてないの・・、だから困ってるのよ!!
 ・・・下手に動けないから。」

「ダメだ・・・、目的が見えなければ、こちらも動けない。」
「あんたねぇ、じゃあ、どうするってんのよ?!」
「焦っても仕方がない・・・。」
 時間だけが過ぎ去っていった・・・。



「まったく・・・待つのは、嫌いなのよ!!」
 私はがまんの限界になって、立ち上がってた。
「ほんの何時間もたってないだろう!!ここにいる人達は、もう1週間いるんだ。」
「それにしたってね、さっきの見回り、遅いわ、遅すぎるじゃない!!」
「ええ、1時間で交代のはずなんだけど・・・。」
 そう言ったあと、メリーナの顔が急に青くなってたわ。
「まさか・・・」
「これ以上、行方不明者を出したら、いけない。・・・よし。」
 アーシェルが立ち上がった。私は、それを見てすぐに止めたわ。
「な、何する気よ?!」
「1人で行く、止めるな。」

「あ、そう。それじゃ、がんばって。」
 アーシェルはそのまま外に出てった。
「シーナさん、よかったんですか?!」
「1人で行くって言ってるんだから、1人で行かせてあげればいいの、それだけよ。」
「でも・・・」
「3人いっぺんに行くわけにはいかないの。わかるでしょ?」
「・・・。」
 その時、入り口から1人の男の人が入ってきた。



「みんな、心配かけて、すまなかった・・・。」
「あんた・・・何してんのよ?」
 シーナさんは、その男の人に一気に詰め寄っていったわ。
「どうしたって・・、交代の時間に遅くなって・・・」
「まいったなぁ・・」
「ちょっと、それって・・・」
「入れ違いになっちゃったってこと?」
「おい!!アーシェルが、お前を探しに行ったんだぞ!!」
「な、なんだって?!」
「マーシャ、あなたはここに残って。私が行くわ!!」
「はい。」
「ちょ、ちょっと待て!!」
 シーナさんは、もう外に出てしまったようでした。
「奴等の動きが変わった・・そう言おうと思ったんだが・・・。」
「動き?」
「兵士どもが・・・街の中心に集まってきてる・・・。」
「それってどういうこと?」
「・・・何か、たくらんでるって事以外・・・何も。」
「アーシェルさん・・・。」



 俺は、暗闇につつまれた街の中を走っていた。
ただ、最初に着いた時以上に、辺りは静まり返っていた。
兵士の数が明らかに減っていることに気付いた。
「いったいどこに・・・。―――何かあったな、これは。」
 俺は、街の中心の方へと歩いていった。
しばらくして、遠くから騒ぎ声が聞こえてきた・・・。
 俺は、その騒ぎの方へと向かっていき、すこし高い場所からその場所を見下ろした。
「なんだ?!」
 そこには多くの黒服の兵士がいた。そして、その兵士たちは、
飛行艇から下りてきた奴等を迎えていた。
 俺も、その中の1人を見続けていた・・・。
「・・・ガーディア。」
 ガーディアを、何人もの黒服が取り囲んでいる。とても近づけるとは思えない。
そんな中の1人に、少年がいた。
かなりの長さがあるスピアを装備する少年だった・・・。

「マーシャを狙ってる奴ね・・・きっと。」
 俺は突然の背後からの声に思わず振り返った。



「シーナ、どうしてここに?」
「人騒がせな話よ。あの男・・・あんたと入れ替わりに戻ってきたの。
 そんなことより・・・。」

「ああ。―――ガーディアは、・・・ディシューマと関わっていたようだな。」
「何か話し始めたわね・・・。」
「皆・・・よく集まってくれた。
 この日を―――ディシューマの民、そしてお前たち。・・・この俺を含め、
 皆が待ち望んだ、忌まわしき歴史を・・・運命を打ち砕く日が・・・。」

 周りの連中が歓声を上げてた。
「新たなる時代の・・・幕開けだ。」
「隊長・・・何を言ってるのよ?」
 ガーディアは、それからスピアを持ってる殺し屋を呼びつけたみたいだった。
「だが―――それを、邪魔する者達を、消さなくてはならない。」
 その声に、私と・・・きっとアーシェルもビクッとさせられた!!
冷たい汗が流れてくるのを感じるみたいだった・・・。
「アーシェル・・・ガーディア・・・隊長の・・・声。
 私・・・覚えてるわよ、・・・あ、あの・・・声―――。」

「あの時とは・・・相手が違うだろうけどな。」
 スピアを持ってる殺し屋がゆっくりと立ち上がった。

「ゆけ、あの2人を・・・『アーシェル』と『マーシャ』を、
 ―――この世から消せ!!」

「仕事は・・・必ず、成功させる。」






 (46日目 深夜)
 俺達は、とにかくマーシャ達のところへと走っていた!!
「はっきりしたわ!!やっぱり、待ち伏せしてたのよ。
 そして、ディシューマが・・・アンタ達を狙ってる理由も!!」

「遅かれ早かれガーディアには会おうと思っていた。
 形はどうであれ、俺は、ガーディアのところへ行く!!・・・だが、今は―――。」

「いちいちグダグダ言わなくたっていいのよ!!やることはひとつ!!」
「マーシャのところだ!!」

 俺は、隠れ家へと戻り、一気に扉を開け放った!!
「みんな、奴等が動きだした・・・」
「あんたたち・・・何してんのよ!!!」
 中の様子の変化に愕然とした。黒服達が既に部屋を占領していた。
「これで・・・隠れてるつもりだったのか?」
「どうする、斬る?」
「仕方が・・・ないか。」
「よくみれば、お前・・・アーシェルとかいう奴だろう?」
「自分から、進んで殺されに来るか・・・、めでたい奴だ。かかって来い!!」
「行くぞ!!」



 アーシェルが動き出そうとした、そのすぐ後だったわ。
黒服の兵士たちが急に、灼熱の炎に包み込まれてた・・・。
「な・・・なんだ?」
「あんた・・・。」
 奥からメリーナが出てきたわ。
「へへ・・・どう、私の魔法の威力・・・。」
「へぇ・・、やるじゃん・・・あんた。」
「う・・・っ。」
「な、・・何よ!!メリーナ・・・どうしたのよ!!」
 メリーナがその場に倒れた・・・。背後の入り口から黒服が入ってきてた。
「く・・・奥にも黒服か!!」
「あのようなガキ1人に、・・・殺らさせるか!!」
 その黒服は、アーシェルにショットガンを向けた!!
「や・・めな・・・・さい!!!」
 メリーナがまた炎の魔法を唱えたわ!!
でもすぐに、黒服はショットガンをアーシェルに向けるのをやめて、
メリーナにつかみかかった!!
「おバカさんね・・・私が、目的じゃないでしょうに。」
「歯向かう人間は、皆殺しだ!!」
「マーシャを頼む!!」
 アーシェルはメリーナや街の人達の方にかけよっていった!!
アーシェルの声で、顔を布で隠していたマーシャが私の方にかけよってきた!!
「アーシェル!!あとは任せたわ!!」
「相手は・・・この俺だろうがっ!!!」



「・・・さてと、ひと暴れするわよ!!!」
 待ち構えていたみたいに4人の黒い服の人達が取り囲んできました。
シーナさんはいつものように、クロスブレイカーで1人ずつ倒していきました。
「うう・・・この、女・・・。」
「シーナ・・・さん・・・。」
 マーシャの声に振り返った。それから、マーシャの震えてる指の先を見た。
「煙・・?あの連中・・・火なんてつけたの?!」
「けけ・・・燃えろ、燃えちまえ・・・。」
「ふざけんじゃないわよ、こいつ!!」
 シーナさんは、おもいっきりその人を蹴っていました。
「と、とにかく、あっちに行くわよ!!」
「はい!!」
 途中で、アーシェルと合流した。
「すまない・・・メリーナを見失った・・。」
「メリーナさん・・・。」
「他の街の人は?!」
「出来る限り港へ誘導した。―――このままでは、街が火の海になる・・。」
「シーナさん!!アーシェルさん!!!」
「分かってるわ。」
「この様子だと・・・俺達がいることに気付いているらしいな。
 それならば望み通り、奴等の場所に出向いてやるまでだ!!」

「さっきの場所に戻るわけね?」
「ああ・・・ガーディアのところだ!!」



 そいつらは、街の中心へと戻ってきたようだった。
「ガーディアはどこだ?!」
「アーシェル、テントよ!!」
「行くか?!」
「いちいち聞くんじゃないわよ!!」
 テントの中に一気に入り込んできやがった!!
中は明かりをつけてない・・・。こっちの様子もわからないらしい。

「・・・来たみたいだな。」
「―――ガーディア・・・じゃあないな。お前は・・・?」
「やっと、会えたぜ。・・・俺の、標的(ターゲット)どもに―――。」
「ターゲット・・・だと?」
「お前がアーシェル・・・、それと、そっちにいるのが・・・マーシャだな。」
 女の方は何も見えてねぇようだったが、怖くて声も出せないみたいだった。
「どっちの野郎も、せいぜい苦しみながら死んでいきな・・・。」
 1人が俺の方に走ってきた。アーシェルでもマーシャでもない奴だった。
「ごちゃごちゃ言ってんじゃないわよ!!
 おとなしく死ねですって?!冗談じゃないわよ!!!」

「シーナ、待て!!」
「テメェは・・・標的(ターゲット)じゃねぇ。黙れ!!」
 俺はスピアを振り上げてやった。その瞬間、暗闇に明かりがともった。
俺の目の前で、血しぶきをあげながら、女が倒れかかってやがった。
そいつは、すぐにナイフを構えて、後ろに下がっていった・・・。
「俺がテメェを殺す理由はねぇ・・・ひっこんでろ。」
「じょ・・・冗談じゃないわ・・・。たった今、理由が出来たわよ!!!」
「シーナ・・・下がってろ。」
 アーシェルの奴が女の前に出てきやがった。
「俺と・・・マーシャが、指名手配だってな。」
「ああ、そうだぜ。だからよ、大人しく、殺されちまえよ!!」
「軽々しく、人を殺すなどと口に出すな!!―――何故・・・俺達を狙う?」
「理由・・・?指名手配犯に教えるようなことなんかねぇよ!!
 どうせ、死ぬんだからよ!!!
 それじゃ、行くぜ・・・・あばよ。」







 (46日目 深夜)
 私は、正直怖かった。・・・前に一度、この人とは会った事がありました。
そして、私は、この人に・・・攻撃されました。
 その人が、今・・・アーシェルさんに、スピアを向けていました。
「お前に殺されては・・・やれないな!!」
「そうかよ・・・。」
 男の子の姿が消えました・・・いえ、私にはそう見えました。
あっという間に、アーシェルさんのお腹にスピアが突き刺されていました!!
「い・・・いい加減にしなよ!!!」
 シーナさんがものすごいスピードで男の子に近づいていきました!!
そして、何度もナイフで斬りかかりましたが、全部かすめただけでした。
「つまらねぇ連中だな・・・。」
 私には、男の子のスピアがゆっくりと動くのが見えました。
そして、そのスピアの先に、シーナさんが・・・・。
「い・・いやぁぁ!!」



 とっさにナイフを前に持ってきて、そいつの攻撃を止めたわ。
それでも、ものすごい衝撃をうけた・・。
「なめんじゃないわよ!!」
 何度かナイフがそいつに当たったのはわかった。
でも、正直、クロスブレイカーが出せるだけの余裕も隙もなかった・・・。
「うるせぇ奴だなぁ、テメェはよっ!!」
「やめてっ!!!」
 後ろでマーシャの絶叫が聞こえてた・・・。
奴のスピアに思いっきり突き飛ばされながら、アローが飛んでくのが見えた。
 アーシェルの奴がアーチェリーを奴に向けていたわ!!
レインアローに続いて、トルネードスラッシュを放ってた。
 最初は、これだけの猛攻撃ならと思ってた・・・でも、すぐに
それでもダメだと気付かされた・・・。
「だ・・・ダメか?!」
 無数のアローをことごとくスピアで切りはらってアーシェルの方へ走ってた・・・。
「ドラゴンの鱗をぶち抜く、俺のスピアをくらって逝っちまえ!!」
 私は、とにかくナイフをそのスピアの先端に差し込んだ!!
ものすごい衝撃がその右手のナイフに加わった・・・・。
 アーシェルは、とっさにダガー2本をクロスさせて、それでスピアを受けていた。
そして、私達3人の周りを、マーシャのシールドチャージが覆っていたわ・・・。
「こんなことの・・・何が仕事よ。こいつらを殺せば・・・誰かが喜ぶわけ?
 そんだけのために・・、あんたはやってんの?!」

「どうして・・・こんなことを・・・。こんなに・・・、傷つけあって・・・。」
「―――マーシャ・・・とか言ったなぁ、おまえ・・・。」



「俺はなぁ・・・今のディシューマを、昔の平和なディシューマに戻してぇのよ・・・。」
 俺は、マーシャとかいう女の目を見たとき、急にそうしゃべってた。
「そのためなら・・・手段を選ばない・・か?」
「くくく・・・そうだな。人を殺せと言われりゃ、殺してやらぁ。」
「どうして?!そんなことしても・・・何も!!」
「バァカ・・・。こうやってりゃあ、いいんだよ。」
「わからない・・・、あなたが・・・殺し屋にならなくてはならなかった理由が・・。」
「死ぬ前に教えてやらぁ・・・お前らを殺した奴を―――。
 俺は、ディシューマの偉大な勇者・・・ベラ=フランシスの息子だ・・・。」

「ベラ?!・・・ベラ・・・ですって・・?」
「テメェは知ってるみてぇだな。俺はよ、手段なんか・・・
 選んでられネェんだよ!!・・・やっと、やっとよ―――、
 俺にも・・・親父みてぇに、ディシューマを救えるようになったんだからよ!!」

「ディシューマを救うって、何があったんだ?そして・・・何をすると言うんだ?」
「大事なこと教えてやらぁ・・・。それを邪魔してやがる、
 ・・・殺されるべきヤツら―――それが、お前らなんだよ!!」

「わ・・私達が・・?!」
「おしゃべりはやめだ!!・・・エクスプロージョン!!」



 大爆発が起こって、アーシェルさんとシーナさんが煙のせいで見えなくなりました。
そして、私の目の前に、あの男の子がいました!!
「楽に逝けよ・・・。」
 男の子の声で、まるで全身が凍りついたみたいに冷たくなりました。
「でも・・・やっぱり、わからない・・・。」
「まだ、しゃべるのかよ?!もういいんだよ!!死んでしまえ!!」
「他に・・方法が・・・あったのでは・・ないのですか?!
 他に・・・道は・・・なかったのですか?!!」

「道は1つ・・・殺し屋として、お前らを殺すっ!!」
「今まで、ずっとそうやって・・・生きてきたのですか?」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ、それ以上しゃべると!!」
「きっと・・・そんな悲しい事しなくても・・・よかったはずなのに。
 もし、私達だって・・・何か、手伝えることがあれば・・・手助けできるわ!!
 どうして・・・なにもかも、消そうとするの?!
 そんなことしても・・・そこから、平和なんてうまれないわ!!」

 もう私の話を聞いてはいないようでした。
そして、スピアをまっすぐ私に向けて突こうとしていました。
もう、私には、こうするしかありませんでした・・・・。



 マーシャのフラッシュリングが決まったみたいだったわ。
「ぐ・・ぐあはぁぁっ・・。」
「あんたじゃあ・・・マーシャの命の炎は、消せないわ。」
「―――手助けだぁ・・?ふざけんじゃねぇ・・・。
 お前らなんかに・・・何がわかる・・・。」

「ベラって人を・・・目指してるアンタは、・・・周りのことが、
 何にも見えなくなっちゃってる・・・。それだけよ。
 アンタは自分の目で見てないわ。しっかり、目を開いて見るのよ!!
 目の前にいる人間を・・・分かってないのは、アンタの方よ!!」

「関係ねぇ人間が、・・・どこまで首つっこんできやがれば気がすむんだよ?」
 そいつは、そう言ってスピアで一気に空を斬り裂いた!!
それらが、真空波となって私達を襲いかかってきた!!
「そう・・・なら、もう、いいわ。」
「俺が勝てねぇ相手なんかいるかよ?!・・・試してやらぁ!!」
 アーシェルの奴が、またトルネードスラッシュを放った。
でも、もう、アーシェルの攻撃は殺し屋に通用しないみたいだった。
「アーシェル・・・、アンタはよくやったわ。・・・もう、立ってるのだって、
 限界なんでしょ・・・。休んでなさいよ・・。」

「俺は・・・まだ、動ける・・・。このままじゃあ、終われないだろ・・・。」

「ホントは嫌よ・・・。私だって―――限界なんだから。
 でも・・・、こうするしか・・・ないわね。」







 (46日目 深夜)
 シーナさんのナイフから、急にあのものすごい勢いの炎が吹き上がっていました。
「よせ・・・、そんなことすれば!!」
「マーシャ・・・今のうちに言っておくわ。」
「シーナさん!!やめてください!!お願いします!!!」
「もう、アンタしか、こいつを止めれそうにないわ。あとは・・・任せたわよ。」
「わ、私に、そんな・・・」
「さっきアンタが言ったこと・・・、こいつにも・・・わからせてやんのよ!!」
 そのあとすぐ、シーナさんは、まるでナイフに操られてしまったかのように、
男の人の方に走っていきました!!
「シーナ・・・よせ!!!」
「な、なんだ・・・このナイフ!!!」
 男の人は、スピアでシーナさんのナイフを防ぎましたが、
シーナさんは、すぐにナイフを手前に引き、男の人に斬りつけました!!
「とどめよ!!!」
 シーナさんは、そのまま飛び上がって、頭上からナイフを突き落としました!!!



 そいつのナイフは、俺の胸から腹までを一気に切り裂きやがった・・・。
「・・・はぁ、はぁ・・・なんて野郎だ。魔法か・・、なんて力だよ・・・。」
 けど、それから、そいつは地面にへばりついて動かなくなってた。
「ここまでにしようぜ・・、まったくよ。」
 スピアをふりまわした俺の目の前に、マーシャって奴がロッドを俺に向けて立ってた。
「シーナさんに・・・近づかないでください!!!」
 またあの魔法を唱えようとしてたことに気付いて、とっさに後ろに飛びのいた。
「二度も三度も食らわねぇよ。・・・だが、一発目はきつかったぜ、さすがにな。」
「でも、私は・・負けない!!」
 マーシャは、ロッドを振り回してきた!!
俺は、すぐさまスピアで、ロッドを叩き落してやった。
「終わりだ。・・・心臓をまっすぐ突いてやる。動くんじゃねぇぞ。」
「マーシャ・・・。」
「お母様・・・。」



 私は、ライトロッドを取り出しました。
「・・・光り輝いている・・。」
「もう、終わってくれ!!!」
 男の人の攻撃がものすごく強い攻撃だったことはわかりました。
きっと、私は、もうダメだと思ってました。
「くっ・・・スピアが、動かないだと・・?!」
 私は、ライトロッドでその攻撃を受け止めていました。
そのライトロッドの光を見ていると、私はだんだんとぼんやりとしてきていました。
「な、何かがくる?!」
 突然、男の人が後ろに下がりました。
その瞬間、私の腕が急に動いていました!!私は、動かそうなんて思っていません。
でも、ライトロッドを持っている腕が、急に勝手に動き出していました!!
「な、なんで・・・どうして?!!」
 思いっきり、ロッドを男の人に振り落としてしまっていました。
なんとか、男の人は、それをよけていましたが、また、私は、
それを追いかけていました・・。
「そこだ・・・今ならやれる!!!!」



 突然、マーシャは攻撃を躊躇した・・・。
「や、やだ・・・わ、わたし・・・こんなこと、したくない!!!」
 殺し屋には、壁際に追い込まれ、もう、攻撃がよけれるだけの余裕はなかった。
「待たせんじゃねぇよ・・・今なら、俺を殺れるだろ。
 お前らを・・・殺ろうとしてた、俺をよ・・・。」

「あなたと同じように・・・私が、あなたを・・・苦しめても・・・。」
「・・・そっから、平和はうまれねぇ・・・か。」
「だって・・・、他の人を、・・・苦しめて、悲しませて・・・、
 そんな人を、私が・・・もっと苦しめるなんて・・・。
 そんなことしたって、誰も喜んでなんかくれない・・・。
 それなら、私も・・・あなたも、苦しまずに、生きていけば・・・いいのに。」

「生きてくったってよ・・・、俺の人生なんか、・・・たいした物じゃねぇし。」
「そんなことない!!」
 しばらく、沈黙が流れていた。
「・・・殺せと言う奴はいくらでもいた。
 なんで、お前は・・・俺を、殺さない?なぜ、生きろなんて言いやがる?」

「あなたが生きていることを・・・喜んでくれる人は、・・・いないの?」
「・・・かもな。」
「私は、・・・あなたに、生きていてほしい。」
「―――もっと・・・早く、そんな奴がいるってことをよ、
 教えてくれていりゃあよ・・。俺だって・・・・。」

 突然、マーシャのロッドからまたあの強い光が放たれる!!
「な、なんで・・・わ、私は!!!」
「そうだ・・・そうやって俺を倒せ。そうでもしねぇと、俺には・・・、
 お前の言う事は・・・わからねぇだろうからさ・・・。」

「い、いや!!いやだ!!!!」



 私は、しばらくして、ルアートが倒れている私の目の前にいることに気付きました。
「ルアート・・・、はっ!!」
「・・・それで、いいんだ。」
 私は、倒れている男の人を見た後、アーシェルさんをにらみつけました!!
「なんで・・・なんでそんなことを言うのですか!!!」
「そいつは、・・・心の底で苦しんでたんだ。
 マーシャに言われるまでは、その苦しみをしまい続けてた・・・。
 だが、気付いたんだ。・・・そいつが、本当に望むものを、
 手に入れるための方法と違うことをしていたことに・・・。」

「でも・・・。」
「それに、マーシャの意思で倒したんじゃない。
 そのロッドに込められた力が、そいつを倒した・・・。」


「ディッシェム・・・。」
 低い声が、テントの中に響き渡りました・・・。
「・・・この声、まさか!!!」
 私達を見下ろしている男の人が、そこにいました。
「ガーディア・・・・・。」
「ディッシェム・・・まだ生きているだろう・・・。」
 その声に、男の人が気付いたようでした。
「ディッシェムさん!!!」
「お前は・・・掟を・・・・知りながら・・・負けたのだな・・・。」
「・・・覚悟して・・・います。」
「ならいい・・・。これからどうなるかは、わかってるな。」






 (46日目 深夜)
「・・・はやく・・・俺を殺せ・・・。」
「まぁ、待て。死ぬ前に・・・面白い事を教えてやろう。」
「どういうつもりだ・・・・・。」
 ガーディアは、俺に笑みを浮かべながら、話しかけてきた。
「・・・アーシェル、お前もきいておけ・・・。」
「ガーディア!!・・・お前は・・・いったい・・・何をするつもりなんだ!!」
「・・・ディッシェムよ、・・・お前は確かによく・・・働いてくれた・・・、
 我らの計画のためにだ・・・。」

「・・・計画・・・?」
「そうだ。・・・新たなる・・・巨大な力を手に入れる・・・、
 そう・・・もう、お前の力など・・・必要ではなくなった。」

「なんだと・・・?お前は、ディシューマのために、殺しを命じてたんじゃあ・・・。」
「安心しろ、そうだとも。だがな、本当はお前など、
 単なる使い捨ての道具に過ぎない。
 まぁ、英雄 ――― ベラの息子・・というだけの惨めな道具だ・・・。」

 ディッシェムは、ただ、信じられないという表情を浮かべて、黙っていた。
「もう、言い返す言葉もないか・・・。」
「ガーディア・・・、なんだ?新たなる巨大な力って!!」
「・・・いずれ、お前にもわかることだ・・・。―――いや待て。
 もう、既に・・知っているはず・・・か。」

「ガーディア・・・、お前は・・・どれだけの人を苦しめるつもりなんだ!!」
 俺は、アーチェリーをガーディアに向けた。
「・・・アーシェルよ・・・回りを見ろ・・・。」
「なに・・?」
 いつのまにか、テントは炎によって包み込まれてた!!
「ディッシェムを・・・ふさわしい死に場所へ連れて行く・・・。」
 振り返ったときにはすでに、ディッシェムの姿は、ガーディアのところにあった。
「待て!!!ガーディアーッ!!」
 ガーディアは、闇に包まれて忽然と姿を消していた・・・。



「どうする・・・。」
「アーシェルさん!!」
 アーシェルさんは私の方を振り返りました。
私は、その時、シーナさんにキュアをかけていました。
「ここを出るしかない・・・。」
 アーシェルさんは、氷の矢を取り出して、それを入り口に向かって放ちました!!
「・・・炎の勢いが強すぎる・・。」
「バカね。・・・考えれば、分かるじゃない。」
「シーナさん!!」
「マーシャ・・・ルアートがいるじゃない。」
「そうか!!」
「ルアート!!お願い!!!この炎を消すの!!!」
 ルアートは、入り口の近くまで寄って、凍える風を吹き付けました!!
「ダメね・・・、あれじゃ、すぐに火がすぐに戻るわ・・・。」
「どうすればいいんですか?」
「このままじゃ、蒸し焼きになるだけよ・・・。」

 その時でした。突然、テントの周りにものすごい吹雪が巻き起こりました。
「何が起こった・・・?」
「アーシェル、火が消えたわ!!今なら、ここを抜け出せる!!」
 私達が、テントを出た後、一気に燃え尽きてしまいました・・・。
「やっぱり、マーシャだったわ!!大丈夫?」
「あなたは・・・。」
 そこには、サリーナさんの姿がありました。



「マーシャ。よかったわ・・・間に合って。」
「サリーナさん。そんなことより、どうしてここに・・・?」
「・・・姉さんに助けてもらったのよ。・・・ほんと、
 捕まっちゃった時はどうしようかと思ったけど・・・。」

「メリーナさんは・・・?」
「町のみんなのところへいったわ。・・・私もそこへ行くつもり。」
「それにしても、あの炎を一瞬にして消すなんて・・・。
 あんたは・・・いったい何者なの?」

「いちおう、バアさん・・、いえ・・、セリューク様・・・の
 ところで働いているから・・・。とりあえずこの程度の魔法なら・・・。」

「魔法・・・。」
「あなたは・・・シーナさん。・・・そちらは、・・・アーシェルさん。
 ―――マーシャが夜通し呼びつづけた・・・。」

「えっ!!!」
「マーシャ・・・。」
 アーシェルは声1つ変えずに話を続けてた。
「ガーディアと、殺し屋はどこへいった・・?ここから出てきたはずだ。」
「このテントから出てきた奴・・・。
 ああ、見たわ。・・・ここから北の方向。―――あの飛行艇の方よ!!!」

「・・・そうか、ありがとう。」
「分かってるわよ。行くんでしょ。」
「ああ・・・どうしても、ガーディアに会ってとことん話してみないと、
 ・・・このままでは、気が済まない。」

「サリーナさん!!メリーナさん達を。」
「分かったわ。・・・マーシャ達も気をつけてね。」
「はい。」



 俺達は、街の北にあった、その飛行艇へとやってきた。
「・・・どうやって入り込む?」
「見張りがいるか・・・。」
「行く?」
「ムチャなこと言うな。ここ来る時と同じことになる。」
「ここまで来たら、一緒よ。」
「・・・入り口も見えない。」
 その時、マーシャが何かに気付いて、俺に話しかけてきた。
「アーシェルさん!!誰か来ます!!」
「なんだって?隠れろ!!」
 3人の黒服の兵士が飛行艇に帰ってきた。
「ヤツらを見て。」
 俺達は、建物の陰から様子をうかがっていた。
3人は、見張りの者達と少し話したあと、飛行艇の近くの壁に近寄り、
その壁に隠されていた操作盤を開き、操作した。
「はしごが下りてきたな。あそこから入るのか・・・。」
「みたいね。あれなら、中に入れるわ―――誰でも。」
「シーナさん・・・。」

「アーシェル、何してんの?行くわよ!!」






 (47日目 早朝)
「・・・ご苦労さん。―――何か下で騒がしかったようだが・・・?」
「はっ。怪しい人影、約3名が我々の帰還するところを、目撃し、
 我々に襲いかかって、服を剥ぎ取って、変装して、
 この飛行艇に侵入しようなどと、たくらんでいましたので、
 こらしめておきました・・・。異常ありません!!」

「・・・・。そうか?」
「そうです。」
「よし・・、ご苦労さん。」

 その見張りの兵士の目の届かないところまで入っていった・・・。
「・・・アーシェル?・・・ねぇ、アーシェル!!・・聞こえてる?」
「ああ。」
「よかったのですか?こんなことして・・・?」
「・・・別にいいじゃない。ちゃんと、何したかは言っておいたし。」
「そういう問題か?」
「問題なんてもんじゃないわ。・・・この服の奴、ちゃんと洗濯してんの?まったく。」
「とにかく、進もう。・・・ここでのんびりしてる場合じゃない!!」



 飛行艇の内部はさまざまな謎の機械で埋め尽くされていた・・。
「なんなんだ、これは?」
「いい趣味してるとは、ちょっと言えないわね。」
「・・・扉だ。」
 3つのドアがあった。見る限り、何かのカードキーが必要なようだった。
「カードキーですって?そんな都合のいいもの、持ってるわけないじゃない。」
「ここで行き止まりか・・・。さっきの所には戻れないぞ・・。」
「ちょっと!!ろくに調べも準備もしないで入ってきた奴、いったい誰よ!?」
 俺は、言ってる本人の方に視線を向ける。
「な、なによ?私が悪いっての?」
「当然だ。」
「ひ、ひどい・・、あ、あんた、喧嘩売ってんの?!」
「あ、あの・・・。」
「何よ?!あんたまで文句があるわけ?!!」
「カ・・カードキーなら、・・わ、私の服の・・・ポケットに―――。」



 辺りから聞こえる音は、低い機械の音だけでした。
「・・・し、静かですね。」
「こいつが喋らないからな。」
「そっか。」
「納得してんじゃないわよ。」
「よし、おまえが喋るのは、そこまでな。確かに、敵らしき奴は誰もいない。
 恐らくは、入り口の見張り以外、皆外にいるんだろう。」

「いいのよ、目指してるのは、そんな雑魚じゃないんだから。」
「シーナさん!!」
 急に2人の兵士の人達が私達の目の前に現れました。
「お前ら・・・、なんでこんなところに?」
「おいおい、新人かよ?迷っちまったのか?」
「恥ずかしながら・・・そのようです。」
「そうとも・・言う・・かな?」
「は、はい。」
「この奥が休憩所になってる。そこで、内部図でも見直すんだな。」
「ただでさえ、トラップまみれだからなぁ、こいつはよ。気をつけろよ。
 侵入者だけを襲うような賢い奴じゃないからよっ。」

 2人は奥のほうへと歩いていかれました。
「ちょっと、トラップだらけ・・・って言ってたわね?」
「運が良かった・・・ってところか?」
「とにかく、休憩所ってとこに行こうじゃない。」



 休憩所には誰もいなかった。窓の外には、真っ暗なセーシャルポートの街があったわ。
「これが、内部図みたいだな。」
「問題は、ガーディア隊長とあの殺し屋がいる場所ね。」
「一番上ではないのですか?」
「候補の1つではあるけどな・・・。」
「このしるしが多分、トラップの場所ね。・・・大体予想通りってとこね。」
「危なっかしいところで、毎回、お前にはひやひやさせられたからな。」
「よく言うわよ。・・・あ、あれ?」
 突然、内部図のある場所が赤く光りだしたわ。
「何よ?これ・・・。」
「何かが始まったのか?」
「行ってみませんか?」
「・・・そうだな。今のところ、他に手がかりはなさそうだからな。」



 始まってからそんなにたってないはずだった。
もう、全身の感覚がなくなってやがった。もう、スピアを持つ手に力が入らない・・・。
「もっと、動いてみろ・・・、あがいてみせろ・・・。」
「ちくしょう・・・、こんな野郎にやられちまうのかよ・・・。」
「もういい・・・。そろそろ、死んでもらおうか。」
「くっ・・・。」
 後ろの方で、何かの音がした。ドアの開く音だった。
「いたわ!!」
「な、なんだ・・・?」
「アーシェル・・・、とうとう、ここまで来たか?」
「ガーディアか?!どこだ?何処にいる?!」
「やれ。」
 俺の体を突然光が包み込みやがった。その光は俺を宙に浮かせた。
宙に浮かんだまま、後ろの方に飛ばされ、壁に激突した・・・。
「どうだ・・・、この力は・・・。」
 俺には、もう答えるだけの気力がなかった。
「ディッシェムさん!!!」
「力だと・・・、なんで、そんなものが必要なんだ?!」
「神など、所詮は力の存在。力さえあれば、神にもなれよう。
 そのためならば、他に何が必要だというのだ?」

「そんな理由で、動物たちを・・・傷つけてきたのか?」
「最強の力さえ手に入れば、お前も、ディッシェムも、何の価値もない・・・。
 ただのゴミくずよ・・・。己の非力さを知るといい・・・。」

「神だと・・・、なんでそんなものが・・、なんでそんなものが、
 隊長をここまで変えてしまったんだ?!」

「弱者に、答える義務はない。」
 俺の体はガーディアのとこまで引き上げられ、やがて半透明になっていった。
「もはや、運命は俺の手中にある・・・。」
 そいつらは、ガーディアの命令のもとに戦闘を開始しやがった。






 (47日目 早朝)
「アーシェル!!なんでもいいわ、とにかく、あの機械をぶっ壊すわよ!!」
「ああ!!」
 シーナは、ナイフを構えて一気にその機械に向かって斬り込んだ!!
「くらいなさいっ!!!」
 シーナのナイフがその機械に当たり、無機質な音をあげる。
「・・・やばいわね。」
 機械はシーナに感情を全く持たない強烈なパンチを向ける!!
「シーナ?!」
「ふん!!この程度!!」
 機械の手の甲が赤く光り輝く・・・。
「何を・・・する気だ?!」
「来るわっ!!オーロラバリア!!」
 とっさにシーナが張った結界のまわりを燃え盛る炎の海が包み込んでいた。
「次が来るわ!!あとは、自分で守りなさいよ!!」
「な、何?!」
 機械の手の甲が黄色く光り輝き、次の瞬間、機械から電撃が繰り出された!!
俺達は、3人バラバラの方向に逃れた・・・。
 俺の背後に突然、一陣の風が吹きつける!!強烈な打撃が襲い掛かる!!
「アーシェルさん!!!」
「ぐぁっ・・後ろを、取られたかっ!!」
「あ、あああ!!!」
 シーナが、もう一体の機械から放たれる、凍える風に襲われていた!!
「シーナさん!!」




 私は、すぐに振り返って杖を構えました!!
「フラッシュリング!!」
 シーナさんを襲い掛かっている機械に光の輪が何度もぶつかっていきました。
「よくもやってくれたわね・・、クロスブレイカー!!」
 シーナさんのナイフがその機械をまっすぐ貫きました!!
「やった!!」
「シーナ!!」
 突然アーシェルさんが、シーナさんを呼びました!!
その声に追いかけられるように、機械がシーナさんの方に向かって、
ものすごい風と一緒に、小石や砂を吹き付けました!!!

 でも、シーナさんは、そのアーシェルさんの声に気付いていませんでした。
それどころか、・・・まるで、何かを考えているみたいに立ちすくんでいました。
「な、何やってるんだ!!死ぬ気か?!」
 アーシェルさんが、魔法ですばやさを限界まで引き上げて、
シーナさんをギリギリのところでかばいました!!
「ぐっ・・、こ、こいつは、き、キツいぞ・・・。」
 私もすぐにシーナさんの所に近寄りました!!!
「シーナさん!!!キュ・・・」




 マーシャを突然、猛烈な雷が包み込んでいた。
余りの激しさで、マーシャは声も上げることが出来ないようだった・・・。
「マ・・・マーシャ・・・。」
「シーナさん・・・い、今―――キュア・・を・・・。」
 2体の機械が、3人の固まった、その場所を凝視し、攻撃の機会をうかがっていた。
「ルアート・・・。」
 ルアートが、マーシャの声を合図にしてキュアを唱えた。
その間にも、2体は、ゆっくり距離を縮めてきていた・・・。
「ルアート・・・俺の後、援護・・・頼む!!」
 あとの2人はもはや動けない。こうなれば、もう自分がやるしかない。
俺は、背中の激痛がキュアの光でわずかに和らいだのを合図に前方に飛び出した!!
「トルネードスラッシュッ!!」
 風をまとう矢が放たれた瞬間、背後のルアートから雷が放たれた!!
俺は、その時点で既にひざをがくっと落としてしまっていた・・・。
「やった・・・か?」
 俺の放ったアローは、片方の機械を貫き通し、そのアローを通じて、
ルアートの放った電撃が全身をかけめぐり、その部分から、煙が上がっていた。
動きも次第に、激しさを失い、ゆっくりになっているようだった。
 もう一体の姿を見失っていた・・・。

「シ・・シーナさん?!!」




 いつ、理性を保てなくなっちゃってたのか・・・。
クロスブレイカーをぶちこんでやった、すぐ後だったような気もする。
 ナイフが当たった瞬間、感触も音も・・・いつもと違っていた。
 ディメナの鍾乳洞にいた頃から、なんとなく、変だなぁとは思っていた。

 私がバーニングスラッシュを使った後、何も分からなくなると、
いつも、同じ会話―――昔の会話を思い出していたわ・・・。





「このナイフは・・・お前が持たなきゃならない。
 お前が失ったモノ―――血に汚れた過去を・・・、
 全てを見てきた、このナイフを・・・。」

「私に、そんな・・・過去なんて―――。」
「そのナイフは、・・・僕の背負うべき、そして、お前の生きる理由を教えてくれた。
 ・・・ナイフが、砕け散る時―――、もはや、そのナイフの役目は、その時終わる。
 その時・・・、お前は、お前自身の生きる理由を・・・見つけなけりゃあならない。
 お前自身の力だけでだ・・・。僕は手伝えない・・・誰にも代わりは出来ない。」

「私の・・・生きる理由・・・。」
「それが、僕達に科せられた・・・運命―――」





「シーナさん!!!ダメです!!バーニングスラッシュなんてやったら、
 また、またシーナさんが!!!」

 もう私には、ナイフから吹き上がる炎を止める事は出来なかった。
ただ、ブロンズナイフの思うままに、突き動かされるしかなかった・・・。
 アーシェルとルアートが、攻撃をしていた・・・。
片方の機械が、その攻撃の直撃を受けていた。
そして、機械の動きが・・・鈍っていた・・・。
「バーニング・・・スラッシュ。」
 私は、ただナイフを・・・炎を吹き上げ続けるナイフを、
その機械に向かって、斬りつけていた・・・。

 そして、私は、とうとうその時が来たことに・・・気付いた。
「あ、ああ・・・お、おまえ・・・・。」
「シーナさんの・・・ナ、ナイフが―――。」
 私は、ただぼんやりと立ってるだけだった・・・。
「・・・シーナ?!」

「誰よ・・・、こんなこと・・・こんなことをした奴、
 ―――こんなことした奴、誰よ?!!」







 (47日目 朝)
 シーナの奴は、もう完全に自分を見失ってた。
手にしていたナイフ2本が、目の前で砕け散った瞬間、シーナは、
ただ、その場に立ち尽くして、何かを口にし続けているだけだった・・・。
 そんなシーナに対し、機械は一気に攻撃を仕掛け始めた!!
「させるかよっ!!」
 俺は、もう一度アーチェリーを構えて、アローを放つ・・・。
だが、その一方で、バーニングスラッシュを受けて、崩れていたはずの
もう一体が、シーナに攻撃を仕掛けようとする・・・
「しまった・・・まだ、動けるのか?!!」
 一瞬、動きを止め、一気に、全力でシーナにパンチを繰り出す!!直撃!!
「シーナっ!!」

「・・・どこ、見てんの?」



 シーナさんは、本当に一瞬のうちに、アーシェルさんの後ろにいました。
もう一体の機械は、結局、そのままバランスを崩して、動かなくなっていました。
「大丈夫・・・なのか?」
「大丈夫に思える?でも、私も、ナイフがないだけで、いちいち騒いでられないの。
 それに、今のまんまじゃ、もう一体の時みたいに、
 あんたのトルネードスラッシュも、使えそうにないしね・・・。
 ―――なんだかわかんないけど、・・・すんごく、落ち着いてんの、私。」

「落ち着いているって・・・、お前。」
「なんで、私・・・自分を見失ってたんだろ・・・。
 ―――次に、奴が攻撃を仕掛けるために、一瞬止まった時、
 マーシャ、・・・あんたは一気に奴の背後から、ライトロッドでぶったたいてやんの。」

「マーシャ1人にか?!」
「来るわ・・・アーシェル、構えて!!マーシャ、走るのよ!!!」
 機械は、両手を私とアーシェルに向けて衝撃波を繰り出してきたわ!!
「お、お前・・・。」
「アーシェル・・・、私、あんたとなら・・・」



 私は、ただ必死に夢中で走っていました!!
「アーシェルさん!!!シーナさん!!!―――やられないで!!!」
 ライトロッドが激しい青い光を放っていました。
私は、そのロッドで、機械を背後から思いっきりたたきました!!
 ものすごい衝撃が全身に返ってきました・・・。
それから、その機械は、全く動かなくなってしまいました・・・。
「わ、わたし・・・。あ、シーナさん?!アーシェルさん!!!」
 私は、2人の方へとすぐに向きました・・・。
「なんでよ・・・、アーシェル・・・。」
「―――聞きたいのは、俺だ。
 どういうわけか知らないが、急にお前が、あまりにも的確な指示を出した。
 お前は、落ち着いていると言っていたな・・・。
 恐ろしく冷静な判断だった・・・。恐らく、俺も及ばないほどの・・。
 ―――だが、・・・お前は・・・。」

「私に・・・生きる理由なんて、―――ないと思ったのに。」
「お前は、・・・そう、判断したのか?」
「・・・あんたなんかに、分からないわよ。私にだって・・・分からないのに。」
「が、ぐはぁぁぁっ・・・」



 アーシェルは、全身から血を吹き出して、口からも血があふれ出していた・・・。
「もういいの・・・私には、―――もう、ナイフはないんだから。
 これが、・・・最後なんだから・・・。」

 マーシャがすぐに近寄ってきてくれた。私は、マーシャと一緒に、
とにかく、アーシェルをなんとか抱えて、部屋の外に出たわ。
「シーナさん・・・、まず、アーシェルさんを・・・」
 その時、突然、飛行艇の中でアナウンスがかかったわ。
「Bホール内にて、詳細不明の事故発生―――。現在、この飛行艇の全員に対し、
 緊急避難命令が発令されました。これより、10分後、空中爆破を行います。
 ただちに、全員、この飛行艇より、外へ避難してください・・・繰り返します―――」

「ど、どういうことですか?!」
「私達がやったことを、私達ごと、消そうってんでしょ。」
「消す・・消すって?!!」
「慌てなくたっていいわよ。この私が・・・消させるもんですか!!」
 私はとにかく、アーシェルとマーシャで飛行艇の入り口の方に走り続けたわ。
アーシェルはその間にも、何度か血を吐いてた・・・。
「アーシェルさん!!!」
「力抜かないの!!今、走らないと・・・飛行艇が出ちゃうじゃない!!」
 私達は、それからやっと最初に入り口を見つけて、そこから外に出たわ!!
「わ、わぁ・・・も、もう飛んでいますよ!!」
「慌てんじゃないの。まだ、今離陸したばっかりよ。」
「で、でも・・・だんだん、高くなってきて・・・」
「爆発して粉々になるのと、まっさかさまに落ちてグチャグチャになるの、
 どっちが―――って、どっちも嫌か・・・。」

「どうするのですか?」
「こうすんのよ!!」
 私は、無理矢理マーシャを引っ張って、そのまま地面に向かって落ちていった・・・。



 私が気付いた時には、エナ湖の湖畔に倒れていました。
「わ・・・私。あ、アーシェルさん!!」
 そばには、アーシェルさんが倒れていました。
・・・でも、そこに、シーナさんの姿はありませんでした。
「シーナさんは、・・・どこ?」
 その時、向こうの方から何人かの人が走ってきているのが見えました。
そして、その中にシーナさんの姿を見つけました。
「シーナさん!!それに、メリーナさん、サリーナさん!!」
「よかった・・・なんとか、生きてるみたいね。」
「マーシャは、休めばなんとかなるわね・・・、でも―――」
「マーシャ・・・、すぐに気絶しないでよね。でも大丈夫、みんな呼んで来たから・・
 ―――アーシェルの奴を、お願い!!たたいても引っ張ってでもいいから!!」

「・・・わ、わかったわ。とにかく、まずは一刻も早く病院に行かなくちゃね。」
 アーシェルさんは、サリーナさんや街の人達と一緒に先に街へと運ばれていきました。
「マーシャ、歩ける?一緒に来てもらうわよ。マーシャだってケガしてるでしょ?」
「は、はい・・・。それに、シーナさんも。」
「わ、わたしは・・・遠慮するわ。歩けるし―――あ、でも礼だけは言っておくわね。
 いろいろ、お世話になったわね。・・・あと、先に言った妹さんにも言っておいてね。」

「どうして?私達と一緒に来ればいいじゃない。」

「・・・私は、一緒には、行けない。―――ほら、早く行かないと!!」
 サリーナさんに呼ばれて、メリーナさんは私を連れてその場を後にしました。
それでも、シーナさんは、その場でしゃがみこんだまま、動こうとしませんでした。






 (49日目 昼)
「だいぶ良くなったようね。」
「はい。ありがとうございました。」
「いいのよ。今のうちにちゃんと元気になっておかなきゃね。」
 お見舞いに来てくれていたメリーナさんが、外へと出て行かれました。
「・・・シーナさん、どうしてるんだろう?」
 私は、本当の事を言えば、もう元気になっていました。
ただ、メリーナさんに言われて、少しゆっくりしてから行くことにしました。
 もうお昼になっていました。お医者様からはもう、
お外に歩いていってもいいと言われていたので、少し出てみる事にしました。
 私は、1階にある宿屋に下りました。
「あ、シーナさん・・・。」
 そこには、シーナさんが1人で座っていました。
「マーシャ・・・。もう、大丈夫みたいね。」
「シーナさん!!どうして、どうしてお見舞いに来てくれないのですか?!」
「そうね・・・私は、嫌いなのよ、じっとしなくちゃなんないのがね。
 いいでしょ、理由はそれぐらいで・・・。」


「―――どうして、そんなに暗い顔をされているのですか?」
「アーシェルの奴・・・、もう大丈夫なの?」



 マーシャは、しばらく黙ってたわ。
「な、何よ・・・何か答えたらどうなのよ?!
 それとも・・・ど、どこか悪いっていうの?」

「それが・・・」
「そう・・・。あれだけの傷があれば、普通・・・ただじゃすまないわよね。
 仕方がないわね。・・・あいつ、やることなすことムチャだもんね。
 自分が危険になる・・・、ボロボロになるの分かってて、飛び出すんだもん。」

「アーシェルさんは・・・シーナさんを助け―――」

「もう、5年になるわ。あいつのそばで・・・働いてね。
 そうよ、・・・今までは、あいつなんかただの仕事仲間としか、思ってなかったの。」

 私は、マーシャに向かって、何を言ってるのかだんだん分からなくなってた。
「あいつと一緒に旅するようになってね・・・、私、分かったのよ。
 今まで、・・・あいつのこと、分かってなかったんだって・・・。少しも。」


 私はそれからしばらくして、続けた。
「あいつは、私を、あの戦いで助けてくれたわ。生きて欲しいと願ってくれたの。
 もう、生きる理由なんてないなんて、思ってた私に・・・。」

「なんで、生きる理由がないなんて!!」
「でもね・・・私、思ったのよ。
 ―――せめて・・・アーシェルに生きていて欲しいって。
 あいつが、ただの仕事仲間なんかじゃない。・・・わたしの―――」


「シーナ・・・。」



 アーシェルが、後ろの壁から出てきたわ。
「その続きを・・・聞かせてくれるか?」
「な、なによ・・、急に出てくるんじゃないわよ。
 ・・そ、そう・・・あんた、生きてたのね。」

 まだ杖にをたよって立ってたし、体中に傷跡が残ってたけど、
アーシェルは、そこに確かに立っていたわ・・。
「答えてくれるか?」
「い、いやよ・・・盗み聞きしてたような奴なんかに、誰が!!」
「・・・俺も、お前と同じだった。この5年間、
 ただの仕事仲間程度にしか、思っていなかった。」

「・・・。」
「いつからだろう・・・、そうか、やっぱりマーシャだ・・・。
 マーシャと出会ってから、俺は、お前の―――シーナの別の一面が、
 見れたような・・そんな気がする。」

「別の一面って?・・・何よ、凶暴で単純で無茶な、私の性格?」
「ああ。」
「・・・地獄送りにしたげるわよ、あんた。」
「冗談だ。」
「で、何が言いたいのよ?」
「俺は・・・シーナ―――」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!い、いきなり、こんなところで言わなくたって!!!
 そ、それにマーシャもいるし!!マーシャ、もう・・・ちょっと、離れててよ!!」

「え、ええ?!」
「いや、マーシャも・・・いてくれ。」
「へ?ど、どういうつもりよ?」
「・・・俺はただ、これから先も、お互いがんばろうなって思って・・・、
 俺は1人じゃない、シーナもいるし、もちろん、マーシャもだ。」

「そ、それだけ?」
「もちろん、その・・・お前に心配かけて、悪かったって。」
「何よ・・・それじゃ、いつもアンタが言ってることと同じじゃないのよ。
 ―――ま、いいわ、もう。・・・とにかく、無事でよかったわね。はい、おめでと。」

「・・・気のせいか?なんだか、顔が赤いぞ?・・・大丈夫か?」
「あんた・・・ホント、無神経な奴ね―――。もう、今さら、いいわよ。」



「さてと、俺は、これからディシューマに行く。ガーディアを追いかける。」
「私も・・・、どうしてもディッシェムさんが気になります・・・。
 ガーディアさんといっしょにいるのなら、私もディシューマ大陸へ、行きます。
 で、でも、・・・アーシェルさんは、もう大丈夫なんですか?」

「この程度の傷で、これ以上待ってられるかよ。
 シーナ、行くぜ!!ディシューマに。」


 シーナさんの表情はどこかさびしげでした・・・。
「あんたたちは、いいわね・・・。目標があって・・・。
 ・・・もう、私には、目標もないわ・・・。残念だけど・・・ここで、お別れね。」

 私とアーシェルさんはシーナさんの言葉にびっくりしてしまいました!!
「シーナさん!!」
「・・・悪いわね・・・、それに、私は、ちょっと寄るところがあるわ。
 もう、アーシェルが無事なのも、確認したしね・・・。
 どうせ、あんたたちに間に合わないし、見送りもできないわ・・・。
 だから・・・さっさと、行っちまいなよ・・・。」

「・・・シーナ。」
「待ってって言ったって、もう戻らないわよ。」
 シーナさんは、そのまま歩いて行ってしまいました。
 私が呼び止めようと声を出そうとして時、ドアの近くにいたシーナさんに
 アーシェルさんが話しかけました。
「どんなに、遅くなってもいい・・・。俺達は、忘れたりしない・・・。
 ・・・必ず待ってる・・。・・用事がすんだら、・・・来てくれ・・・。
 俺達には・・・、いや。―――俺にはお前が必要なんだ!!!」

 シーナさんが立ち止まって、それからこちらを振り向かずにこう言って出て行きました。

「マーシャを、守ってやんのよ。・・・あばよ。」


2003/08/01 edited by yukki-ts To Be Continued. next to