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eine Erinnerung aus fernen Tagen ~遠き日の記憶~
悲劇の少女―第1幕― 第8章
(24日目昼)
「おや、マーシャ様。お帰りになられましたか・・・。」
「あの、これを・・・」
私は、セリューク様の手紙をブロンジュールさんに渡しました。
「これは・・・、なるほど、承知しました・・・。」
「えっ?」
「ところでマーシャ様。セリューク様に、尋ねられたのですか?お母様のことを?」
私は、しばらく考えたあと、こういいました。
「いいえ、どうしても聞いてはいけないことのような気がして・・・。
でも、お母様はこの雫の結晶を残してくれた。それに私は、助けてもらった。
セリューク様にも言われました。私は、強くならなくちゃいけないって。」
「残酷かもしれません。でも、お許しください。私には話すことは出来ません。いえ、
今はまだ、ルシア様、そしてあなた自身を受け入れるべき時ではないのです・・・。
マーシャ様・・・。この森の南にはサングという木材で行う建設
を専門に行う集落があります。まずそこへ行くのです。」
「サングの集落?」
「すでに南の門はあけております。どうぞご無事で。」
「はい!分かりました。」
私は、聖堂を出て、南の方に歩き始めました。
ゆるやかな下り坂を降りてしばらくすると、私の前に大きな湖が広がっていました。
湖沿いに歩いていくと、少しして、サングの集落を見つけることができました。
「ここが、サングの集落・・・。」
今までの集落に比べると、にぎやかな集落だと思いました。
でも、しばらく歩くと、集落の人はみんな、浮かない顔をしていることに気付きました。
「あの。すみません。」
私は、とおりすぎようとしたその男の人にはなしかけました。
「困った困った・・、えっ?なに。」
「あの、みなさん。どうされたのですか。」
「あぁ、俺達はなぁ、このロッジディーノの森から、木材を作り出して、
建設するのが仕事なんだ・・・。それなのに・・・、困った。」
「あの?どうしてお困りなのですか?」
「だから!!俺達はなぁ、木材をエナ湖・・そこの湖から運んで来るんだがなぁ、
あそこに最近モンスターが住みつき始めたんだ・・・。」
「えっ?モンスターですか?!」
「おまけにロッジディーノ大橋が壊れちまうと来て・・・、困った困った・・・。」
男の人は相手できないって顔をしてそのまま走り去ってしまいました。
「ロッジディーノ大橋がこわれた・・・。」
ほかの人にも聞きました。でも、みんな同じようなことを言っていました。
そんなことをしている間に、夕方になってしまいました。
(24日目夕方)
「おや、宿屋にお泊りかな?」
「はい。」
「・・・ひょっとして、あんたもセーシャルポートに行くって奴か?」
「セーシャルポート・・・?」
「えっ、セーシャルポートを知らないのか?セーシャルポートはなぁ、
この大陸一番の大都市だぞ?」
「大都市・・ですか?」
「・・・どちらにしろ、セーシャルポートにはロッジディーノ大橋が修理されるのを
待たないとな、行けないぞ・・・。まぁ、そういうことだ。ゆっくり休め。」
「はい。」
(25日目朝)
「・・・おはよう。よく眠れたかい?」
「えぇ。」
「・・・今日も仕事場の連中が困った困った言ってやがる。
そんなこと言う暇があるんなら、とっとと修理すればいいだろうによぉ・・・。」
「誰があの橋を壊したのですか?」
「んなおっかないことを・・・、大方古くなっちまったからだろ?
あの橋は結構昔からあったものだからな・・・、何かで壊れちまったんだろう。」
「・・・そうですか。」
「まぁ、ぼやいても仕方がない・・・。まぁ、大都市じゃないかもしんないが、
この集落でなんか、面白いことでも見つけて楽しむんだな。」
「・・・はい。」
宿屋から出たことは出ましたが、結局これ以上は先に進めないことになりました。
「いったい、どうしよう。・・・困ったな・・。」
「困った困った・・・、あれ、ひょっとして、昨日の女の子じゃあ・・・?
何か困ったことでもあるのかい?」
「えっ、その、橋が壊れてしまっているので・・・。」
「そうか、確かにそれも困るけど、俺達は、もっと困ってんだ・・・。」
「何かあったのですか?!」
「あ、仲間が呼んでらぁ。・・・おぅ、仲間の一人がな、俺達が止めたのに
一人で湖に行っちまったんだ。って、ここでぼやいてても仕方がねぇか。」
男の人は、向こうの方へと走っていきました。
「みんな、大変困った事になった。リズノの奴が、帰って来ない。」
「なんだって?」
「どうして、止めなかったんすか。危険なのに・・・。」
「俺は止めた・・・、お前らも見ただろ?!最初は、どんな様子なのか見るために、
少し近寄るつもりで行ったんだ、・・・なのに、あいつは・・・。」
「・・・どうして探しに行かれないのですか?」
「うぁぁ?!えっ?女の子?」
「マーシャと申します。」
私はあの後、気になってこの仕事場までやってきていました。
「あれ、さっきの子。どうしたんだ、こんなところで?」
「その・・・、リズノさんをどうして一人にするのですか?!
あなたがたは、心配ではないのですか?!」
「心配だから、こうしてみんなを集めているんじゃないか!!
だが、あの湖にはモンスターがいるんだぞ!!」
「それなら、一人にしても構わないというのですか?!!」
「と、とにかくだれか探しに行ってくれないか・・?」
周りの人は、みんなうつむいて、何もしゃべろうとはしませんでした。
「誰もいないのか・・・?」
「だって、何があるか分からないんですよ。危険過ぎます。」
「そうだが・・・。」
「わかりました。私が、見てきます!!」
「えっ?な、何を言ってんだ?あそこはモンスターが出る。
女の子には危険すぎる。」
「私は、どうしてもあの橋を渡らないといけないんです!!!」
私は、すっかりその人たちのことで怒っていました。
「ちょっとまて・・・あっ、行っちゃった。」
「・・ど、どうするんですか?」
「俺ら・・・、なんて情けないんだよ。・・・なんであんな女の子でも行くってのに、
―――『あいつ』がいなくなっちまってから、どうしちまったってんだよ。」
(25日目昼)
私は、エナ湖のほとりまでやってきました。
とっても穏やかできれいな湖でした。
でも、しばらく歩いていると、たくさんの木材がそのままにしてありました。
「ここのどこかに、リズノさんがいるの?・・・でも、どこに?」
突然、ブルートが何かに気付いたみたいに、そこで止まってしまいました。
「何か・・・、何かいるの?!」
突然、湖から赤い何かが現れました!!
ブルートがすぐにその大きなエビのようなモンスターに飛びかかりましたが、
大きな赤いハサミがブルートの攻撃をとめてしまいました!!
「ブルート!!よけてっ!!」
私は、おもいっきり力をこめて、杖を振り落としました!!
でも、体があまりにもかたくて、そのまま杖ははね返されてしまいました!!
そのすぐあとに、エビのモンスターはそのハサミで私に向かって攻撃しました!!
ローブにかすって、そこの部分が少し破れてしまいました。
「ブルート!!ここは逃げましょう!!」
ブルートといっしょに、急いで湖の奥へと走っていきました。
その時、突然、私は何か、グニョっとしたモノを踏んでしまいました。
「ス、スライム?!!」
そのむらさき色のスライムは、突然私にむかって飛び上がってきました!!
私は、夢中で杖を振り回しましたが、そのひとつが私にあたった瞬間、
突然、私は体中が苦しくなってしまいました・・・。
「・・・え、ど、どうしちゃったんだろう・・・?」
後ろからは、エビのモンスターが近づいてきていました。
それでも、だんだん息をするのも苦しくなってしまいました。
体中に毒が回っていました。
そんな時、うしろで、ブルートがエビのモンスターの攻撃を受けて、
倒れてしまったのを見てしまいました。
「ブルート!!!」
・・・でも、それは攻撃されて倒れたのではありませんでした。
突然、ブルートの体が光り輝いて、その姿がゆっくりと変わっていきました。
「ブルート・・・?」
ブルートは飛び跳ねて、あたりに冷たい風を吹き出しました!!
今までのとは比べ物にならないほど、強い風でした。
「私も・・・戦わなくちゃ!!・・・リフレッシュ!!」
毒になったり何かおかしいことが起こった時のために、ってお父様が私に
教えてくださった魔法でした。外で使ったのはこれが初めてでした。
私は、元通り息ができるようになって、すぐにスライムたちから離れて、
杖を握りました。フラッシュリングを唱えるために!!
その時、地面が揺れはじめました!!だんだん強くなってきて、
それから突然、地面が割れて、その後、まっすぐ地面の下に落ちてしまいました!!
「・・・痛い。ここは・・どこ?」
とても暗い洞窟でした。最初は何も見えませんでした。
「リズノさん・・・、ひょっとしてこの洞窟に迷い込んでいるんじゃあ・・・?」
そんなとき、再び地震が起きました!!
でも、それは地面がゆれてるわけではありませんでした。
「・・・奥に、何かがいる!!」
そんな時でした。奥の方から悲鳴が聞こえてきたのです!!
「えっ?ひょっとして、リズノさん!?助けに行かないと!!」
まだ、目は慣れていませんでした。何度か壁にぶつかってしまいそうになりながら、
走っていくと、しばらくして地面に倒れている男の人を見つけました!!
「大丈夫ですか?!」
「・・・ん、っつ、・・・あれ、君は?」
「マーシャといいます。あなたは・・、」
「リズノという・・・。君はこんなところにいてはいけない。今すぐ帰るんだ・・・。」
「リズノさんをおいて行けません。いっしょに戻りましょう。」
「僕のことは放っておいて、はやく逃げろ!!」
「でも・・・」
そんな時に、再び地震が起こりました!!!
「マズい・・・、もう近くに来てやがる・・、とんでもないモンスターが奥にいる・・・、
ほかのモンスターどもも、そこから来てるらしい・・・だから早く逃げろ!!!」
「そんな、このままじゃあ、・・・」
「来る、危ない!!!」
リズノが突然私の前で背中を向けて立ちふさがりました。
次の瞬間、辺りからものすごい勢いで何か見えないものがぶつかってきました。
「リズノさん!!」
「だめだ・・・。もう・・・間に合わない・・・。」
「私が奥にいきます。心配しないで下さい。リズノさんをこんな目に会わせた
モンスターを許せません!!」
「無理だ・・・奴は、衝撃波を操る。・・・今のをまともに食らえば・・・・・、」
リズノさんは気絶してしまいました。
「・・・いくわよ!!ブルート!!」
走りながら、だんだんと目が慣れてきました。そして、突然広い場所に出ました。
「えっ・・・、これは・・・何?」
私は一度、そこにあったものと同じものを見たことがありました。
低い音をあげている、その冷たい機械を・・・。
突然、前から、衝撃波が私に向かってぶつかってきました!!
体中がものすごい勢いで押されて、倒れないようにするのがやっとでした。
そこにいたのは、見たこともないくらい大きなモンスターでした!!
「あなたが地震の原因・・・。アーシェルさんなら、きっとこう言います。
ハンティング開始!!―――あなたを倒します!!」
杖を持って、その大きなモンスターの方へと走りました!!
モンスターは、私の姿を見てからまた、衝撃波を出そうとしましたが、
私にもそのタイミングがつかめたので、すぐにマジックシールドで防ぐことが出来ました。
衝撃波がおさまったのを合図に、すぐに杖で攻撃をはじめました!!
ブルートが私の前を先に走り、とびかかるのを合図に杖をぶつけました!!
モンスターはすぐに怒ったようにこちらに向かってきました!!
ブルートはひるまずに冷たい風を吹き出しました!!
「ブルート、行くわよ。フラッシュリング!!」
ブルートが合図に気付いてよけた瞬間に、光の輪がそのモンスターを包み込みました。
「いいわよ、ブルート!!もう一度攻撃する・・・」
私はその時、何かおかしいことが起こっていることに気付きました。
ブルートの姿が見えない・・・、ちょっと辺りを探そうとしたときでした。
大きなモンスターが私に体当たりし、突き飛ばされてしまいました!!
まったく近づいていることに気付きませんでした。
それどころか、床に転がってからも、モンスターの攻撃からよけられなくなりました!!
「う・・・イタいよ・・・、どうして?!なんで、見えないの?!」
私は、一瞬その大きなモンスターが私に向かってくるのを見ました。
そして、その前を一瞬、青いものが当たるのを・・・。
「ひょっとして、私・・・。」
(25日目昼)
ブルートの叫び声といっしょに、体が私に向かって
飛んできました!!ところが、すぐにブルートは消えてしまいました。
まるで、光のようにすべてが速く動いていました・・・いえ、
「違うわ。・・・私が、ゆっくりになってるんだ!!」
気付いた頃、ブルートは、衝撃波が当たって、今にも倒れそうになっていました。
急にブルートのスピードが遅くなったので、私にも見えました。
「今なら、ブルートに近づける!!」
ブルートに走り寄りました。早くしないとブルートはまた、攻撃を始めてしまう!!
「キュア!!間に合って!!!」
キュアの青い光に包まれながら、ブルートはまたモンスターの方向に
走り出してしまいました!!また、何も見えなくなってしまいました。
「せめて、・・・せめてモンスターの場所だけでも分かれば!!」
右側から突然、砂や小石が風といっしょに飛んで、体にぶつかってきました!!
周りが全く見えなくなるのと同時に、体中が痛くてどうしようもなくなりました!!
声も出せなくなって、立つのもやっとになって来たとき、あることに気付きました。
周りは何も見えませんが、モンスターが向かった方向だけ、洞窟の壁の色が見えました。
私は、落ち着いてそのすなぼこりがおさまるのを待ちました。
ブルートとそのモンスターはまだ激しく戦っているみたいでした。
そして、また私は左側から、砂と小石がぶつかってくるのを感じました!!
「あなたが行く方向はそっち!!フラッシュリング!!!」
砂嵐が光の輪でかき消されて、向こうからものすごい叫び声が聞こえました。
そして、急に時間の進み方が遅くなったみたいに、しっかりとモンスターと
ブルートの姿をとらえました!!!
「ブルート!!行くわよ!!」
モンスターが動きを止めている間に、ブルートは冷たい風を吹きかけ、
私は杖で攻撃しました!!そして、最後の攻撃でモンスターはおとなしくなりました。
「・・・これで、ハンティング終了・・・よね?」
ブルートも私もボロボロになってしまいました。
(25日目 夕方)
「・・・そこにいるのは、・・・マーシャ?」
「リズノさん!!なんとか大丈夫みたいです!!」
「・・・あの大きな奴を倒すなんて、・・・君、強いんだな。」
「いえ、何度も負けそうになりました。もっと、今よりずっと強くならないと。」
「僕なんかのために・・・。」
「さぁ、帰りましょう。みなさんのところに。」
「すまない。仲間のところへ連れて行ってくれないか?」
洞窟の入り口まで行って、外に出られなくなってしまっていることを思い出しました。
「ど、どうやって帰れば・・・。」
「おい!!リズノ!!いるのかっ?!いるんなら返事しろ!!」
「仲間の声だ。・・・おお!!僕はここだ!!」
「リズノか!!おまえ、無事だったんだな!!」
「なんで、1人で行くなんて無茶したんだ!!」
「はやく橋を直したかった。それに、みんなに、迷惑かけたくなかったんだ。」
「とにかくだ、ロープを下ろす。あがって来い!!」
「よかった、リズノだ・・・。」
「だからって、1人で行くんじゃねぇよ!!俺達がいるだろうが!!」
「あ、君は!!」
「助けていただいて、・・・ありがとうございます。」
「それじゃ、君がリズノを・・・、なんてお礼を言えばいいんだ。」
「リズノ達は疲れてるんだ。今は、仕事場に向かおう。」
仕事場に連れて行かれて、すぐに私はベッドで深く眠ってしまいました。
「・・・みんな、これで少しは湖も安全になった。
リズノだけじゃない。橋の修理はここの全員。そして集落の人間にとっても
大切なことだ。リズノみたいな奴がもう出ないようにしたい。」
「ああ。みんなで行こうぜ。ロッジディーノ大橋は俺達の手で直す!!」
それから2、3日・・・サングの集落は活気に満ちあふれていました。
次の日には、私も目を覚ましていました。
「ああ、起きたみたいだな。」
「そ、その・・・ついたあとにすぐ寝てしまって、ごめんなさい。」
「あやまんないでくれよ。こっちは、君に対して感謝でいっぱいなんだからさ。
おい、リズノ!!起きたようだぞ!!」
「リズノさんですか?」
部屋の中にその男の人は入ってこられました。
「女の子が起きたみたいだ。」
「そうか・・・、よかった。ここについたらすぐに倒れこむんだからな。」
「まぁ、2人でゆっくり話しな。あ、そうだ。2日後には橋が完成してるからな。」
「はい。わかりました。がんばってください!!」
(26日目 昼)
「・・・マーシャさん。」
「はい、リズノさん。何でしょうか?」
「橋が出来たら、君も・・・その、南に行くんだろ?」
「えぇ、私にはやらなければならない事があります。まずは、
セーシャルポートに行こうと思っているんです。」
リズノさんは、がっかりされたように肩を落とされました。
「どうかされましたか?」
「いや、君も・・・他の奴らみたいに都会に流れてしまうんだな・・・、
て思うとね・・・・。でも僕にそんなこと言う権利ないよな・・。」
「私には、・・・探さなければならない、仲間がいるんです。」
「仲間・・・?」
「アーシェルさんとシーナさんと言うんです。」
「―――シーナ?」
リズノさんの話し方が急に変わりました。
「え?シーナさんをご存知なのですか?!」
「ひょっとして、シーナ=フェリア―――ナイフの二刀流が得意な女か?」
「・・・そうです。ナイフの二刀流でした。」
「やっぱり・・・。」
リズノさんは、なんだかとてもなつかしいことを思い出してるようでした。
「シーナさんを、何故ご存知なのですか?」
「・・・えっ、あ、気にしないでいいよ。・・・そ、そんなことより、
セーシャルポートは有名な港町だ。ひょっとして、
その・・、アーシェルさんやシーナ・・さんとも会えるかもしれないよ。」
「そうですね。」
「・・・もう僕は仕事に行かないといけない。
だけど、・・・もしシーナに会えたら・・こう言ってくれないか・・・?」
「えっ?」
「・・・がんばれよって。」
「はい。必ず伝えます。」
2008/12/10 edited (2003/02/25 written) by yukki-ts next to
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