[stage] 長編小説・書き物系

eine Erinnerung aus fernen Tagen ~遠き日の記憶~

悲劇の少女―第1幕― 第9章

 (28日目昼)
 サングの集落の西側に、セーシャルポートの街への
とても大きくてきれいな橋が出来ていました。
 私は、仕事場の人や集落の人と別れて、その橋の近くまで歩いてきました。
「ここが、ロッジディーノ大橋・・・。えっ、あれは?」
 橋の中央で、2人の女の人が大きな鳥のモンスターに襲われていました!!
「ブルート!!行くわよ!!」
 私は杖をしっかりと握りました。ブルートが冷たい風を吹きかけると、
その鳥のモンスターは魔法で、すばやくその風をかわし、そのまま橋から逃げました。
「た、助けてええ!!」
「あ、ちょ、ちょっと!!・・・でも、無事みたいでしたし、よかった。」




 (28日目夕方)
 橋を通り過ぎると、森が開けてそこには、夕日で真っ赤に染まった
とても美しい海が広がっていました。たくさんの船が街にむかって進んでいました。
「ここが、セーシャルポート・・・。」
 もう、太陽も沈んで、夜になろうとしている時間なのに、にぎやかで明るい街でした。
花々が咲き乱れ、小鳥たちはさえずる。今まで見たことがないくらいきれいな街。
街の中を歩いている人々の顔は、みんな明るくて、楽しそうでした。
「ここに、グリンディーノの森から来た人がいるのよね?」
 私は、慣れない人ごみの中、しばらくさがしていましたが、あっという間に
辺りは真っ暗になってしまいました。
「どうしよう・・・。まだみんな歩いてるけど、・・・もう夜よね?」
 街の東側、とても大きな病院の1階にこの街の宿屋はありました。
「あの、今晩泊めてもらえるでしょうか・・・。」
「う、うん、そうだね。悪いけど今日はちょっとたくさん人が、
 泊まってて、部屋がもう空いてないんだ。」

「そ、そうなんですか?」
「すまないねぇ。ここの海は、きれいな星空で有名な観光スポットだからね。
 ホントのこと言うと、毎日こんな感じなんだよ。」

「私はどうすればいいのでしょうか・・・?」
「ほんとうに申し訳ないのですが、別の場所へ行ってください。」
「そうですか・・・。」
「・・・あら、あなたは、ひょっとしてさっき助けてくれた人では・・。」




 (28日目夜)
 階段から、先ほど橋で出会った、女の人が下りてこられました。
「ああ、あなたは、ロッジディーノ大橋にいた・・・。」
「そうそう。あのときは、助かったわ。ありがとね・・・、ところで今日泊まれるの?」
「・・そ、それが・・・。」
「あら、そうなの。それなら私たちの部屋にいっしょに泊まりましょうよ?」
「いいのですか?」
「助けてもらったのよ。当然の事よ。・・・別にいいですわよね。」
「・・・それは、別によろしいですが。」
「それじゃ決まり。いらっしゃい・・ええと、」
「私はマーシャといいます。」
「そう、マーシャって言うのね。私はメリーナよ、よろしく。」




 (29日目朝)
「・・・あっ、おはようございます。メリーナさん。」
 私は、突然何かに起こされたような気がして目を覚ましました。
でも、2人ともまだベッドで寝ていました。
「あれ?・・・おかしいな。」
 私はふと窓の外を眺めました。
「朝日がきれい・・・。まるでスフィーガル岬でみた時のような・・・、
 ・・・アーシェルさん、・・・シーナさん。どうしてるんだろう・・・。」

「ふわ~~~。あれ、マーシャはもう起きてたの?」
「はい。おはようございます。メリーナさん。」
「さんはやめてよ・・。ただメリーナって呼んで。」
「は、はい。」
「・・・ちょっと、サリーナ。はやく起きてよ・・。」
「―――え、あ・・・。もう朝・・?」
「なに言ってるのよ?はやくおきて。」
「・・・あぁ、姉さん。おはよう。」
「・・・姉妹なのですか?」
「あら、あなたは・・・?」
「・・・サリーナ、あなた・・・忘れちゃったの?」
「ちょっとまって・・・・、ひょっとして・・・。」
「はい・・?」
「そうよ。あなた、この前、私達を助けてくれた・・。」
「・・・はい。」
「やっぱり。あの時はありがとね。」
「どういたしまして・・・。」
 しばらく、メリーナさんとサリーナさんはいろいろと話されていました。
「姉さん・・。今日はどうするの?」
「そうね、今日は・・・、そういえば、マーシャは、どこの集落から来たの?」
「えっ・・・、あ、あの、・・・。」
「・・・あ、そうか。他の大陸から船に乗ってきたのね。分かったわ。
 きっとこの街は初めてでしょう?私達が案内してあげる。」

「えっ、・・・あ、はい。お願いします。」
「ああん、もう、そんなにかしこまらなくてもいいの!!
 今日1日だけでも、気楽に話してよ。」

「は、はい・・・。わ、わかりました。」
 私は、とても楽しんでいました。
2人と話していると、とても気が楽になりました。

 まさか、私の命を狙っている人がこの街にいるなんて、思ってもいませんでした。




「見つけた。・・・この街に、1人いやがる。・・・女の方か。」
 港に着いてすぐにわかった。この俺に反応しやがったのか、それとも、
俺が、奴の気配を気付いたかはわかんねぇけど、俺のカンはそう言っていた。
 ここでは、俺の姿を消す必要なんかなかった。
周りの人間には、誰一人として気付かれちゃあいない。
まさか、すぐそばにこれから殺しをやろうとしてる奴がいるなんて思っちゃいねぇ。
「あとは、向こうが気付いてるかどうかか。もし、この気配が消えネェようなら、
 ・・・奴の息の根は、今晩まで・・・。」

 俺は、スピアに手をかけ、それからしばらく、港からなるべく離れねぇように、
ゆっくり歩きながら、時間をつぶした。

「・・・奴の命は、・・・今晩、消える。」






 (29日目昼)
「ちょっとぉ、これ、いくらなんでも高いわよ!!」
 私は、メリーナさんとサリーナさんに連れられて、ショップに入っていました。
「姉さん!!これ、これ良くない?!」
「これねぇ・・・。」
 そういいながら、メリーナさんは、私にそのマントを着せてくださいました。
「かわいすぎる!!」
「お人形さんじゃないんだから・・・。この、リボンなんてどう?」
「それいい!!着せちゃえ着せちゃえっ!!」
 私は、さっきから何もしていませんでした。
「ホンっとに何着けても可愛いわね。」
「なんで、いままでオシャレとかしてなかったの?」
「オ、・・・オシャレですか?」
「ああ、もうわかったわ!!私たちがお金だしてあげる!!
 少しは、オシャレにしないと、オトコも寄り付かないわよ。」

「オ・・・オトコの人?」
「だからぁ。もう、こんな可愛いのに、なんでよ?もったいないわねぇ。」
「だから!!しつこいのよ!!高いったら、高いの!!」




 気付いた時には、私の着ているものがみんな新しくなっていました。
「もう、それに、そのロッドも新しくしちゃえばよかったのに。」
「これだけは、ダメです!!」
「そういえば、結局あのボロボロのマントだって売らなかったしねぇ。
 そんなに、大切なものなの?」

「お母様のものなんです!!」
「そうなんだ・・・。私なんか、あのばあさんにもらった杖なんて、
 とっくに売っちゃったわよ。」

「え、サリーナ!!・・・ホントに売ったの?!」
「結構高い値で売れたわよぉ。」
「だいたい、『ばあさん』だなんて・・・。」
「『ばあさん』・・・?」
「あ、マーシャ!!聞いてたの?」
「セリュークっていう、嫌なばあさんよ。私達、いい加減、
 つきあいきれなくなって、ここまで逃げてきたの。」

「セ、セリューク様?なぜ、ご存知なのですか?!」
 そのひとことで、私は2人の顔がすぐに変わったのに気付きました。
「セリューク様?・・・マーシャ、あなた・・・。」
「ひょっとして、・・・セリュークの言いつけでここに来たっていうの!!」
「わ、・・私は・・・。」
 2人の顔が、急にこわくなったように見えました。
「そういうことね。分かったわよ。」
「どおりで強いはずね。」
「わかったわよ、そうよ!!逃げてきたのよ!!文句あるの?!」
「私はそんなつもりじゃあ・・・。」
「なんてね・・・、冗談よ。いいじゃないのよねぇ、たまには骨休みしたって。」
「そろそろ、帰ろうって思ってたのよ。」
「昨日は、あの橋でモンスターに襲われたし、今日はマーシャといっしょに、
 ショッピングしてた・・・そう、そうよ!!だから、帰れなかったの!!」

「ご、ごめんなさい。」
「・・・あやまるところじゃないでしょ?」
「そ、そうなんですか?」
「とにかく、私達のことは心配しないで。もう、かえるわ。」
「って、ホントに帰るの?」
「帰る気ないの?」
「・・・ダメ?」
 メリーナさんは、厳しそうな目でサリーナさんを見ました。
「わ、わかった。」
「それじゃ、マーシャ。また、会えたときは、よろしくね。」
「私も、グリンディーノの森で、また会えるのを楽しみにしています!!」
「って、・・あ、あの森で会うの?!」
「だって、帰られるのですよね?
 そ、その・・・。私も、またあの森に行こうかなって思ってて。」

「・・・わかったわ。次に会うときは、私達も森にいるから、その時はよろしくね!」
「はい!!」
 私は、2人がまっすぐ北へ向かって歩くのを見送りました。




 (29日目夕方)
 お昼もすぎて、だんだんと辺りが夕焼けに染まり始めていました。
私は、海岸沿いを歩いていました。
 この海の向こうに、アーシェルさんやシーナさんはいるんだ・・・。
 でも、私には、とても想像することが出来ませんでした。
今、アーシェルさんはどこにいるのか、・・・シーナさんは何をしているのか・・・。
それに、・・・私は、今、どこにいるの・・・?
 南の方から長い汽笛の音が聞こえてきました。
あの音は、港に船が着いたときの音ということを、メリーナさんに教えてもらいました。
「ひょっとして、誰か、知ってる人がいるかも・・・。」
 私は、ちょっと期待しながら港の方に歩いていきました。

 そこに何があるのかも、知らないまま・・・。




「近づいてくる。・・・向こうから来たか。」
 ちょうど、ディシューマからの船が港に着いて、人が下り始めた時間だった。
もちろん、こんな人前で、殺しなんか出来やしねぇ。
 しばらく、俺はかげに身を潜めてた。
 人影がまばらになってきた頃に、その女はやってきた・・・。
「・・・大きな船ね、―――。」
 最初、俺はこの女が誰かにはなしかけていやがると思ってた。
だが、いくら待っても、そいつ以外にすがたは見えなかった。
 女以外に、もう1人、男がいるはず・・・。
「・・・もう誰もいない・・・。」
 俺は、行動を開始した。
ゆっくりと、気配を消し、近づいてった。
 はじめは、真夜中に息の根をとめるつもりだった。
そいつが、いつものやり方・・・。
 その時、奴は、俺の方を向いてきやがった。
偶然にしちゃあ、はっきりと俺の方を向いてた。
 気配を消していたのに、なぜ、わかった・・・?
女の目は、知らない人間を見るような目・・・。
「あ、・・・あの?・・・な、何か私にご用でしょうか?」
「ひとり・・・か?」






 (28日目夕方)
 港に来たときには、もう人がいませんでした。
「・・・大きな船ね、ブルート?」
 ブルートは、どこかいつもと違っていました。
何か、いつもとは違う、何かを探してるような、そんな感じでした。
「・・・でも、もう誰もいないわ・・・。」
 私は、だんだんと暗くなってきていたので、宿屋に戻ろうとしました・・・。
「なに?・・・ブルート?」
 ブルートが、右の方を向いていました。私も、すぐにそちらの方向を見ました。
その先には、・・・とても長い武器を持っている、男の子がいました。
最初は、怖い顔をしていましたが、私が、顔を見たとたんに、
もっと、怖い顔になってしまいました・・・。
「あ、・・・あの?・・・な、何か私にご用でしょうか?」
 その男の子は、とっても低い恐い声で、こういいました。
「ひとり・・・か?」
「は、はい。ひとり・・・、あ・・ブルートもいます!!」
 その男の子は、ブルートをにらんでいるみたいでした。
ブルートも、その男の子を、とても怒ったように見返しているようでした。
「おまえ、・・・マーシャって名前だな?」
「そ、そうです・・・。な、なんで、ご、ご存知なのですか?」
 男の子の顔が急に、怖かった顔から、笑ったようになりました。
「1人だけど、構わねぇよな・・・。悪ぃけど、これも仕事・・・。」
「ど、どういう意味ですか?」
「俺は、ディシューマから来た殺し屋。
 お前らに1000000D$って大金が、積まれてやがる。」

「え?」
 ブルートは今にもとびかかりそうでしたが、
私は、その男の子から目を離すことができませんでした・・・。
「・・・。」
 突然、男の子のすがたが消えてしまいました!!
「ど、どこにいっちゃったの?!」




 俺には、とても、そんな大金が積まれるような奴には見えなかった。
スキだらけ・・・、いや、むしろ、攻撃しようって気がないようにしか見えねぇ・・。
 だが、これから死ぬってことの恐怖だけは、分かってやがるみたいだった。
「遅ぇんだよ!!・・・エクスプロージョン!!」
 俺は、一気にかたをつけてやるために、大爆発を引き起こした。
・・・砂煙がおさまると、女は、杖を持ってこっちをにらんでいやがった。
「けっ、・・・この程度じゃ、死なねぇか?」
 魔法を使いやがった。・・・でなきゃ、今ごろ、バラバラになってやがるはずだ。
俺は、スピアを奴のギリギリのところにつきつけてやった。
 女は、あとずさりしながら、それを避ける・・・。
「な、なんで、・・わ、わたしを・・・?!」
「言っただろ?・・・仕事だよっ!!」
 一気に、スピアでその女を貫いてやった。
手にその感触が伝わってきやがった・・・。スピアから血がしたたりおちる・・・。
「けっ、・・・外しちまった。」
「・・・キュア!!」
 女のまわりを青い光が包んだ・・・。
「けっ・・・、やっかいな奴だぜ、全くよ!!」




 私は、急に声が出せなくなってしまいました!!
一度、こうなったことがあるので分かります。魔法が使えなくなってしまいました。
「さてと、・・・とっとと殺っちまうかな。」
 私は、正直言って、とても恐いと思っていました。
男の子は、間違いなく、私を・・・殺そうとしていました!!
 男の子が、私の方を向くたびに、体中が縮こまるみたいに、恐くなりました。
声が出せないどころか、動くことも、出来なくなっていました。
「恐いかよ?・・・そりゃ、仕方がねぇよ。・・・これから殺されるんだからよ!!」
 男の子が、また私の方を向いてきました。
ところが、今度は恐くありませんでした。急に、心が安らかになったみたいでした。
とても、そんな状態じゃないはずなのに・・・。今にも、この男の子が、
あの長くてとがっている武器で私を・・・殺そうとしているのに・・・。
 でも、こんな気持ちいい場所から・・・抜けたくない。
もう、恐くなんか、・・・なりたくない・・・・・。




「さてと・・・、終わりか。結局、ただの女じゃねぇかよ。」
 女は、俺の魔法にかかってその場で寝始めやがった。
「もう、恐くねぇだろ?安心しな。今から殺してやるから。」
 俺は、スピアで躊躇せずに思いっきり突いてやった!!
「・・・てめぇ?」
 俺のスピアの先には、モンスターが突き刺さってやがった。
「なんで、スカイラットの奴が・・・?けっ、どけやがれっ!!」
 俺は、そのスカイラットをはらいのけた。
その瞬間、こいつが、猛烈な冷たい風を俺に吹きかけやがった!!
 凍りついちまう前に、俺は、スカイラットを跳ね飛ばしてやった。

「・・・そっか、・・・スカイラットって言うんだ・・・。」

「ちぃ、起きちまったかよ。」




「それじゃあ、こんどからブルートじゃなくて、スカートだね・・・。」
「目ぇ覚ましたんならよ、答えろよ。・・・もう1人はどうしたんだよ?」
 私には、何も聴こえませんでした。
何も、話すことができませんでした・・・。
「もう1人の男はどこだよ?!」
 スカートは、血だらけでしたが、まだ男の子を見ていました。
でも、私はもう、杖をふることや、魔法を唱えることなんて、出来ませんでした。
「ちっ、・・・もう、やめた。・・・せいぜい、楽になれよ。」
 男の子は、武器の先を地面につきつけました。
その先っぽが、むらさきいろに光りました・・・。

 その後のことは、・・・何も覚えていません。
何が起こったのか、何もわかりませんでした。

 私は、死んでしまったのだと、そう思っていました。






 (29日目夜)
「あ、・・・気付いたの?!」
「・・・こ、ここは・・・?」
「ここは、病院よ。」
 私は、ボロボロの体になって、ベッドで横になっていました。
しばらく、白い天井を見つめていました。
「意外と早く、意識が戻ったわね。」
「メリーナさん・・・、なんで、ここにいらっしゃるのですか?」
「マーシャがこんなことになっちゃってるからよ!!決まってるじゃない!!
 それにしても、いったい、何があったっていうの?」

「そうだ、・・スカート、あの!!スカートはどこですか?!」
「スカート・・?・・・ひょっとして、この子のこと?」
 私は、ゆっくりと横を向きました。そこで、スカートも眠っていました。
「お医者様は言ってたわよ、もし、あの子がマーシャをつれてきてくれなかったら、
 手遅れになってただろうって・・・。」

「あの子・・・ですか?」
「男の子よ・・・。長いスピアを持ってるって・・・。あ、でも、
 マーシャをつれてきたら、すぐに消えちゃったんだって。」

「・・・なんで?」
 ひょっとして、私を、・・・殺そうとしていた、あの男の子?
「えっ?・・・恥ずかしかったんじゃないの?」
「・・・ね、眠い・・・。」
「そうよ、いまは寝なくちゃだめ!!」

 私は、そのまま4日間眠りつづけていました・・・。




 (33日目夜)
 私は、下の階の騒がしい物音で目を覚ましました。
「なにが起こったのでしょうか?・・・メリーナさん?」
 私は、病室で1人っきりでした。
その時、下から、悲鳴が聞こえました!!
・・・それに、盗賊のような恐くて低い声も聞こえました・・・。
「おい・・・、金だせよ、さもねぇと、ここの病人どもの命はネェぞ!!」
「ちょ、ちょっとお待ちください!!お金なら、すぐに・・・。」
「はやくしねぇかよ、バカやろぉ!!」
 銃声が響いてきました・・・。
「きゃぁああっ!!」
「おっと、騒ぐなよ。・・・外にバレたら、皆殺しだと思え・・・。
 おい、テメェら、灯り消してこい。」

「おい、・・・はやくしネェかよ!!」
 また、銃声が響いてきました。
「本当に殺されたいらしいなぁ・・・。」
 病室の明かりが、その時突然、消えてしまいました。
夜なので、周りは何も見えませんでした・・・。

「グワァァァ!!!」

「えっ!!?」
 下から、今度は、盗賊の人たちの叫び声が聞こえてきました!!
「何・・しやがる・・・、グッ・・・ウァ!!!ウグォォォォ!!!!」
「早く灯りつけな!!」
「親分・・・どうしたん・・・グハァアア!!!」
「な、何が起こったんだ・・・?」
「・・・何があったんだろ・・・?」




 照明がまた灯ったときには、すべての盗賊が倒れてたわ。
私は、両手に握ったナイフをさやにしまった。
「・・・あ、あなたは・・・?」
「ん、どうしたの?」
「あ、ありがとうございました。」
「何、暗くて邪魔だったから、ちょっと暴れちゃったわ。
 ごめんなさいネ。・・・そんなことより、ちょっと入ってもいいかしら?」

「えっ・・・は、はい。どうぞ!!」
「ありがと・・・。」
 私は、この病院から調べることにしたわ。
・・・宿の中にあるっていうだけの理由だけど。
 まさか、病院にいるとは思ってなかったけど、1つ目のドアを開けてみたの・・・。
「・・・?!!」
「ん?・・・マ、マーシャ!!・・・マーシャじゃないのよ!!!」
「・・・シーナさん・・!!」
「マーシャ、・・こんなとこにいたの?!!・・・よかったぁ、見つかって。
 まさか、こんな早く見つかるなんて思わなかったわよ・・・。」

「アーシェルさんは?」
「そうよ・・・アーシェルの奴が今、大変なんだ!!
 ・・・って、そんなことはいいの。・・・どうしたのよ、その傷?」

 マーシャは、しばらく驚いてるのと、また会えてうれしいので、
興奮していたけど、事情を話してくにつれて、だんだん、ことの深刻さが分かってきた。
「殺し屋に狙われてるですって?・・・もう、殺られちゃったの、アンタ?!
 って、・・・なんで、生きてるの?・・・なんで、病院に?!
 そんなことはどうでもいいわ!!いつまでこんなところにいる気よ!!
 また、奴が襲ってこないわけなんてないじゃないのよ!!逃げるのよ!!」

「えっ?」
「何してんのよ!!行くわよ!!」
「はい、スカート!!行こっ!!」




 私は、・・・シーナさんと再会することができました・・・。
「ここに、私がチャーターした船があるわ・・・。急いで!!」
「はい。」
「・・・ず、ずいぶんかわいい格好してるのね。・・・それにその子も・・・。」
「はい、スカイラットだから、スカートです。」
「へぇ、よく知ってるじゃない。・・・まぁ、いいけど。」
「あの、シーナさん・・・。」
「積もる話はあとよ!!・・・せっかく周りが暗いんだから、
 今のうちに抜けちゃうわよ!!アイツは、・・・アーシェルの奴は海の向こうよ。
 ・・・そうね、ひとことだけ、言ってもいいわよ。」

 それからいろいろと私は、シーナさんに言うことを考えてみました。
・・・いろいろなことが、思い出されました。
 セニフさんのこと。ザヌレコフさんのこと。ブロンジュールさんやセリューク様。
リズノさんや、メリーナさん、サリーナさん。・・・そして、私を殺そうとした男の子。
「どうしたの?・・・やっぱり、言うのやめる?!」
「え、あ、・・・あの、その・・・!!
 わ、私!!・・・ま、またシーナさんに会えて、とても・・・とてもうれしいです!!」

「へへ、・・・私もよ。それじゃ、おしまい。行くわよ!!グラニソウル大陸!!
 ―――アーシェルのいる、ディメナ目指して!!!」



2008/12/11 edited (2003/03/12 written) by yukki-ts