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eine Erinnerung aus fernen Tagen ~遠き日の記憶~
悲劇の少女―第1幕― 第6章
(19日目朝)
私は、セニフさんがまだ起きてないうちに、
ロジニの集落を出て、南にあると聞いた、トルクの集落へと歩き始めました。
モンスターに会うのが恐かったのですが、
私が歩いている間、誰とも会う事はありませんでした。
途中で、ブルートと道のはしで座って何度も休んだりして、
ゆっくりと歩いていきました。
トルクの集落についたときには、もう、真っ暗になっていました。
「ここが、トルクの集落・・・?」
「ん?君は、誰・・・?」
ここの集落の人が私に話し掛けてこられました。
「私はマーシャといいます。」
「へぇ、女の子がなんでこんなところに・・・。
ここは、盗賊達が集まる事で有名な場所だよ。」
「わ、私は・・・。」
「何か探してるの?」
そう話し掛けてくる人に、ブルートが突然怒ったようにうなり出しました。
「ちょ、ちょっと?!どうしたの?」
「その子には、分かるみたいだな。・・・俺も、昔は盗賊だったからな。」
「えっ?」
「昔の話さ。・・・今は、この集落で静かに暮らしてる。
・・・ここの集落の連中はほとんどがそんな奴らさ。」
「そ、そうなのですか?」
「ま、もう、夜も遅いしな。宿屋にでも泊まりな。」
「は、はい。」
そう言って、男の人は近くの家の中に入ってゆかれました。
「で、でも・・・宿屋って、ど、どこに・・・?」
しばらくの間、集落の中を歩いていたのですが、よく分かりませんでした。
時々、男の人が通り過ぎようとするので、話し掛けようとしても、
私のことをにらみ返して、黙って通りすぎていってしまいました。
「こ・・・恐い。」
私は、どうしようもなかったので、さっきの男の人が入っていった家に向かいました。
「す、すみません。ごめんください!!」
ドアが開いて、先程の男の人が出てきました。
「どうした?宿に行かないのか?」
「そ、その・・・。」
「金が・・・ないのか?」
「あ、お金は・・・。」
私は、サイフを取り出しました。
「お、おい!街中で財布なんか出すと、盗られちまうぞ。
お金はあるんだろ?って、おい。こいつは、・・・ここの金じゃねぇな。」
「あ、わ、わたしのサイフ!!」
「盗りゃあしないよ。・・・こいつじゃあ、ここの宿には泊まれねぇぞ。」
「ど、どうすれば?」
「・・・仕方がねぇな。俺のとこで泊まっていけよ。」
「よ、よろしいのですか?!」
「・・・あぁ、いいぜ。」
「・・・よく眠れたかい?」
「は、はい。ありがとうございました。」
「そうだなぁ、ここは初めてだろ?案内してやる。
ここから東の方には灯台があるが、こっちには門番がいる。
南の森も、危険だから門番に止められるだろうな。
ま、あとは、こんな感じの家が何軒かあって、一軒だけ、ショップがある。
・・・っていっても、金がないんじゃ、話が始まらねぇけどなぁ・・・。」
「わ、私はどうすれば・・・?」
「ここに何のために来たか、・・・俺は聞いちゃいないから、
ちょっとわかんねぇけどな。ま、がんばりな。」
結局、それから、誰とも話せませんでした。
でも、雫の結晶を奪ったかもしれない人達に、どこにあるのですか、
なんて、聞くことなんて出来ません。
「ブルート?」
ブルートは、地面に降りてショップの方を見ました。
「どうしたの?」
何を言いたいのかは、私には分かりません。
でも、ブルートは、ショップの方へと走っていきました。
「ちょ、ちょっと。待ってよ!!」
ブルートは、ショップには入らずに、裏口の方に走りました。
急に、ブルートは止まって、その奥の路地を見ました。
「・・・だ、誰かいる。」
静かに角から、その人を見ていました。
こそこそと、何かを隠しているみたいに、隣の家へと入っていきました。
「ブルート?・・・あの人?」
そう言うと、ブルートは急にその人を追いかけ始めました。
私も急いで追いかけました。ブルートは中へと飛び込みました!!
「ちょ、ちょっと待ってよ・・・」
私は息を切らせて、中をのぞきました。
でも、誰もいません。でも、ブルートは低い声でうなっていました。
「どうしたのよ?ブルート。あの人・・・。」
ブルートは、階段の上の方に走って、少しのぼってとまりました。
そこまで歩いていって、上の階で誰かがしゃべってる声が聞こえました。
「・・・そろそろ、武器をくださらねぇか?」
「ああ、さっき連中がお仕事から戻ったところよォ。」
「で、ブツはどこにあるんで?」
「・・・灯台に運んだみてぇだな。」
「灯台?なんで、また。」
「いや、それがなぁ、連中、ロジニの仕事場にちぃっと細工してたんだ。
落盤するようにな。あんだけの落盤なら、中の奴等は・・・。」
「・・・や、殺っちまったんすか?」
「さあな。まぁ、その間に、奴らから奪ったもんがあんだ、・・なんだかわかるか?」
私は聞きながら、だんだんとこの人達が許せなくなってきました。
この人達が、セニフさんを・・・みんなを生き埋めにしようとした、
・・・あの幻の雫の結晶を奪う、それだけのために!!
「で、今、灯台のボスのところに、他のブツと一緒においてんだ。
そうだな、これからボスん所、戻ってみっか?」
上にいた何人かの人の足音が聞こえ始めました。
私は、とっさに壁に隠れましたが、誰も下りてきません。
「え、いったいどこに?」
ブルートは2階に上がっていきました。
私も、ロッドを強く握って、ブルートの後についていきました。
(20日目昼)
2階には、誰もいませんでした。
「そんな、どうして?!」
ブルートは、ゆっくりと部屋を回ったあと、壁にぶつかっていきました。
そうすると、壁が崩れて中に別の階段があらわれました。
「ここから、灯台に行ったの?!・・・ブルート、行きましょう!!」
急いで追いかけました。・・・でも、道には誰もいませんでした。
でも、波の音がだんだんと近づいてきた時、今にも崩れそうな、
とても古い青い灯台を見つけました。
「ここに、幻の雫の結晶が・・・。」
中では、吹き込む風がこだまして、恐い音をたてていました。
暗くて、時々天井から、青い粉が降ってきます。
足音が響いて、私とブルートしかいないはずなのに、周りから、
たくさんの人に見られているような気がして、落ち着けませんでした。
ずっと、ロッドを強く握り締めて、ゆっくりと歩いていました。
広い灯台の真ん中に、大きな扉がありましたが、鍵がかかっていました。
「ブルート、・・・この中にいるの?」
ブルートの様子だと、きっとこの中にいるのは間違いありませんでした。
でも、このままだとどうしようもありません。
「少し、周りを探してみよう・・・。」
奥に古い階段があったので、上りました。
灯台から、海は見えましたが、なんだかとても遠くに感じました。
今、1人で私は、何人もいる盗賊の人達のところへ行こうとしている。
そう思うと、ブルートがいっしょでも、とても心細くなりました。
「でも、みんなが待ってる・・・。私が帰るのを!!」
また、階段を見つけて、そちらに走ろうとすると、急に男の人の姿が現れました!!
「誰だぁ、お前!!・・・何しにきやがったぁ?」
「つかまえるぞ!!」
私は、とっさにロッドを強く握りました!!
ブルートは、私の前に走って、その2人に冷たい風を吹きかけました!!
すぐに私は前にでて、ロッドをその人たちにぶつけました!!
「く、テメェ、何しやがる・・・。」
「ご、ごめんなさい!!で、でも・・・。こうしないと、私!!」
ブルートが、もう1人の男の人に攻撃して、床に転ばせました。
「痛かったら、ごめんなさい!!でも・・・フラッシュリング!!」
私は、何も見ないようにして、急いで2階に上がりました。
「ど、どうしよう・・・、私、あ、あんなこと!!」
ブルートが、私の方を向いて、そしてすぐに奥に走っていきました。
階段の下から、男の人の声が聞こえてきました!!
「い、行かなくちゃ!!」
それから、私は夢中で走りました。それから、いくつか階段を上りました。
「えっ、・・・あれは?」
私は、離れた真ん中の部分に、何人かの人を見つけました。
3人の人が、真ん中にいる大きな人・・・きっとあの人達が言っていた、
ボスの人がいて、・・・その隣にあのロジニの集落にいた門番の人がいました!!
そして、その足元に、手足を縛られ、しゃべれないようにされた、
10人くらいの人がいました!!
「あ、あの人達、・・・ひょっとして、・・・ロジニの人?!」
私は、気付かれないようにして、心を落ち着かせながら見ていました。
・・・向こうの階段から、何人かの人が上がってきました。
「ザヌレコフさん。武器を少し、ゆずってくだせぇ。」
ザヌレコフ、・・・確かそう呼ばれていた、その大きな人は、
低い声でその人にこう言いました。
「・・・ここから消え失せろ。」
「な、何を言うのですか?」
「もはや、お前等に用はない。欲しいものは手に入ったからな。
長いこと、同じ奴を手下にしてるのは好きじゃなくてな。邪魔だ。
それに、コイツが今度から、新しい俺の手下だ。」
そう言って、大きな人は、ロジニの門番の人を指差しました。
「お、お前・・・。」
「・・・。」
「消え失せろ。」
「・・この野郎!!ザヌレコフだかなんだかしらねぇけど、俺等もここらじゃ、
有名な盗賊よぉ。このまま引き下がれっかよ?!テメェの命か、
そうだなぁ、テメェ奪った雫の結晶とかいう奴をよこしやがれやぁ!!」
「手ェ、貸せや、みんなぁっ!!」
私は、その次の瞬間に、・・・その男の人達が、ザヌレコフさんの持っていた、
とても大きな剣に切られるのを見て、大きな声をあげてしまいました!!
「殺しはしねぇ。ただ、お前等はこの先、力不足だって言ってんだよ。」
「くっ・・・。」
周りの連中が騒ぎ出しやがったことに、俺は気付いてた。
「ザヌレコフ様!!・・・向こうに誰かいやす!!」
「誰だ?」
「えっ?!」
女・・・そいつは、杖を持った女だった。
「・・・奴はロジニにいた野郎!!」
「ロジニ・・・、奴等、こんな女までよこしやがったか。」
「どうしてやります?」
俺は、その女の視線に、突然何か、寒気を感じた・・・。
「・・・ザヌレコフ様?」
「くそぉ、このアマがぁ!!」
「調子ぶっこいてんじゃねぇぞ、こらぁっ!!」
向こうの階段から、下につかせておいた奴等が上がってきやがった。
「おい!!その女を止めろ!!」
「は、ザヌレコフさん!!」
「ごめんなさい!!通ります!!」
その女と、その横にいた、青いモンスターがあっという間に奴等を押しのけて、
下へと降りてった!!
「何してやがる!!追いかけやがれぇ!!」
「す、すんません!!」
俺は、一瞬、確かに寒気を感じた。
どうしてか、全く判らねぇ。ただ、何かが、俺をおびえさせやがった。
「ここにいたくねぇ、早く、何処か、別ん所へ・・・、
・・・あの女が来ねェうちにだ!!持つもん持って、下降りるぞっ!!」
(20日目昼)
「早く降りろ!!さっさとずらかるっ!!」
「幻の雫の結晶!返しなさい!!!」
「くっ、もう降りてきやがったか・・、
お前等、ここに残ってこいつを始末しろ!!俺等は先に行く!!」
「ま、待って!!」
「おっと、行かせねぇぜ、ここはよ!!」
「覚悟すんだな。」
後ろからも、あの2人が降りてきて、私達は囲まれました!!
「戦わないと・・・。」
「気を付けろよ、このアマ・・・妙な魔法使ってきやがる・・・。」
「魔法使いか?関係ねぇ、こっちは数で勝ってる!!ナイフで切り裂いてやらあ!!」
ナイフを取り出して、一気に私に振り回してきました。
動きがとても素早くて、私はよけるのが精一杯でした。
「魔法使いかなんだか知らねぇけど、そろそろ限界かぁ?!」
「負けることは出来ません!!」
「どうかなぁ!!!」
男の人は、突然ナイフを突き刺してきました!!
なんとか避けられましたが、バランスを崩してしまいました!!
ゆっくりと、私は床に倒れていくのが分かりました。
「死にやがれぇっ!!」
ブルートの冷たい風が吹き荒れて、男の動きが止まりました!!
なんとか、体を起こして、私は、ロッドで思いっきりたたきました!!
「もう、私、許せません!!もう、我慢できません!!」
ロッドを振り上げ、全力を込めました。ゆっくりと光があふれはじめ、
辺り全体を光の輪となって包み込みました。
「くっ・・・、この野郎!!!」
「えいぃっ!!」
フラッシュリングからよけた人をロッドで叩きました。
男の人たちは、床で倒れていました。
「わ、私・・・。そ、そうだ追いかけないと!!
あ、でも。・・・ブルート!!集落の人を助けないと!!上に行くわよ!!」
ザヌレコフさんが出てきた開けっぱなしのドアから急いで上にかけあがって、
私は、そこにいたみなさんを見つけました。
「待っていてください、今、助けます!!」
「ふぅぅ・・・。助かった、すまない。・・・ひょっとして、君?」
「宿屋にいた女の子かい?」
「えぇ、そうです。」
「あっ!!」
男の人は、思い出したように、地面に置かれた袋をひろいました。
「・・・それは?」
「奴等、落としていったらしいな。・・・こいつだよ。」
男の人は、中にあった、・・・その不思議な光を放つ宝石を見せてくださいました。
「これが、幻の雫の結晶。俺達の集落の・・・いや、セニフの物だ・・・。」
「みなさん、ここから出ましょう!!」
「先に行って、早くセニフに渡してくれ。俺達はあとから行く。」
「そ、そんな?」
「こんな大勢で行くより、君1人の方が早い。それに、
こうなっちまったのは俺達がうかつだったのが、もともとの原因だからな。
とにかく、急ぐんだ!!奴等が戻ってこないとも限らない!!」
「はい!!」
「あの女は、危険だ」と俺の直感はそう感じやがった。
もし、あの女にもう一度会っちまったら、俺は、この幻の雫の結晶を奪われちまう、
そんな気がしてならなかった・・・。
「お、おい?・・・雫の結晶は、どこにあんだ?!」
「・・・はっ、まさか、おいてきた?!!」
「忘れてきただと?!」
俺等は、トルクに戻って、やっと、面倒になっちまったことに気付いた。
「ちくしょう・・・。まぁ、いい。あの女が、・・・いずれここに来る。
なんとか、そん時にかっさらやぁいい!!テメェら、部屋に入れ!!」
俺は、あの女が来るのを待った。それからしばらくして、女は、ここにやってきた。
「・・・見つけたわよ。」
「遅かったな・・・、まぁ、いい。・・・テメェが持っているんだろう。
幻の雫の結晶を渡してもらおうか。」
その時の女は、俺がまだ何の寒気も感じなかったころ、最初の時と同じだった。
猛烈な寒気や恐れは何も感じやしなかった・・・。じゃあ、さっきのはなんだ?
「そうはさせない!!」
俺等は、別の男の声を階下から聞いた!!そっちの方を見たとたん、
そいつは、入り口に立ってた奴を殴り飛ばしやがった!!
「まさか、ザヌレコフなんて大盗賊がねらってるとは、思わなかった。
お前達のやったことは許されない事。もう言い逃れは出来ない!!」
「こざかしいわっ!!」
俺は、マスターソードを抜き、一気に奴の間合いに踏み込んで振りかざした!!
奴の体からにじみだした血が、服をそめて、そいつは床にへたりこみやがった。
「セニフさん!!!」
「・・・もう終わりか。おい、女?こいつは、お前の知り合いか?仲間か?」
「許さない!!あなただけは絶対に!!!」
「この大盗賊と呼ばれる俺に挑む、その勇気を誉めてやらぁ。無謀なことと知れ。」
女は、杖で一気に、俺に攻撃を仕掛けてきやがった!!
怒りにまかせて攻撃してんのか、乱暴な攻撃を繰り返す・・・。
単なる、俺に立ち向かってくるただの女にしか見えなかった。
突然、俺の横から、青いモンスターが冷たい風を吹きかける!!
「何しやがる!!・・・テメェら!!調子乗ってんじゃねぇぞ!!!」
マスターソードが女をかすめる!!
「ちぃ、外したか・・・。次の攻撃でお前等、ぶっ倒す。覚悟しろ・・・。」
女は、すぐに後ろに戻って、杖を握ったあと、この俺を睨み付けやがった。
「私に、力をお貸しください・・・。」
女の持ってる杖が、急に光り出した。今まで見たこともねぇような、激しい光だった。
「な、何をしやがる気だ?」
「光魔導法―――悪しき志を持つ者を討つ聖なる光を・・・フラッシュリング!!」
光の輪・・・。そうとしか俺には見えなかった。何度も、
それが俺にぶつかってきやがった。辺りが目を開けてられないくらいまぶしくなった。
「・・・やられちまうのかぁ?」
横から、あの青いモンスターがとびかかってきやがった!!
「・・・くっそぉっ!!この程度で、やられる俺じゃねぇ!!くらいやがれっ!!」
俺は、マスターソードを思いっきり速く振りかざし、青いモンスターをぶった斬った!!
奴は、そのまま床をすべって、一気に壁まで吹き飛んでいった・・・。
「ブルート!!!!!」
「次に俺の、シャドーブレードを食らって、ぶっ倒れるのは、テメェだ、女!!」
(20日目昼)
女は、一瞬怯えた表情を見せたが、
次の瞬間に、杖で俺に向かって来やがった!!
だが、所詮は女の攻撃。素早くそいつの持ってた杖をつかんでやった!!
「!!」
「もう、茶番はしまいだ。お前も、楽にしてやらぁぁ!!」
ありゃあ、その時だった。また、あの寒気が俺を襲いやがった。
何気なく女の目を見た。・・・今、ここで殺されようとしてる奴のような
怯えきった目じゃなかった。俺を、見透かしてるみてぇに睨みつけてやがった。
「しまったぁっ!!」
女は、俺が力を抜いた瞬間、その杖を一気に引き抜きやがった!!!
「ちくしょうっ!!なめやがって、この女がぁっ!!」
俺は、マスターソードを一気に振りかぶって、斬りかかった!!
こいつを受けて無事にすむ、いんや、生きてられる奴なんかいやしねぇはずだった。
「んなっ?!」
「私は・・・怒っています。」
「な、何をしやがった!!なんで・・、なんでテメェは無傷なんだよっ!!」
「セニフさんたちを傷つけ、この幻の雫の結晶を奪いました。
どうして、そんなことばかりするのですか?!人を傷つけて、
幸せになれるわけなんてない!!なぜこんな悲しいことを、
繰り返すのですか!!」
「っるせぇやぁ!!傷つくのがイヤでなぁ、人生なんてやってられるかぁ!!
俺1人が、幸せで何が悪ぃってんだ!!テメェだって幸せになりてぇって
思ってんじゃねぇのかよ!!えぇっ?!!!」
「私はどうなっても構いません。でも、他の人が、悲しむのは・・・耐えられません。」
女の杖が光り出しやがった!!今まで、俺が見てきた、どんな光よりも、
明るくて、まぶしい、俺を恐怖させる、そんな光。怒りを完全に俺に向けていやがった。
「誰も傷つけられたり、悲しんだりしない。それが、幸せな世界です!!」
とっさに、マスターソードを前の方で構えた、が、間に合やあしなかった・・・。
光が俺を包み込んで、一気に縛り上げてきやがった!!
「・・・くそぉぉああ!!テメェらぁあ!!ここから、引き上げるぞっっ!!」
マーシャは、杖を持ったそのままで、誰もいない部屋の真ん中に立っていた。
「・・・マーシャ。」
「・・セ、セニフさん!!大丈夫ですか!!!」
マーシャが、私の方へと駆け寄ってきた。
「ああ、なんとか・・ウッ・・・。」
「なんで、あんなケガをしていたのに!!」
「すまない、・・君のことが、心配で・・・、つい・・・」
「待っていてください!!」
私の体の傷を、マーシャの放つ柔らかく青い光が癒してゆく・・・。
「すまない、マーシャ・・・。」
「あ、セニフさん。これを・・・」
マーシャは、私に幻の雫の結晶を手渡してくれた。
「・・・ありがとう。」
「セニフ!!大丈夫か!!」
すべてが終わった部屋に、集落のみんなが集まってきたようだった。
「ああ、みんな、よかった。大丈夫だったみたいだな。」
皆の周りで、ようやく事が終わったことへの安堵感が広がったかのように見えた。
次の瞬間、マーシャの声でそれは打ち砕かれた・・・。
「・・・ブルート!!!」
その青いネズミは部屋の隅で無残な姿で冷たくなっていた。
「ブルート!!!しっかりして!!」
マーシャは、持っていた薬草を取り出していた。
私達の意見は皆、揃っていた。この状況で、これからマーシャが期待している
ようなことは、起こり得ない。・・・絶望的だと。
「だめだ・・・、もうその薬草では回復しきれない・・。」
私は、そんなマーシャに、あまりにも残酷なことを言ってしまったことを後悔した。
言ったところでどうするという?別の薬草があれば回復するというのか?
私の言った言葉は、この状況を、何も変えることなど出来はしなかった・・・。
「そんな・・・・。」
マーシャは、泣き崩れた・・・。
私には、どうすることも出来なかった。何故か、マーシャの涙を見ていると、
自分のどこかにある弱さが、ひどく情けなく思えてきた。
彼女は、悲しいだけで泣いているのではない。自分が何も出来ないことを、
悔いている、だから、こんな涙が出るんだ。・・・何故か、そう思えていた。
「マーシャ・・・。」
・・・その時だった。マーシャの周りにまばゆい結界が出来たのは・・・。
「マーシャ?!」
「神よ!我が願いを聞き届けよ!」
誰もが、息を飲むような、そんな荘厳に満ちた声だった・・・。
「迷える魂を呼び戻す力を我に与えよ!!
そして再び生命をもつ力をブルートに与えたまえ!!!」
私達には、もうその光に耐えることは出来なかった。
目を開けることなど到底かなわなかった。
私は、その光を見たことがある。―――リバイバル。
・・・全ての光が収まった時、私は信じられないものを見た。
青き姿をするものが床に立ち、しっかりとマーシャを見据えていた。
あの状況から、確かに、復活したのだった・・・。
マーシャの願いは届き、ブルートは、再び起きあがった・・・。
「よか・・・っ・・・・・・た。」
美しく輝くその地の上で、少女はすべての力を失い、倒れこんだ・・・。
ロジニに着いたのは、日が暮れる直前だった。
「セニフ!!!」
「マーシャが・・・。」
「いいわ、中へ入って!!」
私達は、宿屋へとマーシャを運んだ。
「セニフ、あんた・・・。」
「ああ、マーシャは・・・間違いないだろう・・・。」
「やっぱり・・・。」
最初から気付いていた。そして、今のこの状況において、否定する理由などなかった。
「・・・これは、マーシャが持つべきものなのだろうか?」
私は、幻の雫の結晶を取り出した。
「・・・まだ、早いわ。」
確かにその通りだった。今のままではあまりにも早すぎる・・・。
「だが、・・・いずれその時は来る、確実に。避けられない運命の時が。」
私は、体がゆっくりと崩れていくのを感じた・・・。
「あんたも休みなさい!!そんな傷を負って・・・。」
「この程度・・・。気にするほどではない・・・。」
「でも、本当にそうなら・・・。あの娘を、グリンディーノの森に連れて行かないと。」
「―――そういうことに、なるか・・・。」
2008/12/09 edited (2002/06/02 written) by yukki-ts next to
No.7