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[stage] 長編小説・書き物系
eine Erinnerung aus fernen Tagen ~遠き日の記憶~
悲劇の少女―第1幕― 第3章
私がその叫び声を聞いたのは、宿屋のベッドで横になっていた時でした。
窓の外は急に雲が出てきて、昼なのに辺りは暗くなっていました。
「おじさん?!今の叫び声は?」
「
マーシャ
ちゃんか?ありゃあ、東の関所の方だ。何かあったな。」
「行きましょう!!なんだか、いやな予感がするんです。」
東の関所に、私が行ったとき、そこには門を守っていた人が、
大けがをして、そこに倒れていました!!
「だ、だ、だいじょうぶですか?!」
「おい!!どうしたんだ?何があった?!」
「・・・三人組。奴らは・・・。」
「おい?しっかりしろ!!今、そいつらはどこにいる!!」
その人はそのまま気絶してしまいました。
周りには、騒ぎを聞きつけた街の人がたくさんいました。
「こいつは、手当てしてやらねぇと、マズいな。おい、誰か手を貸してくれぇ!!」
「どうした?!何があった!!」
その時、関所から
アーシェル
さんが戻ってきました!
「アーシェルさん!!」
「おい、お前!!そっちの方にいたのか?!誰か怪しい奴を見かけなかったか?」
「・・・奴らか?とにかく、今は宿に運ぶほうが先だ!!」
「はい!!!」
アーシェルさんと私と宿屋のおじさんでその人を宿屋のベッドへと運びました。
「こいつは、とんでもなく深い傷だな。そこらの奴じゃこんな傷は付けられねぇ・・・。」
「治るのか?」
「最善は尽くす。だが、今のままだと・・・。」
「分かってる。門番がいないままでは、街が危険だ。再び来ないという確証もない。」
「お前は、早く事務所に行け!!奴らの姿をお前は見ているんだろ?!」
既に事務所には多くの
モンスターズハンター
が集結していた。
そして、その中には何処から聞きつけたのか、
シーナ
もいた。
「あら?遅かったわね。大変らしいじゃない。」
「ああ。このままでは・・・。」
「
緊急指名手配
だ。ただちに東の関門の奥、イシェル南の洞窟に向かってくれ。」
「・・・報酬はどれぐらいなのかしら?」
「こんな時まで、お前は報酬のことか?!」
「1330S$だ。」
「わかったわ。やってやろうじゃない。」
「ちょっと待て!!また一人で行くつもりか?!」
「えっ?アンタ、私を心配してくれてるの?」
「そ、そういう訳じゃあ・・・」
「いっしょにいきませんか?シーナさん。」
「って、マーシャ?!何でここにマーシャがいるんだ!!」
「あら、マーシャじゃない。そうね・・・山分けって事で、手を組まない?
マーシャがいてくれれば、いろいろと助かりそうだしね。」
「はい、シーナさん!!私、がんばります!!」
「それじゃあ、決まり。行くわよ!!」
「はい!!ブルート!いきましょっ!!」
「ブ、ブルートって、
ブルーラット
のことか?って、ちょっと待て!俺も行く!!」
私は、あの通行書がないと、アリ一匹通さない東の関所の門番を
ボコボコにぶった斬った奴らを倒しに、イシェル南の洞窟へ歩いてたわ。
ただ、いつもとは違って、私は、一人じゃなかった。
「シーナ?今までどこにいたんだ?」
「そんなことより、アンタ。奴らの顔、知ってんでしょ?!」
「洞窟の中ですれ違った。あの殺気。間違いなく奴らは、
ブロンズガーゴイル
。」
「スフィーガルじゃあ、聞かない名前ね。」
私達は、洞窟の中に入って行った。
「気配がする?・・・俺が通った時には、何もいなかったはずだ。」
「こんな所にまで、モンスター化が進んじゃってるわけ?!」
「・・・いや、もっと厄介だ。」
アーシェルは、アーチェリーに手をかけた。
もちろん、私もとっさにナイフを握り締めた。
洞窟の中は何もなかったわけじゃなくて、こちらを警戒していただけだった。
それが、ブロンズガーゴイルの奴のせいで、表に出てきたのよ。
あいつらは、外にいる連中よりも、かしこくて嫌な性質だったわ。
「マーシャ、走るぞ!!」
アーシェルの合図で、私達は奥に向かって走り出した。
私にぶつかってくる奴らを、ナイフで次々と斬り裂く!!
「数が多いわよ!!奥に着くまでに疲れるわ。」
「みなさん、止まってください。ブルート!!」
マーシャは、ブルーラットにあいつらを攻撃するように話しかけた。
ブルーラットは、私達の前にでて、奴らに冷気を吹きかける!!
「やるじゃない、マーシャ。モンスターと言葉が通じるなんて。」
「ブルートはモンスターなんかじゃない!!」
「怒らないで。そんなつもりで言ったんじゃないわ。」
そんな感じで、私達は一番奥にまで進んだのよ。
そうしたら、急にあんなにたくさんのモンスターが突然いなくなちゃったのよ。
「気を付けろ。奴は近い。」
「音。・・・何の音なんですか?」
マーシャは私達に突然質問してきたわ。
「・・・波の音のようね。」
「ここがスフィーガル岬の入り口なんだな。」
「なみ?」
「マーシャ、波を知らないのか?」
「はい。でも、とても心が穏やかになる。優しくなれそう。」
「ん?アーシェル。あれ・・・。」
俺は、岬の方向に3体の銅像を見た。
「ちょっと、隠れて!!」
シーナに言われて、俺達は壁の陰へと隠れた。
奴らは、突然動き始めた!!
「兄貴?!そろそろ行きましょうぜ!!」
「お前、もういいのかぁ?」
「あのクソ人間!この俺をボコボコにしてくれやがって、タダじゃすまさねぇ!!」
「とか言って、お前。その人間、半殺しにしてやったんだろ?!」
「けっ、あの程度で俺の腹の虫がおさまるかってんだ?!
あの奥に人間どもが、たんと居やがった。全員八つ裂きにしてくれる!! 」
「お前がもういいなら、行くか?人間どもに地獄を見させてやる!!」
「テメェら、ちょっと待った!!」
「なんだぁ?人間か、貴様?!」
俺は、アーチェリーを手に奴らに向かって叫ぶ!!
「モンスターズハンター、アーシェル!!お前らはここから先には進ませない!!」
俺達は街に襲い掛かろうとしたブロンズガーゴイル3人を前にした。
「わざわざ、人間どもが俺達の所に足を運びやがった。笑わせてくれる。」
「帰れ。そうすれば、何も俺達はせずに済む。」
「バカね、この私がこいつらを見逃しにするとでも思ってんの?!」
「この人間どもも半殺しにしてやるかぁ?!」
「そうだな!!いちいちこの洞窟抜けんのも面倒だしよぉ。」
「きまりだなぁ、兄弟!!」
「本能のままに動く外道が。ハンティングしてくれる!!」
俺は、奴らにアーチェリーを向けた・・・。
「あなたがたは、門を守っていた人に大ケガをさせた。
アーシェルさんやシーナさんだって、あなた方を戦いで傷つけてしまいます。
でも、アーシェルさんやシーナさんは、そんなこと本当はしたくなんかないんです。
だって、血が出たら、痛いでしょ?苦しくなるでしょ!!
これ以上、街のみんなを傷つけるというなら、私はあなたたちを許さない!!」
マーシャは、杖でブロンズガーゴイルを叩き付け続ける。
「お嬢ちゃん?俺達はなぁ、ブロンズガーゴイルって言うんだなぁ。
そんなことしてもよぉ・・・」
「ムダなんだナァッ!!!」
突然襲い掛かろうとしたブロンズガーゴイルにブルートが冷気を吹きかける!!
「つ、つめたい、か、体がぁぁぁ!!」
「お前は、ケガしてるんだろ?!下がってろ、所詮は人間どもだ!!!」
「この野郎!!俺の半殺しの必殺技をくらいやがれ!!!」
トルネードスラッシュ。ブロンズガーゴイルは腕に風の刃を集わせ、ブルートを
切りつける!!ブルートから血が溢れ、岬の入り口まで吹き飛ばされる!!
「ブルート!!!」
「あんたたち、アーシェルの奴に外道って言われたくらいだからね。
どうしようもないカスね。・・・バーニングスラッシュ!!」
「ぐひぃあっ!!」
「兄貴・・・こいつ、半殺しの必殺技つかってきますぜ!!」
「この野郎!!人間の分際で魔法だとぉ?お前ら、何者だぁ?」
「忘れたなら、何度でも言ってやる。モンスターズハンターだ!!」
ブロンズガーゴイルは一斉に赤い光に包み込まれ始める。
パワーチャージ、力を一時的に増幅させる魔法。
「アーシェル!!パワーチャージ!!!」
アーシェルもまた、シーナの放つ赤い光に腕が包み込まれる。
「八つ裂きにしてくれる、このクソ人間がぁっ!!」
アーシェルの奴は、冷たい目をしたまま向かってきた奴を射抜く!!
目を見開いたまま、体を貫かれたブロンズガーゴイルは、そのまま倒れこんだ。
「ブルート、もう、あなたもだいじょうぶよ。」
キュアをかけ続けていたマーシャの横から、ブルートが飛び出した!!
「な、何でさっき、切り裂いてやったお前が、まだ動いているんだぁっ?!」
「へへ、・・・この子が、あなたたちなんかに、負けるわけ、ないじゃない。」
マーシャは、息があらかったけど、ブルートを応援していた。
「ブルート、冷たい風よ!!」
ブルートの冷たい風で、ブロンズガーゴイルは傷口から氷ついていったわ。
「おぉぉ、みんな、立ってくれやぁ。俺、一人じゃいやだよぉ・・・。」
「残念ね。どんな奴が相手かと思えば、この程度の雑魚。」
体がだんだん熱くなってくる。それはナイフにも次第に伝わってきたのを感じた。
「どんな理由があって、ここに来たのか知らないけど、来る時を間違ったようね。」
ナイフを両手に強く握って、構える!!
「お、俺達は、確かに聞いた・・・。」
「バーニングスラッシュ!!!」
ブロンズガーゴイルは、そのまま倒れこんだわ。
「何か、最期に言おうとしたな。何のためにここにきた?」
アーシェルが、前へ行き、まだ息の残る、ブロンズガーゴイルにたずねた。
「あいつは、確かに、あの後・・・、海を越えた・・・と・・・」
銅像に亀裂が入って、あいつらはこなごなに崩れて行った。
「ブロンズガーゴイル。聞いたことがある。
憑依モンスター。意思のない者が、術者の意のままに操ることの出来るもの。
動物の凶暴化だけが、モンスター化の原因になっているわけじゃないんだ。」
「誰よ・・・、いったい誰がやってるっていうのよ、じゃあ?!」
「分からない。だから、俺等モンスターズハンターは仕事をしなけりゃならない。」
辺りには、押し寄せる波の音だけが聞こえていたわ。
「どちらにしろ、これで今回の仕事は終了だな。」
「・・・事務所に戻りましょうか、マーシャ。」
「はい。」
「倒したわよ。報酬金は!!!」
シーナさんは、事務所に戻るとすぐに、そう言いました。
「約束の1960S$だ。」
「やった!!」
そんなシーナさんは、アーシェルさんの視線に気付きました。
「な・・なにもそんな顔で見つめなくても・・・。」
「だったら、独り占めするな。」
「わ、分かったわよ。これで、最後だからね!!」
「お取り込み中悪いが、もうひとつ仕事頼んでもいいか?」
「喜んで。」
私は、すぐにそう答えました。
「マーシャちゃん。ありがとう。」
「そんな簡単に頼まれていいのか?俺はそろそろ休みたいんだけどなぁ。」
「どんな仕事なのよ?」
「薬草取り。」
私達は、そのまま沈黙していました。
「高原に回復力の高い薬草があると聞く。それをとってきて欲しい。」
「また、なんでモンスターズハンターがそんなことを?」
「・・・危険なところに行くのも、仕事だ。」
「回復力の高い・・・、門番か?」
「ああ、相当深い傷らしい。街にある薬草だけでは足りない。」
「だが、俺は普通の薬草とその薬草の見分けがつかないぞ?」
「それなら、私に任せてください。」
私はびっくりした、アーシェルさんに尋ねられました。
「マーシャ、お前、薬草が分かるのか?」
「全部は無理ですが、きっと話を聞けば見分けられます。お母様に教わったので。」
「それで?報酬はいくら出るって言うの?」
「760S$だ。」
「アーシェル。この仕事任せたわ。さようなら。」
シーナさんは、そのまま事務所の外へ出て行こうとしました。
「お前、また、一人で行く気か?」
俺は、さっさと出て行こうとするシーナを呼び止めた。
「アンタが一緒だとねぇ、私。落ち着かないのよ。放っておいて。」
「・・・。」
「いっしょに来てくれませんか?シーナさん。」
シーナは、しばらく黙っていた。
「シーナさん。お願いします。」
「・・仕方がないわね。マーシャの頼みじゃあ、断れないじゃない!!
それなら高原でもどこでも早く行きましょ。」
「はい!!」
「それなら、とりあえず、宿に行ってみよう。話を聞きにな。」
「はい。」
宿では、門番が苦しそうな声を上げて、ベッドに横になっていた。
「アーシェルか?薬草は、高原にある奴ぁ、全部薬草だ。心配すんな。」
「そいつは、本当か?」
「絶対、間違えるんじゃねぇぞ。」
「どの種類の薬草を取ってくればいいのですか?」
「あぁ?マーシャちゃんじゃないか?!突然いなくなって心配したぞ。
アーシェルの奴がマーシャちゃんに迷惑かけてないかい?
そうだ、そこの本のきれはしに絵があるから、見てみな。」
「ずいぶん、俺とマーシャじゃあ、対応が違うな。」
「グダグダ言ってるヒマがあるんなら、とっとと高原に行って来い!!」
そんなこんなで、私達は薬草採りにまた、洞窟へと入ったのよ。
「アーシェル?アンタ、相当疲れてるわね。」
「そりゃあ、そうだ。結局クローウルフの奴と戦ってから、寝てないんだからな。」
「ねぇ、岬に寄っていかない?」
岬は、アーシェルのテントが広げられる、ちょっとしたキャンプ場にもなっていたわ。
「そうだな。」
久しぶりに静かな夜だったわ。よく眠れたような気がする。
次の日の朝、私は海を見ているマーシャの声で目を覚ました。
「・・・海っておおきいな。」
「そうでしょ。私、この朝日が好きなの。
このきれいな海を見ていると、嫌なこと全部忘れられるの。」
マーシャは、私に振り返って「おはようございます」って言ってくれた。
でも、マーシャの表情は、どことなく寂しげだった。
私達は、アーシェルが起きるのを待って、高原へと行ったわ。
「薬草は、ここにあるんですね。」
「ああ、マーシャ?どれが、そうなのか分かるのか?」
「探してみます。」
マーシャは、本のきれはしを頼りに、辺りの草を調べ始めたわ。
「それにしても、風が強いわね。アーシェル。」
「高原の風ってのは、そういうもんだろ。」
「アンタ、仕事、しくじったんだってね。」
「お前!どこで、そんなこと聞いたんだ?!」
「安心することね。他の連中には伝わってないわ。
あの騒ぎで、誰もまだ気付いてないわ。
でも、私も一緒だと、思うんじゃないことね。」
「奴の風は厄介だ。だが、俺は奴ともう一度戦う。」
「アンタの番は、もう終わりよ。今度は、私のターン。」
私は、スカイドラゴンとか言う奴のところへと走ったわ。
「・・・アンタのアーチェリーでも届かなかったって、言ったわね。」
「奴が、降りてこない限り、勝ち目はない。
だが、奴が降りてきたら、お前はどうするつもりだ?」
「斬るだけよ。・・・風が来たわ。」
奴は、空から降りてきた。だんだんと、速くなっていく。
「手、出すんじゃないよ。」
顔に当たる風が、一番強くなった時、私は、奴の頭を斬り裂いた!!
私は、周りの風景を見て、今、空中を飛んでいることに気付いた。
「もう一度!!」
私は、奴が下にいるのを確認した。やがて、私の体が落ち始めた。
ナイフを奴に向けて、加速しながら私は、落ちていく!!
私の体に、その一瞬で、意識が途切れそうな程の激痛が襲ってきた。
私の名前を呼ぶ声が聞こえたような気がしたけど、そのまま気を失った。
シーナは、スカイドラゴンが放った、真空の刃の渦に巻き込まれた!!
「シーナ!!くっ、この風さえなければ・・・。待て、風か?
・・・どうなるか分からないが、やるしかない!!」
俺は、一瞬で判断して、アーチェリーを奴に向ける。
「風よ、俺の声に耳を傾けてくれ。頼む!!」
レインアロー・・・真空の刃は無数の矢となし、空中から敵に降り注ぐ。
周りの風を巻き込んで、それは、スカイドラゴンへと当たる!!
「アーシェルさん!!」
「マーシャ、来るな。下がっていろ!」
マーシャの声に、一瞬、俺の注意がそれた。その時、俺は、こちらへと
走り来る気配に気付いた。それは、俺に向かい刃を向けた。
「だ、誰だ・・。どこへ行った・・・。」
俺は、倒れそうになりながら、奴の向かう先を目で追った。
「まさか、隊長の所へ向かう気かっ?!」
私は、手にもっていた薬草を、みんな地面に落としてしまいました。
あんなに強かった、アーシェルさんと、シーナさんが、とても大きなモンスターに
攻撃されて、地面で動けなくなっていました。
「このままじゃ、情けないけどやられるわ。マーシャだけでも、逃げな。」
「シーナの奴でも、弱音、吐くんだな。だがよ、マーシャ、俺達はもう、だめだ。」
あの大きなモンスターは、やがて私の方へと向いてきました。
「ブルート・・・。」
私の前に、ブルートが立ちふさがります。私を守ろうとして。
大きなモンスターは、私の方向へとすごいスピードで飛んできました。
「ブルート!!あなたは下がって!!危ないわ!!!」
私は、杖を強く握りました。みんなが苦しむのを見たくない、ただそう思っていました。
「お母様、私、もう、一人じゃありません、だから、見ていてください!!」
「・・・なにが、起こったの?」
「光。とても明るい光が、スカイドラゴンを包み込んでいる・・・。」
風が止まった時、私はまだ、ぼんやりと立っていました。
「マーシャ、よく、聞いてくれ。」
アーシェルさんの声に、私ははっと我に帰りました。
「この高原の奥に、家がある。そこへ一人で行ってくれ。あとから、俺達も行く。」
「はい。」
あんな、大きな魔法を使っても、気絶していないのは初めてでした。
アーシェルさんの言っていた家は、すぐに見つけられました。
私は、ゆっくりと、その家のドアを開けました。
俺達は、マーシャの足元にあった薬草で、ようやく立てるようになった。
すぐさま、マーシャのところへと向かった。
「聞こえたわね、アーシェル。」
「マーシャの悲鳴か。急ごう、走るぞ!」
俺達は、ゾークスの家へと着いた。
「ゾークスさん!!マーシャ!!」
「ア、ア、アーシェルさん。・・・わ、私はどうすれば。」
「落ち着いて、マーシャ。どうなの、アーシェル?」
「・・・とても、弱くなっているが息がある。みんなの助けを借りる、外へ出るぞ!!」
ゾークス隊長を背負い、俺達は外へと出た。
「アーシェルか?!」
向こうから数名のモンスターズハンターが来るのが見えた。
「ゾークス様より、すべて連絡を受けた。恐らく、敵からの襲撃の直後に、
連絡されたのでしょう。」
「一体、誰がやった?!」
「向こうを見てみろ。」
アーシェルは、言われた通り、谷をはさんで向こう側の高原に目をやる。
「テントが見えるわね。」
「ああ、シーナ。ゾークス様は、彼奴らを監視されていた。」
「彼奴ら。意外と早く見つかったんだな。」
「それじゃあ、このモンスター化の騒ぎは、あのキャンプに原因があるのね?」
「ゾークス様は俺達に任せてお前らが向こうに行け。ゾークス様はおっしゃられた。
お前たちに奴らの所へ行くようにと。」
「シーナ?俺は、薬草のおかげでだいぶ歩けるようになった。どうだ、大丈夫か?」
「報酬は、2380S$だ。」
「この薬草は、それなら門番に渡さなくちゃね。やってやろうじゃない!」
俺達は、他のモンスターズハンターを別れて、先を急ぐ事にした。
アーシェルさんは、何も言わずに私も連れて行ってくれました。
私は、今まで以上に危険な所に行く事は、誰に言われなくても分かっていました。
それでも、少しずつ、アーシェルさんやシーナさんと一緒に歩いていくのが、
私にとって、これからしなければならない事なんだと、思うようになっていました。
「アーシェル、ガーディア隊長にもし会ったなら、アンタ・・・、戦うの?」
「戦わずにすむのなら、その方がいいに決まってる。」
「アーシェルさん、それでも、戦わないといけない時は、私は・・・。」
「マーシャ。俺達はモンスターズハンター。人々に危害を加えるモンスターを扱い、
たやすく人々の命を奪おうとする者を、許すわけには行かない。
戦わずして、解決出来ないのであれば、・・・マーシャの力も俺に貸してくれ。」
私達は、ゾークスさんがおっしゃられたという、キャンプ地までやってきました。
遠くから見たときよりも、とても大きなテントがありました。
「それにしても、静かすぎない?誰もいないみたいよ。」
「シーナ、マーシャ。何が起こるか分からない。気をつけろ。」
テントの中はとても静かで、薄暗くて、すこし恐い感じのする場所でした。
それでも、シーナさんの言う通り、中には誰もいませんでした。
「誰もここにはいないのか?それとも、既に勘付いてここを捨てた・・・?」
「人はいないけど、ここ。奴らがいた場所ってことは、間違いないわね。」
私は、シーナさんの指差す先に、とても目を開けて見ることができないような、
悲しくて恐ろしいものがいくつも置き捨てられていました。
「マーシャ、見るんじゃない。彼奴ら、動物のモンスター化をして、
一体何をしようとしているんだ?」
「とてもじゃないけど、まともな人間のやることじゃないわ。吐き気がする。」
ブルートが、私のもとを離れて、その変わり果てた動物のところへと走っていきました。
「どこへ行くの?!」
ブルートは、奥に走っていきました。
「追いかけるべきなのだろうか?」
「もう少し、探してみましょ。このままじゃ、帰りたくても帰れないわ。」
私がその部屋に入った、その時だったわ。
「シーナ、走れ!!」
「え、何よ?!!」
私が振り返った先に、たくさんのモンスターに囲まれているアーシェルがいたわ!!
「恐らく、ここの奥にまだ、何かがある!!先に行け!!」
「アンタは?!大丈夫なの!!」
「そう簡単にやられるか!マーシャもシーナと一緒に行け!!
ブルートを、見失うな!!」
マーシャが、恐さでひきつっている顔のままで、私の方に向かってきた。
「行くわよ、アーシェルの奴が来なかったら、また戻ってくればいいんだから!!」
私達はテントの奥へと走っていったわ。
「ブルートがいました!!」
「マーシャ、やっとついたわ。どうなるか分からないけど、最後までがんばるわよ!!」
「はい!!」
でも、私は前にあるものが一体何かよく分からなかった。
低い音を立てている冷たい機械の並ぶ部屋。
中は暗くて、誰もいないことはすぐに分かった。
それでも、何か、とても嫌な感じのする場所だったわ。
どうしようもなかったから、アーシェルを待たずにマーシャと中に入ったの。
「マーシャ、見えるわね。」
「はい。」
暗い部屋の奥に、私は目が光っている機械を見たわ。
感情も何も感じられないけど、確かにそれは、私達の姿に気付いた。
「ガーディア隊長は、いないようね。」
マーシャは、きつく杖を握っていた。
私も、ナイフを持っている手に力が自然と入っていたわ。
「侵入者・・・。」
「やっぱり、こっちのことは、侵入者扱いのようね。」
「侵入者を、殺す・・・。」
感情も何もない声が、部屋の中に響いてきた。
「私はモンスターズハンター。アンタは、モンスターじゃないわ。
言う事を聞いてくれるとは思わないけど、言った事、取り消してくれるかしら。」
「侵入者を、殺す・・・。」
「アーシェルの奴と私は違うわ。許せない奴は、ただじゃすまさない。」
私は、ナイフを構える!!
その機械は、周りの機械を壊して、私に向かって走ってきた!!
機械は、想像してたよりも速かったわ。
私を切り殺そうと、鋭くとがった腕を、私のナイフに思い切りぶつけてきた!!
「重そうな割に、速いのね!!」
勢いにまかせて、ナイフで斬りつけても、憎たらしいくらい正確に攻撃をよけてきた。
少しでも隙を見せると、すぐにでも切りつけてきそうな勢いだったわ。
「アーシェルがいないんじゃあ、こうするしかないわね。」
私は、一瞬攻撃の手を緩めた。思った通り、奴は私に狙いを定めて、攻撃する!!
「バーニングスラッシュ。」
体が燃えるように熱くなった。ナイフからの熱が奴に伝わるのは分かったわ。
「・・・どういうこと?なんで、アンタが、バーニングスラッシュを?」
単なる切り傷じゃなかったわ。ローブから、血と焦げる嫌なにおいがしてきた。
「シーナさん!!」
「キュアはしなくてもいいわ。アーシェルが来たとき、マーシャが倒れてたら、
アイツも後悔するんでしょうけどねぇ。今は、まだがんばれるわ。」
血は止まりそうになかった。ナイフを振るたびに溢れてくるのが分かった。
「奴の間合いに入ることもできないし、このままじゃあ、何もできないじゃない!!」
一瞬気を抜いた時、奴は、急に私の目の前から消えた。気付いた時はもう遅かった!!
「マーシャ!!」
黒くて速いモンスターが、私の方に走ってくるのが見えました。
「マーシャ、よけて!!」
シーナさんの声が聞こえたときには、私は杖を持っていました。
私一人では何も出来ない。でも、何もしないのは、最初から諦めていることと同じこと。
「私は逃げない!!」
モンスターの手が私に届こうとした時、急に私の前に黒い大きなものが現れました。
突然のことで何もわかりませんでしたが、一緒に私は飛ばされてしまいました。
「逃げられる時に、逃げなけりゃあ、最後には苦しみしか残らない。」
「アーシェル!!」
「待たせたな。」
アーシェルさんの背中から、心臓の音がとても速く聞こえました。
体はとても熱くて、苦しそうに息をしていました。
「そんなボロボロになってるくせに、自分から傷ついてんじゃないわよ!!
私なんかより、よっぽどヒドい傷じゃない!!」
アーシェルさんも、シーナさんと同じくらい傷を受けていました。
「・・・私、傷ついているアーシェルさんとシーナさんに、何も出来ないなんて、
そんなの許せない。私はどうなっても構いません、だから!!」
「シーナ、やっぱり、お前も最後に考えることはそれか?」
アーシェルさんは、ナイフで傷つきながら戦っているシーナさんに話し掛けました。
「嫌だわ。アンタと私じゃ、考えることのレベルが同じだっていいたいわけ?!」
「マーシャ、まだ、魔法は使えるんだな?」
「はい、今すぐに!!」
「待て、慌てるな。スカイドラゴンを倒した、あの光。アレを出してくれるか?」
「光魔導法、フラッシュリング。・・・大丈夫です。がんばってみます。」
「よし、来た。シーナ、下がれ!!マーシャのフラッシュリングを合図にする!!」
「分かったわ。待ってたのよ、ずっと!!」
アーシェルさんとシーナさんの顔が、ぱっと明るくなりました。
「俺の合図と同時に、奴に向けてフラッシュリングを!!」
俺は立ち上がり、アーチェリーに風の矢をつがえる。
アローの先端に、風が集まるのが体で感じられる。
「風の矢を射ん!!」
俺の声と同時に、アローは風を切り、その機械を貫く!!
シーナが、マーシャの元へと走り寄る!!
俺は、それを見た瞬間に、奴をはさんで反対側へと走る!!
「マーシャ、頼む!!フラッシュリングを奴に!!」
その機械は、なおもシーナの方へとものすごい速さで駆け寄る!!
マーシャの周りから光が少しずつ溢れてくるのが見えた!!
「間に合ってくれ!!」
「行きます!!!」
マーシャの声とともに、杖からまぶしい光が放たれた。
少しずつ空気が熱くなり、機械に向かってそれらが集まってきている。
最初に見たときよりも、それははるかに強力な力だった。
「シーナ、こっちに向かって走れ!!」
俺は、その光の中心に向かい、風の矢の先端を向ける。
「風よ集え。我が力となりて、すべてをなぎ払う刃となれ!!」
マーシャの光の影響か、風の矢に今まで見たこともないほどの膨大な力が集う。
トルネードスラッシュ・・・風の矢の力を借りる、俺の最高の技。
「シーナ、走れ!!」
アーシェルの奴が放ったアローを目印に私は走った。
「とどめを差してあげようじゃない!!」
奴が光に力を奪われてる間に、奴に近づいた。ナイフを強くにぎって!!
「二刀流殺法術・・・クロスブレイカー。」
敵相手に、この技を使ったのは、久しぶりだったわ。
奴の体とナイフが当たった瞬間の部屋中に響く音が、私の耳に届いたわ。
「シーナさん!!」
マーシャの声と同時に、背後からまた殺気を感じた。
「まだ、動いてるの?!!」
「侵入者に、制裁を加えん。」
「ダメだ、シーナが太刀打ち出来ないとなると、こいつは・・・。」
「そ、そんな。フラッシュリング・・・?」
マーシャは、もう立ってるのがやっとだったけど、顔は間違いなくこわばってた。
そんな私も、奴の姿を見てれば、これから起こることがどんなことか、予想できたわ。
「シーナ、俺は、そろそろ、・・・戦うのも、限界に近い・・・。」
「私だって。クロスブレイカーも効かない相手に、どうしろっていうのよ?!
マーシャのあの光と、同じ魔法受けたら、とてもじゃないけど
生きて帰れるわけないじゃない!!」
でも、奴の周りに集まった光はとうとう、限界まで大きくなってた。
「・・・気配が消えた?」
アーシェルがそう言ったのは私にも聞こえた。もちろん、今までの殺気が
突然消えたことにも気付いてたわ。
「斬り裂いたとこが、ようやく今頃になって痛み出したようね。」
「力の限界を超えたか・・、いや、待て。
奴は・・・、どうなったんだ?!」
「倒したんじゃない?」
「それなら、こいつはどうなる?!」
「術者が魔導法の途中で気絶した場合は、制する力がなくなって、
暴発してしまいます。」
「マーシャ、落ち着いて難しいこと言ってる場合じゃないでしょ、それって・・・。」
「爆発しちゃいます。」
スフィーガル渓谷に、突如として
大音響
が
轟く。
イシェルの人達は、突然の爆音に驚いて、外へと飛び出した。
そして、数人が高原から上がる煙に気付き、指差し始めた。
「・・・みんな、・・・大丈夫か!?」
俺の名前をか細い声で呼ぶ、マーシャの声を俺は聞いた。
「マーシャ!!しっかりしろ!!」
「アーシェル・・・さん。・・・私よりも、シーナさんを。」
「シーナ?・・・おい、シーナ!!どこだ?!」
俺は跳ね起き、周りの
瓦礫
をかき分け始めた。
「どこだ?!生きてたら返事しろ!!今、助けてやる!!」
見覚えのある、シーナのローブの色を見ることが出来た。
俺は、力任せに周りの瓦礫を取り除いて、シーナを救い出した。
「・・・サンキュー、アーシェル。」
俺は、瓦礫の上にゆっくりと立ち上がり、吹きぬける風を感じた。
「終わったんだな、これで・・・。」
「・・・。」
「終わってなんか、ナイよ・・・。」
「・・・そうだな。」
俺は、シーナとマーシャに振り返る。
「帰ろう、町へ!!」
事務所にはモンスターズハンターのみんなが集まっていたわ・・。
「何があったんだ?あいつらは大丈夫なのか!!」
「分からない。とにかく無事を祈るしか・・。」
「ゾークス様もまだお目覚めにならないし・・どうすればいいんだ!!」
「みんな!!アーシェルとシーナが!!」
私たちはドアの外でボロボロになって立っていたわ。
「ハンティングしてきたぜ。」
最初に口走ったのは、アーシェルだった。
「無事だったか・・・。」
「・・・ガーディアは・・・いなかった。すでに、立ち去っていた・・・。」
「そんな・・・。」
事務所の中は急に暗い雰囲気になっていった。
「アーシェルや・・・帰ってきたようじゃのォ・・・。」
「ゾークス様!!」
「ゾークス隊長殿!!もう、傷の方は大丈夫なのですか?!」
「・・・隊長はやめてくれんかのォ。」
「よかった、た・・いえ、ゾークス様もご無事で。」
ホッとしてるみんなの前で、ゾークス様はアーシェルの前に歩いていった。
「アーシェルよ。約束じゃ。話してやろう・・・。」
「昔、ガーディアはの・・・ひとりぼっちの少年じゃった・・・。
その両親はそのずっと前に死んでしまってたんじゃ・・・。
醜い
人間の争いによって・・・。
奴は、人間の事が信じられなかったようじゃった。
そんな、ガーディアの奴にわしはこの事務所へ来るように言ったんじゃ。」
「ガーディアはのォ、・・・最初は熱心じゃった・・・。
じゃが、ワシには何も口を聞かんかった。
そしてある日・・・突然、奴はわしに刃を向けおった・・・。」
「奴は強かった・・・、わしは力では追いつけなかったんじゃ・・・。
じゃがわしはうれしかった。初めて奴はわしに口を利いたんじゃ。
・・・こんなに強い方と戦えたのは初めてだと。
ワシはこの頃、そろそろ引退かのォと思ったんじゃ・・・。
じゃが、安心できた。ガーディアなら信頼できると・・・。」
「そして程なく今のモンスターズハンター事務所と変わったんじゃ・・・、
ガーディアは隊長として・・・変わり果てた動物達をハンティングしていった・・・、
人々にもやさしくいたわり、そして奴自身、剣は抜かなくなったんじゃ・・・。」
そこで、ゾークス様は話をいったんお止めになりました。
「なぜ、ゾークス様は、そんな奴を信じたのですか?刃を向けるような奴に!!」
しばらく、ゾークス様は、答えるのに困っていました。
「わからぬ。こんな老いぼれにも、わからぬものはあるんじゃ。
今となっては、奴は敵。最初から、そうなることを奴は考えておったのかもしれぬ。
じゃが、わしは奴のことを信用した。心に嘘をつきたくはない。
お前たちは、ガーディアに不信感しか持たぬのかもしれぬ。
じゃが、わしだけでも、奴のことを信じてやりたい。」
「俺だって、信じたい。俺が知りたいのは、なんでゾークス様や俺達を
裏切ってまで、敵とならなければならなかったかだ・・・。
何が、隊長をそうさせたと言うんだ・・・。」
「結局、私達。隊長のこと、何もわからないのよね。」
しばらくの間、みんな黙っていました。
「信じてもいいんだよな、隊長の事。」
アーシェルさんは、モンスターズハンターのみなさんに尋ねました。
「俺達の隊長だろ。俺達が信じなくて、誰が信じるんだよ。」
「・・・だけど、私たちは、どうすればいいのよ。」
「アーシェル・・。まず報酬金をうけとるんだ。」
アーシェルさんは、今回の仕事の報酬金を受け取りました。
「・・・金はあるようじゃな。」
ゾークス様は、アーシェルさんにまた、話し掛け始めました。
「アーシェルや・・・、よいな。お前たちがガーディアを助けるんじゃ。」
「でも・・・どうすれば。もうここには・・・。」
ゾークス様は、俺とシーナ。そして、マーシャに向かって話した。
「わしの知り合いが、・・・海の向こうの
グラニソウル
におる。
名をサニータと言うんじゃ・・・。」
「・・・海の向こう・・・。」
「グラニソウル・・・。」
「しかし、どうやって海の向こうへ・・・?」
「この海は、激しい海流が渦巻く危険な場所じゃ・・・、
できれば行って欲しくないんじゃ・・・。」
俺は、しばらく黙って、続きの言葉を待った。
「グラニソウルの者は優れた航海技術をもっておると聞く。
おそらく、明日には使いの者がこちらにくるじゃろう・・・。」
「でも、モンスターズハンターの仕事は・・・?」
「それは心配ない。奴らはもうここにはいない。もう心配もないだろう、
ということでここも、しばらくの間、依頼は請け負わない事にしている。」
「・・・大丈夫なのか?」
「そう願いたい・・・。」
「もう、こっちに来るって決まってるんでしょ?なら、もう何も心配ないじゃない。」
「それじゃあ、もう最初からゾークス様は、俺達に行かせようと・・・。」
「わしは、ガーディア以上に、お前たちに期待しておるんじゃ。」
(10日目晩)
「でも、俺達で本当に大丈夫なんだろうか・・・。」
「いまさらそんな弱気でどうするんじゃ!!」
「そうよ。確かに怖いかもしれないけど、海がわたれるのよ、
チャンスじゃない!!それに・・・マーシャだって・・・。」
私は、黙っていました。本当はシーナさんが考えているよりも、
ずっと、恐いと思っていました。
「・・・そうだな。」
「決まったようだな。」
「ああ。」
でも、私は決めました。アーシェルさんたちと一緒に、どこまでも行くと。
「最後の依頼だ!!ガーディア隊長を救い、この世に平和を取り戻すんだ!!」
「よし!!みんな。行くぞ!!!」
「いつでもいいわよ!!」
「はい。」
「頼んだぞ!!」
私達は、こうして今までずっと暮らしてきた、この場所を離れる事になりました。
優しかった村のみんな、お父様との懐かしかったあの頃。
あまりにも急だった、みんなとの別れと、アーシェルさんとの出会い。
そして、アーシェルさん、シーナさんと一緒に戦ったこと。
みんな、私の頭のなかをかけめぐっていました。
これから始まる、新しい旅に、私は恐いと思うと同時に、
アーシェルさんやシーナさんと一緒に歩けることが、うれしいと思っていました。
(11日目朝)
次の日、私とアーシェル、それにマーシャで、船が来るっていう、
スフィーガル岬へと、歩いていったわ。
ゾークス様の話だと、スフィーガル大陸に船をつけることが出来るのは、
スフィーガル岬だけだっていう話だった。
私は、岬から南の方の海を眺めていた。
「・・・あれは?!」
海の向こうから、こちらにむかって、大きな船がやってきたのよ!!
ゆっくりと、岬に近づいてきて、それから船を止め、船長らしい人が降りてきたわ。
「・・・おまえがアーシェルだな。」
「はい。これから、どうかよろしくお願いします。」
「確認するが、命の保証はない!!それでも本当に行くんだな?」
「あなたがたはここまで無事に来ています。ここで帰るわけにはいきません!!」
船長は、船の方に向き返り歩き始めたわ。
「・・海はそんなに甘くない。心しておけ。」
「はい。」
「さあ、のりな!!グラニソウルに向けて出航だ!!!」
船はゆっくりと、スフィーガル大陸を離れていったわ・・・。
俺達は、船の中の部屋で休んでいた。
「なんだか、いろいろあったわね。」
「ああ、これから何があるのか・・・。」
「・・・。」
「マーシャ?・・・もう寝たのか。」
「疲れたわね・・・!!」
シーナは突然の揺れでひどく頭を壁にぶつけた。
「・・・ひどく揺れるな。」
「これじゃ、眠れそうにもないわね。」
「・・・。」
「って、もう寝たのアンタ?!・・・わかったわよ、おやすみ!!」
俺達は、これから始まる旅をそれぞれ思い浮かべていた。
旅の果てに何が待ち受けているのか、期待と不安の中で眠りに落ちた。
―――誰もこの船でこれから起こることを予想していたものはいなかった。
―――マーシャが何かに取りつかれたように、
―――夜に一人で起き、甲板へと出てきた
―――誰にも気付かれず、マーシャは、
―――荒れ狂う闇の海へと、消えていったのだった・・・。
―――何かに導かれるかのように・・・。
俺が、レイティナーク港に入ったのは、昼頃だった。
その港にあふれてた、殺気立った気配が俺を包み込んできやがる。
スピアを構え、中へと入っていった。
「テメェらぁっ、金品財宝、隠してるもんすべて、こっちに渡しやがれや!!」
「言う事きかねぇ奴は、
片っ端
に脳天ぶち抜くぞ、コラぁっ!!」
港に銃声が響いた。
見た感じ、港は盗賊どもに占領されちまったらしかった。
何人かの奴らは、仕方なしに、自分のもつ財産を手放していった。
だが、その中の一人が突然ナイフを手にして、奴らに向かっていきやがった!!
「盗賊風情がぁっ、貴様等の言う事なんざ、聞けるかあぁっ!!」
「大人しく、金出しゃあ、楽に死ねれただろうによぉ。殺れ!!」
盗賊の奴らの一人が、ソードでそいつをぶった斬った。
港の中は、女共の悲鳴やら恐怖とかでいっぱいになった。
「さっさと、金出しな。金出さなけりゃあ、お前。死ねないぜ。」
「あぁっ?金、持ってないだとぉ?!」
別のところから声がした。
そこには、盗賊にえり首をつかまれた、20歳くらいの女がいた。
「お助けください。・・・あなたがたに差し上げられるだけのお金を・・・。」
「なら、仕方がねぇな。俺達を楽しませてから、死にな。」
「や、やめてください!!」
港の端の方で突然、盗賊の一人が苦痛に顔をゆがめ、声を上げた!!
「何だぁ?どうした?!」
「テメェら。よく知らネェけどよ、・・・そこらへんでいい加減にしときな。」
俺は、スピアを振り回し、そいつら全員を斬りつけ始めた。
「ぐふぁぁっ!!・・・誰だ?!こいつ、つ、強い・・・」
「テメェら、下種どもに言われなくとも、知ってらぁっ!!」
俺は、盗賊どもの頭の方へとスピアを突き出し、走る!!
「・・・思い出した!貴様は、・・殺し屋の、・・・ディッシェム!!」
「今更、思い出しても遅いぜ。」
俺は、そいつを力任せにぶった斬ってやった!!
しばらくの間、港は静かになった。
「・・・こ、殺し屋、・・・ディッシェム・・だと?」
辺りの、俺に対する冷たい恐怖の目線を無視して、俺は船長の方へと歩いていった。
「いつ、出航するんだよ?」
「またお前、殺しか?まだ、当分出せない。お前のせいで、港がムチャクチャだ。」
「うるせぇ、手配書も出てネェ奴らなんざ、殺すまでもネェや。
さっさと、片付けちまえよ。・・・こっちは、時間がねぇんだからよぉ・・・。」
2008/12/05 edited (2001/12/24 written) by yukki-ts next to
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