[stage] 長編小説・書き物系

eine Erinnerung aus fernen Tagen ~遠き日の記憶~

悲劇の少女―第1幕― 第1章

 どこまでも透き通る青空。さえずる青い小鳥たち。どこまでも続く花々のじゅうたん。

 ・・・一番好きな場所でした。

 私は、ここに一人で居ると、いつもいろいろなことを想像しました・・・

 花々が咲きほころび、小鳥たちがさえずる。暖かい日差しを浴びた大地に吹き抜ける風。

 さびしい時も、楽しい時も、いつも心を和ませてくれる、そんな場所でした。

 鐘の音がする・・・

 私は思い出したように立ち上がって、谷の方へ走っていきました・・・・・・。

 『スフィーガルの谷』

 ・・・私の故郷はそう呼ばれていました。そこは、何もかもから遠ざけられた平和な場所でした。

「・・・!」
 村の外で、よく見かける青いねずみの姿を見ました。
「ケガをしてる!」
足首の部分から血が溢れ出していました。
「大変!!」
「そこに近づくんじゃない!!!」
「えっ!?」
 その言葉と同時に、ブルーラットと呼ばれるその青いねずみは突然、私に襲い掛かってきました。 私は、あっ、と短い悲鳴を上げた後、一筋の光を見ました。そして、その光はその声と同時にブルーラットに突き刺さったのです。私は、驚きの余り、声を失ってしまいました。
「大丈夫か!」
「・・・。」
 あの光の筋は、ブルーラットの体を突き抜けたアローでした。生き物が目の前で殺されてしまうのを見たのがショックでした。私に話し掛けてきたその人に対して、恐怖と怒りでいっぱいでした。
「なぁ!」
「・・・なんてことをするの。」
「俺は・・・。」
「こんな小さな動物を、あなたは・・・。」
 私は、ぐったりとしたそのブルーラットを抱え、その青年をきっとにらみ返した後、村へと戻ったのでした。




 スフィーガルの奥地にあるこの村は、夕方、・・・いや、もっと早い昼過ぎ頃には、あらゆる家庭が扉を閉ざしてしまう。何かに怯えひっそりと隠れているかのようだった。
 村長は、ただ一人夜があけるのを待ち続けていた・・・。その村に待ち受ける運命を恐れているかのように。
「何の用だ?おまえ!」
「・・・旅の者です。今晩1日だけ泊まらせていただけないでしょうか?」
 俺の姿が、ひどく疲れたようにみえたのだろうか、その老人は、アーチェリーを持つ者をじっと見据え、やがて、静かに答えた。
「どういう者かは知らぬが、そこまで言うのなら泊まりなさい。」
「ありがとうございます。」
「ただしじゃ!妙な真似を起こしてはならぬぞ!!よいな!」
 老人の声は、ひどく鋭かった。
「・・・?」
 その晩、妙な物音に気付いた俺は外へと出た。村長は、深い眠りの底に沈んでいた・・・。
 その夜の光景を見た瞬間に俺は言葉を失った。巨大な飛行艇が空をうめていた・・・。そして、村の入り口には数人の黒服の人間がいた・・・
「お前等は何者だ・・・?」
「アーシェル・・・。」
「俺の名を、なぜ?」
「お前のようなモンスターズハンターがここに何の用だ?」
 アーシェル、俺の名を知るその者の声、姿。はっきりと脳裏に焼き付いていた・・・。
「まさか・・・、隊長!?」
「お前や村人にも用はない・・・。ある事を依頼されここに来たまでだ・・・。」
「ある事?」
「俺等はある人にある少女をお連れするコトを依頼された・・・」
「少女?・・・何の為に?何故隊長が!?」
「・・・お前の知ることではない。」
 俺には、突然の出来事が何一つ理解できなかった。あまりにも、突然すぎた。
 ただ、俺には、「ある少女」というその言葉に何かを覚えた。
「その少女を知っているか・・・。」
「・・・知らない。」
「スフィーガルの谷にすむ神官の娘。・・・確かにそう聞いた。」
「俺は知らない!!」
「何故話さない?この隊長の顔を見忘れたとでも言うのか?」
 俺はアーチェリーを隊長に向けた!
「・・・手荒い答えだな。」
「隊長は姿を突然消された。いったい、なぜ?これから、一体何をしようと?」
「人の生きる道に、指図するな!!」
 隊長は血走った目を見開き、漆黒の闇に向かい手を伸ばす。夜の空を埋め尽くす飛行艇から数体の黒い影が落ちてくるのを見た。
「・・・何を!?」




 ブラウンベビー。突然人間に対し襲い掛かる小犬の総称。処置を怠れば、さらに凶暴さを増す。
 俺達、モンスターズハンターは、それを止める事を目的としている。ブラウンベビーは、すばやさを生かして果敢に攻めてくる。アローを番え、俺はそれらを貫く。それが、最善の処置方法とされていた。
 アローを受けた、ブラウンベビーは一瞬動かなくなったが、のショックからか、こちらに対して襲い掛からなくなる。
「気絶させようとはしないか・・・。」
「悪いのは、あいつらじゃない!!隊長がそれを教えてくれた!!」
 俺は、隊長の顔を睨み付ける。隊長の表情には、嘲笑が浮かんでいた。
「クッ!」
 一瞬の油断をつかれ、ブラウンベビーは俺に攻撃を仕掛ける!!それを合図に、残りのブラウンベビーは一斉に俺に向かって飛び掛かる!!
「モンスターズハンターなど無視しろ。もう、用はない。聖堂へ行く!!」
「・・・。」
 俺は、アーチェリーを持つ手に全神経を集中させる。いつの頃からか、俺には『魔法』と呼ばれる能力を使う事が出来るようになっていた。次第に、アーチェリーから淡く青い光が辺りにあふれだす。
「クォーリッジダウン、相手の戦意を喪失させる・・・か。」
 その光を浴びたブラウンベビーらはゆっくりと俺から離れて行く。再び、俺は隊長の方へと向こうとした。だが、先の攻撃による傷と、魔法を使用したことで、俺の体力は既に限界に近づいていた・・・。
「そこまでか・・・」
・・・・だれもが息を飲んだ!
 ラージフォーンと呼ばれる、この地方でも、最も凶暴と、恐れられている、鋭く尖った角を持つその動物は、突如、隊長を目掛けて突進し、その脇腹を貫く!!
 口から、一瞬声が漏れたが、その次の瞬間、懐から取り出した、マシンガンで一瞬の間にラージフォーンの身体には、無数の風穴が開き、その場に息絶えた・・・。
「・・・何を、しやがる・・・。くっ・・。一度、引き上げるぞ!!」
 アーシェルの目の前で、それは一瞬にして起こり、そして、闇に包み込まれた静寂へと戻った・・・。




 聖堂の窓に暖かい光が差して、私はいつものように起きました。頂上の鐘の場所へ上って、村のみんなに朝を告げるのが、毎朝の習慣でした。
「起きて!もう朝よ。」
「・・・おはよう。マーシャ。」
 いつも私に優しく微笑みかけてくれるお父様。何も変わっていない、いつもと同じ朝でした。
「鐘を鳴らす時間ね。・・・え?」
「・・・どうした?」
 私は窓の外で、いつもとは違う、何かを見ました。恐怖と戸惑いで小刻みにひざが震えるのを感じて、私は、思い出したように下へとかけおりました。
「マーシャ!待ちなさい!!・・・」
 村に起こった異変に、すでに村長様や、多くの村のみんなが集まっていました。・・・とても、大きな何かがそこに、あるようでした。
「なんてことを・・・。」
「村長!マーシャが!!」
「マーシャ!こちらに来ては行けない!今すぐかえりなさい!!!」
「いったい何があったんですか?」
「とにかく!!!」
 村のみんなは、私が、それを見ないように、囲って隠しているようでした。その時、村長様の家から、出てくる人がいました。
「ひょっとして・・、おまえか!?」
「それは・・・!」
「なんと言うことを・・・!おまえを信じて村にとどめたばっかりに・・・」
「違う!俺じゃない!」
 私は、村長様がその男の人に近づいて、その隙間から、見えた光景に、思わず声にならない悲鳴をあげてしまいました。
「マーシャっ!!!」
 わけもわからず、私はただ泣きながら、聖堂へと帰りました。生き物が、あんなにむごい仕打ちを受けて、冷たくなっているのを、見たのが、どれだけ私にとって、ショックだったのかは分かりません。

 どれだけ時間がたったのでしょうか。私は、いつのまにか横になっていました。
「マーシャ。マーシャ!!!」
「エッ?」
 目を開いたその先に、お父様の心配そうな顔が見えました。
「もう、大丈夫か?」
「えぇ。大丈夫よ。」
「もう思い出してはいけません。今すぐ忘れなさい。いつまでも覚えていてはなりません。」
「かわいそう、あのままにするなんて・・・。」
「えっ!?」
「せめて神様の元に送れないの・・・?」
「なりません。モンスターなんて。」
「もともと、やさしくておとなしい動物だったわ!!それなのに・・・それなのに・・・。」
 そんな私を、お父様は少し強い声でさえぎりました。
「忘れなさい。今は、何も、知らなくていいのです。」
「・・・なぜ、何も、教えてくれないの?村のみんなも、私に会う度に優しく微笑みかけてくれるわ。お父様と同じように。でも、いつでも、私が何かをしようとすると、みんな、私にだけ、あんなに心配そうな顔を浮かべる。でも、私は、もっといろんな事が知りたい!お母様が私に残してくれた、本に書かれているいろいろなことが。・・・それに、お母様のことも!!」
「・・・それだけは。」
「もう、このまま何も知らずに、みんなに心配かけ続けるなんて、もう、出来ない。」
 お父様は、困ったような表情を浮かべて、その後にまた、微笑みました。
「わかりました。でも、その前に、ラージフォーンを、神様の元へ送りましょう。」
「・・・はい。」
 ラージフォーンは、村のみんなの見る前で、火葬されました。




 私は、あの丘へと上る山道を歩いていました。手には、ラージフォーンの遺骨を入れた袋を持って。
 いつものように、穏やかな風が髪をなびかせます。でも、どこか、いつもと違う、そんな雰囲気を感じていました。
 やがて、いつもの村がよく見渡せる丘へとやってきました。
「神よ!この世に迷える小羊をそのもとへ届けん。」
 私は、天に向かって祈りました。不安や、哀しみをかき消すことが出来るのは、ただ神に祈る事だけでした。
 やがて、私は、ふもとへ戻ろうと立ち上がりました。
「マーシャ・・・。」
 低く恐ろしげな声を私は背後から聞きました。
「誰!」
 振り向くとそこには地獄が広がっていました。青空を埋め尽くす飛行艇、幸せそうにさえずる小鳥たちは飛び去ったあとでした。
「初めまして、早速ですが私たちについてきてもらえますか?」
「ちょっと・・・まって。いったいどこに?」
 顔を隠すその男は、低い声で穏やかに、私に話し掛けました。
「ある人からあなたを連れてくるように言われました。言う事を聞かないのであれば、強制的に連れて行きますよ。」
 私は、突然強い力で、腕をつかまれました!
「ウッ・・ああああァァァッ!!!!」
「その娘から手を離せ!」
「誰だ?!」
 私は、その人を見てはっと息を飲みました。あの、アーチェリーを持っていた男の人が、腕をつかむこの人に向かってアローを放っていたのです。
「何事だ!」
 ひどいけがをしている、黒服を身に付けた男の人は、飛行艇から2人の黒服とともに、下りて来ました。
「あきらめて、帰れ!」
「・・・貴様。」
「この娘から、手を引くんだ!」
 しばらくの間、どちらの人も、黙っていました。
「オマエはこいつが、どういうやつなのか知っているのか?」
「そんなことは関係ない!」
「まぁ、よい!邪魔をするのなら殺すまでだ!・・・奴を、あの男を撃ち殺せ!!!」
 その声といっしょに、数人の黒服を着た兵のような人達は、男の人に向かって、ショットガンをいっせいに向けました。
「アーシェル、・・・お別れだな。」
 アーチェリーをもつ、その男の人は、黒服をまとうその人に、そう言われたあと、しばらく、表情をゆがめていました。
「・・・くっ!!!」

 辺りに銃声が響き渡りました・・・。




 俺は、不思議な感覚に襲われたのを感じた。直前、目に映った光景は、確かに俺に6つの弾丸が当たる、その直前の様子だった。俺は、暖かい空間に包み込まれていた。感覚もなにもなくなっていた。しばらく、俺は、死んでしまっていたのだと錯覚していた。
「・・・ほぅ、さすが、ルシアの娘だな・・・。」
 俺ははっと我に返った。辺りの光景は数十秒前と何も変わっていなかった。
 ただ、その少女は、その場にしゃがみこみ、息も絶え絶えになりながら、何かを口にしていた・・・。
「・・・なぜ、お母様の・・・名前を・・・。」
 隊長は、ゆっくりと飛行艇の方へと向きを変えた。俺は、それはただ見ていた・・・。
「・・あなたは・・お母様のことを・・・知っているの?!」
 隊長はゆっくりと飛行艇へ戻りながら静かに答えた。
「俺は、知らない。だが、お前が知るべきことでもない。
 何も、知る必要などない・・・。」

「なぜ・・・みんな・・・だまるの・・・。」
「一度戻ろう・・・。」
「なぜだ?!」
「俺たちは、これ以上何も出来ない。」
「たった一人の小僧と小娘相手になぜ、怯む?」
 隊長は、黒服共を飛行艇へと戻らせた。飛行艇はゆっくりと上昇していった・・・。そして、扉を閉める直前、隊長は、俺に向かって叫びかけた!!
「・・・アローを・・・、放ってくれたな・・・。ちょっとした、お礼だ。・・・受け取れ。」
 頭上から、得体の知れない奇妙な物体が落ちてきた。・・・液体とも固体とも言えない、不思議な生命体・・・。
「グリーンスライム・・・だと?!」
「せいぜい楽しむといい。」
 俺は、ようやく体の感覚を取り戻し、その少女の目の前へと走り寄る!!
「下がっていてくれ!」
 少女は目の色を変え、俺の腕をつかむ!
「また罪のない生き物を殺すつもりなの、あなたは!!」
「違う!!」
「もう私に関わるのをやめて!」
「とにかく後ろに下がれ!」
 グリーンスライムが、足元に集まり始めた・・・。俺は、それらに対してアローを放つ。グリーンスライムは、その体を自由に動かし、アローを避け、俺の脚へと、巻きつき締め付ける!!
「ぐはぁ!」
 グリーンスライムはじわじわと俺の体力を奪っていく!
「こいつら・・・普通の生物じゃない。俺の攻撃が効かない!!」
 俺は、懸命にそれらをふりほどき、タイミングを見計らって、少しずつ、アローで、グリーンスライムの体力を奪っていった。それは、次第にゆっくりとなっていくグリーンスライムの動きで明らかだった。
「なぜ、・・・どうして、そこまでして、あなたは、私に・・・私に関わるの?!」



 俺は、ふらつきそうになりながら、その少女の質問に答えた。
「俺は君に、・・助けられ・・・・た。・・・あのまま君を見過ごすわけにはいかなかった・・・。」
「私はあなたを助けたつもりはないわ!誰があなたみたいな人を!!」
「ブルーラットは・・・げんきなのか?」
「・・・わ、私たちの看病で元気になったわよ。あなたは罪のない動物たちを殺す人。あなたを私は許さない。」
「俺は・・あいつらを、・・・助けて・・・やろうとしているんだ。」
「えっ?」
 俺は深呼吸をして叫んだ!
「もともと人間と動物はともに暮らしていた。だが、謎の病気によって突然、動物達が狂暴化してしまった。俺はそれを元に戻してやりたい!その思いで、今までこの仕事をし続けているんだ!決して、殺したりしたりはしない、させるものか。」
 その少女には、未だに俺に対する怯えがあるようだった。そして、俺のことをまだ、信用してはいなかった。どこかで、俺を避けようとしている雰囲気が、伝わってきていた。
 だが、俺は、このまま立ち去るわけにも行かなかった。
「とにかく、ここは、危険だ!俺についてこい・・・。」
 山道は、明らかに雰囲気が変わっていた。俺達の足音に気付いた、その凶暴化したモンスターたちが、突如、俺達に対して襲い掛かってくる。その量も比べ物にならないほど、大量になっていた。
「村までは必ず、送る。・・・俺を信じろ!!」
 グリーンスライムに多くの体力を奪われたにも関わらず、俺はその命を懸けて狂暴化してしまった動物にアローを放つ。
 その大量なモンスターの数に動揺していたこともあったが、俺は、何か分からない、大きな使命のようなものを感じていた。
 もう夕方も近くなって二人は村の前についた・・・。 すでにアーシェルは今にも倒れそうになっていた・・・。
「さぁ、ここまでくれば、一人で行けるだろう。俺は、村には行けない。はやく、村にもどれ!!」
 その少女はその言葉を振りほどくように駆け出した・・・。俺は、それを静かに見送り、帰ろうとした。
「ありがとう・・・。」
 俺は、背後から小さく少女の優しい声を聞いた。ゆっくりと、俺は、その少女に振り返った。だが、その姿は、その村の中へと消えていた・・・。

 俺は、静かにその場を立ち去った。




「マーシャ!!いったい何があったんだ!!!」
 お父様は、私にとても心配されたような口調で話し掛けてきました。
「わ、私は・・・え、ええと。」
「・・・ここで話すのはやめよう。・・・中に入りなさい。」
 私は、今日起こった出来事をすべてお父様にお話ししました。お父様は、静かに聞いていましたが、やがて、静かに私に話し掛けてきました。お父様の顔は、いつもの優しさはなく、とても厳しい表情でした。
「まだ、早いと思っていたのに・・・。もう、時が来てしまったというのか・・・。」
「どう言うことなの?」
 お父様は、奥にある古びた宝箱の鍵を開けて、何かを取り出されました。
「これは、マーシャのお母様が使っていた杖だ。それと、これがワンダーマントだ。よく使いこんであるから安心しなさい・・・。」
「これは・・・。」
 ところどころ縫い直されているところがありましたが、何か不思議な力を感じました。お父様は、やがて、私に真剣な目つきで話されました。
「よいか、もしもおまえに何かあったら、おまえはこれを身につけて暮らしなさい。」
「どっ、どういうことなの?」
 お父様は静かに目をつむり、つぶやき始めた・・・。その声は静かに、そして次第に激しくなってゆきました。
「すまない・・・マーシャよ、・・・許しておくれ・・・。」
「・・・ね、・・・ねむ・・・い。」
 私は、そのまま眠りについてしまいました。やがて、お父様は、私を抱きかかえ、静かにベッドへと下ろしました。
「よし、これでいいんだ・・・。」
 扉から村の人達が入ってきました・・・。
「お時間です、神官様・・・。」
「よし、皆、武器を持て!最期まで戦い抜く!!!」



「ほぅ、皆さんで阻止しようというつもりですか・・・。」
「貴様らは、一歩たりとも村に入らせぬ!!」
 銃声が轟いた・・・。
「悪いが、お遊びはこれまでだ!」
「くっ!」
 回りが闇に包まれたと思うと突如、激しい閃光が、辺りをつつみこんだ!!
「なんだ?!」
 村長の放ったその、閃光は瞬く間に黒服の者達の半数を包み込み焼き尽くす!!
「それが我々に対しての答えというわけだな!!」
「そうだ、今すぐここより立ち去れい!!」
 再び、村中に銃声が轟いた・・・。
 村長は、その黒服にのど元をつかみあげられる!!
「死んでも、お前等を村に入れるわけには・・ゆかぬ!!」
「望み通り死ぬか!!!」
 目を見開き怒鳴りあげるが、のど元をつかんでいた敵は急にその場を離れた・・・。
「殺れ!」
 合図されると同時に銃声が轟き、無残なまでの虐殺が始まった。誰もが泣き、叫びながら無残な最期を遂げた・・・。だが、決して誰もそこから、離れようとするものはいなかった・・・。
「まだ、これでもだめか?!」
「・・・きっ、貴様らぁっっっ!!!」
やがて、黒服は静かに前に進み出て右手を突き出した。
「いいだろう。村ごと燃やしてくれる。少女とともに、息絶えるがいい。」

 術者の右手から放たれた巨大な火の玉はすべてを包み込み始めていた・・・。

「きっと、どこかで、いきてるさ・・・、だから・・・。」




―――どこからか声が聞こえる。―――

―――誰の声だろう?―――

―――熱い。―――

―――何がおこったというの?―――

―――みんな?―――

「おい!起きるんだ!何をしてるんだ!早くしないと死んじまうぞ!!」
「・・ん?えっ!!!」
 私は、あまりの恐ろしい光景に思わず息を飲んでしまいました・・・。辺りは、血のように真っ赤に染まって、激しく揺れるその熱い風が、聖堂を包み込んでいました。
「奴ら、村を燃やしやがった!!・・・なんて事をしやがるんだ?!」
「待ってよ!お父様は!!村のみんなは!!!いったいどうしたって言うの!?」
「そんなこと言ってる場合じゃない!!とにかく急げ!」
 もう、私は何も考えられなくなっていました。
「危ない!!!」
 とっさに私は、その人に抱きかかえられ、聖堂の窓を破り、外へと下り立ちました。その男の人に抱きかかえられたまま、私は赤い悪魔に焼き尽くされる、・・・その地獄をいつまでも見つづけていました・・・。
「出口だ!急ぐぞ・・・」

「―――ここは?」
 私が、目を覚ました時には、周りの様子は一変していました。私は、テントの中で、横になっていました。
「気がついたのか、よかった。」
「あなたは?!」
「・・・アーシェル。」
 私はそこで再びあの光景を思い出しました。
「みんなは!お父様は!村で何があったというの?!」
 アーシェルと自分のことを言うその人は、私の肩をつかんで話し掛けてきました。
「落ち着け!!ここは俺のテントだ。おまえの村は・・・奴らに・・・。」
 私の瞳からは突然、こらえていた涙が溢れ出しました・・・。肩を持つその男の人の手は、かすかに震えていました・・・。
「そうだ・・・。」
 その人は私に、ブルーラットを差し出しました。
「脱出する時に一緒に連れ出した・・・。・・・俺には、それだけしか出来なかった。」
「・・・ありがとう・・・。」
 私は自然とその言葉を男の人に話していました。
「あんな火の中で無事にいられたのは、きっと君のお母様の力なんだろうな・・・。」
「私の・・・お母様・・・。」
 男の人は立ち上がって私に背を向けて、話し始めました。
「とにかく!嫌なことは忘れな。今は、ゆっくり体をやすめてくれ。
ここにいても今はどうしようもない。あしたにはふもとに行くからな。」

「・・・うん。」
 私は、やがてまた眠気に襲われて、そのまま横になりました。静かに寝息を立てている私のそばでその人は私にそっと声をかけました。

「きっと、どこかで、いきてるさ・・・、だから・・・。」




 俺は、その少女に対して、とにかく明るく接しようとした。
「よし!行こう!!」
哀しみに満ちたその顔を見ていると、どこか自分までもが、哀しい思いにさせられそうになるのを覚えた。
「えぇ。行きましょう。」
 その少女もまた、なるべく明るくしようとしているようだった。
 哀しみを乗り越えようと、精一杯の笑顔で優しく俺に微笑みかけながら、立ち上がった。俺達は、テントをたたみ、その場を後にした。

 ここは、ふもとからは、遠く離れた北の地だった。深い渓谷の横に、どこまでも道が続いていた。この先に、俺の故郷はあった・・・。
「グリーンスライムか!」
 俺は、とっさにアーチェリーを構える。
「・・・私も、戦う!!」
 少女は、決意したようにロッドを構え、グリーンスライムに向かう!!勢いよく振り落とすも、グリーンスライムは、その攻撃を避ける!!
「ここは、俺に任せろ。・・・下がっていてくれ。」
「あなただけに、まかせてはおけないわ。」
 少女は、俺の声を無視し、攻撃を続ける。突然俺は、背後から冷気を感じた!!
「何が起こったんだ?」
「ブルーラット・・、あなた!!」
 動きの鈍くなった、グリーンスライムを少女は、ロッドで叩き付ける!!
「よし、下がるんだ!!」
 グリーンスライムは、やがてこちらへの攻撃を止め、渓谷の奥へと逃げた。そのような戦いが何度か繰り返しているうちに、町が遥か遠くにみえる場所まで来た。
「キャンプ場だ。・・・まだ、先は長い。一度休もう。」





 あいつが、この街を出てから、もう数日経ってる。別に珍しいことでもないけど、アーシェルの顔を見ないと、なんとなく、調子が狂う。
 ひとりでに、私は街の北門に立っていたわ。あいつがこの門を通り抜けていった時も、私はここにいた。
 もう、辺りはお昼になって、みんなは事務所の方に戻ってる。でも、なんとなく私は、北門からアーシェルが帰ってくるはずの、その道を眺めていた。
「あっ・・・。」
私は、遠くに何かの影を見つけた。
「・・・ここが、俺の故郷。イシェル。」
「どこに行っていたのかと思えば。」
 突然、後ろから声をかけられたときの、アーシェルの奴の驚き様はなかったわ。
「あんたが居なくてどれだけ大変だったか、分かってるの?!」
「シーナ、・・・分かってくれ。いろいろとあったんだ。」
 私は、声色を変えてアーシェルに問いただした。
「で、・・・その娘が、あんたの言う、いろいろ?・・・仕事していたのかと思えば。」
 アーシェルは、いまさらのように慌て始めたわ。
「と、とりあえず、事務所へ行こう。こんなところで、は、話さなくてもいいだろ?」

 アーシェルに連れられて行くその女の子と一緒に、私は事務所へ行った。

2008/12/05 edited (2001/09/22 written) by yukki-ts next to