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[stage] 長編小説・書き物系
eine Erinnerung aus fernen Tagen ~遠き日の記憶~
悲劇の少女―第4幕― 第28章
(92日目昼)
上に走って行ったマーシャを俺達はそこで待ちつづけた。
その時だった。突然、激しく光が、この船全体を包み込んだあと、
その光は一斉に、南東の方角をさし始めた!!
「この方角は・・・、クリーシェナード大陸・・・か・・?」
「まさか!!お、おい!!・・・海流が・・・。海流がとまった!!!
今なら・・・、―――出航するぞ!!!」
ハーディンは、操舵室へと走っていった。やがて、船は少しずつ動き始めた。
船は、雫の結晶の光が指す方向へ向かい、海を渡っていった・・・。
(94日目早朝)
長い船旅だった。俺は、10年ぶりにこの場所にたどり着いた・・・。
「・・・さあ、クリーシェナード大陸だ。・・・行くのか?」
「はい。・・それに、まだ、光はここよりも南を指しています・・・。」
「それじゃあ、ここまでだな。いい加減、この船にもガタが来ている。
―――お前の手下達は、俺がしばらく面倒を見る。
今は、これから先のことだけを考えろ・・・。」
「絶対に、賞金首だって、突き出したりするんじゃねぇぞ、分かってるな?!」
「当然だ・・・、さぁ、行け。」
「・・・後の事は、頼んだ。」
「世話になったな・・・。」
「さようなら!ありがとうございました!!」
「やる事が全部終わったなら、ここに戻ってくるといい。迎えに来る・・・。」
船から外へと出た。俺にとって、この海岸の風景は、懐かしいはずだった・・・。
―――俺の記憶と、今、目にしている光景は、あまりにも違っていた・・・。
それでも、俺は、希望を捨てなかった。故郷へ続く道は、まだ残っていた。
「こ、ここ・・・が、・・俺の、・・故郷―――。」
ザヌレコフは、ただ、その集落を見て、絶句していた。
別にザヌレコフだけじゃない。俺も、マーシャも、・・・言葉を失ってしまっていた。
その集落の家々は、皆、無惨に荒廃しつくしていた。辺りからは、
長時間吸い続けていれば、確実に死に至るであろう、有毒ガスがたちこめていた。
「き、聞いてはいたが、・・・ここまで、酷いのか・・、死の大陸は・・・。」
「こんなの、・・ひどすぎる・・・。」
ザヌレコフは、1人で集落の中へと入って行った。マーシャは、無言で
その後を追いかけていった・・・。
向かった先にあったのは、1件の家だった。その腐りきった扉を開き、
きしむ床の上に、ザヌレコフは足を踏み入れた・・。
「た、ただいま!!・・と、とうちゃん、かあちゃん!!・・ジュネイル―――」
荒れ果てた家から、何の声もすることはなかった・・・。
「おまえの家・・、なのか・・?」
「―――ああ。・・・そうだ・・・。」
「ザヌレコフ・・・さん―――」
ザヌレコフは、やがて、一切何もしゃべらなくなった。黙ってうつむくばかりだった。
「―――なぁ、・・・今、何か、聞こえなかったか・・?」
人気の一切ないであろう集落―――、いや、俺は、確かにその気配を感じ取った。
それは、誰か、人の気配のようだった・・・。
「・・ジュネイル?―――ジュネイルなのか?!」
「いや、違う・・。だが、・・この気配、・・・知っているような気がする・・・。」
「えっ?」
「よく耳を澄ませるんだ・・・、何か聞こえるだろう?」
「―――聞こえる・・・、人の声・・・」
その気配は、さらに近づいてきた・・。
ザヌレコフは、ソードを抜いた。俺も、それにつられて、アーチェリーを構えた。
女の声だった。やがて、それは、すぐそばから聞こえてきた。
「・・・ねぇ、ここには、誰か、生き残ってる奴がいるの・・、
居るなら、返事しなさい・・、どうなのよ・・・」
「・・・誰だ!?・・・姿を見せろ!!」
「やっぱりそうだ・・。・・・この気配、アーシェルだわ。」
「え?」
扉の向こうから顔を出されたのは、紛れもなく、シーナさんでした。
「・・・シーナさん!!!」
「マーシャ!!・・・やっぱりそうだわ!!・・・また、逢えたわね!!」
「シーナ、・・・おまえ、こんな所にまで、何を・・?」
「・・・この光を追いかけて、ここまできたんじゃない!!
・・・でも、やっぱりそうだった。・・・光は、マーシャの光だったのね。」
「で、・・・おまえは、・・・ここまできて、・・・何か、分かったのか?」
「何も。・・・ぜんぜん、さっぱり何もわからなかったわ。」
「は?」
「・・・きっと、私は、まだ過去を知るだけ生きては、いないっていう事なのよ。
―――それに、・・・私の過去は、この子が知ってる。」
シーナさんは、肩に乗っていた赤い羽根をした鳥さんを私に見せてくれました。
「かわいい!!!」
「やっぱりね。・・・マーシャなら、そういうと思ったわ。
・・・でも、正直。こいつ。・・・寝てばっかりなのよ!!」
「寝顔もかわいい!!」
「―――あああああ!!!」
私は、あまりの事に、恥も忘れてすっとんきょうな声を上げて驚いたわ。
「ど、どうした!?」
「なんか、場違いな雰囲気だなと思ったら!!・・・ザヌレコフ!!
―――大盗賊が、マーシャのすぐ近くにいるじゃない!!!
・・・い、今すぐ、私が燃やしてあげるわ!!!」
「まままま!!待ってください!!!!」
そんな私を、どういうわけだか、マーシャが必死に止めてきた・・・。
「な、なにすんのよ?せっかく、人が、復活した私の炎を見せてあげようとしたのに。」
「ザヌレコフさんは、今はもう、私達の大切な仲間です!!」
「違う・・、何度も言わすんじゃねぇ・・・。」
「・・・ほら、違うってさ。あんたを狙ってんの。わかってる?」
「いいえ、本当に違います!!」
「シーナ、お前・・、雫の結晶―――ひとつでも持っているのか?」
アーシェルのとぼけた質問に私はすぐ答えたわ。
「んな、わけないじゃない。・・・言ったでしょ。・・・手伝えないって。」
「そうか、・・それなら、この大悪党の方が、まだ使えるな。
・・・こいつは、ちゃんと持ってるんだぜ。・・・結晶を。」
「・・・な!?・・・ど、どういうことよ!!・・・もう、奪われちゃったの?!」
「騒がしいな。・・・分かるだろ?俺は、今、感傷にひたってんだ。静かにしてくれ。」
「分かるか!?い、いいわよ!!・・どうせ、私は、そんな大悪党にも満たない、
役立たずよ!!!文句あんの!?えっ、どうなのよ?言ってみなさいよ!!」
「シーナさん・・・。」
(94日目朝)
「さぁてと。・・・もう、けじめはついた。どうする、行くんだろ?
雫の結晶がさす、この方向によ・・・。」
俺は、立ち上がって、ソードを、マーシャの雫の結晶の光がさす方向へ向けた。
「え?そ、その光、・・・マーシャを指してたんじゃないの?」
「え、ち、違いますよ?」
「な、そ、そうなら、そう言いなさいよ!!完全に無駄足じゃない!!
それなら、話は早いわ!!この方角にあるものなんて1つしかないわ!!」
「何があるんだ?」
「―――クリーシェナード神殿よ。ぐずぐずしてんじゃないわ!!戻るわよ!!」
「ふふ、やっぱり、シーナさんですね。」
「・・ああ、そうだな。」
「どういうことよ?」
「雑談してんなら、置いてくぞ、お前等・・・。」
「ええ、さっさと行きなさいよ、どこへでもね!!」
(96日目早朝)
ルストローノの集落から、クリーシェナード神殿までの
長い道を歩いて、たどり着いたのは、夜明け前頃でした・・・。
「これが・・・、クリーシェナードの・・・都―――」
「驚いたわね、・・あんたが、この大陸出身だったなんて・・・。
ずいぶんあんたが知ってる都の景色と違うんじゃなくて・・?」
「・・・ああ、もっと、にぎやかで・・・、人もたくさんいた―――。
店も、たくさん・・あった・・。」
「ふん、普通のこと、言ってんじゃないわよ。それじゃ、こいつらに、
―――ここがどんな街だったかなんて、・・・伝わるわけ・・ないじゃない。」
私には、とても、お2人が言っている街が、今、私達がいるこの場所だとは、
思えませんでした。ルストローノの集落と同じように、ここもまた、
もう、街とは言えないほど、建物はくずれ、水路も枯れ、草木も生えていない地面は、
ただ、灰色一色でした・・・。
「マーシャがいるせいかしらね。モンスターも襲ってこないわね・・・。」
「ああ・・・、ここまで崩壊し尽くしていれば、もはや、
モンスターがいない方が、不思議なんだが・・・。」
それから、シーナさんに連れてこられた場所に、私達は、その神殿を見つけました。
「・・・なんて、立派な神殿なんだ・・・。」
「私が最初に来た時には、・・・こんな輝いたりしてなかったのに・・、何で?」
「雫の結晶を、集めたから・・でしょうか?」
「そうなのかもしれないな・・・。」
「さ、どうするの?・・・入る?」
「待て・・、俺達は今、3つしか雫の結晶を持っていない・・・。
このままでは、恐らく入れないだろう。」
「あぁ?!何言ってんだ?―――そこに扉があるだろうが?!」
ザヌレコフさんはそう言って、扉に近づきました。
ところが、とても強力な結界がザヌレコフさんを拒絶してしまいました。
「だめ・・・か。」
「あと1つ。・・・あと1つあれば、入れるのに!!」
「おっ?・・・あつまってんじゃねぇかよ!!」
「えっ?」
それは、息を切らして走ってきた、ディッシェムとセニフの姿だった。
「この光のスジを辿れば、たどり着けると思っていたが、やはりそうだったな。
―――私達は、雫の結晶を1つ見つけた!!」
「こっちは3つよ。・・・全部で4つ揃ったわね!!」
「よっしゃ、これで入れるんだな?!」
予想通りの反応だった。ディッシェムはスピアを握り締めていた。
「さぁてと・・、マーシャさんよぉ・・、そろそろ、話してもらえるか・・?
大盗賊―――ザヌレコフとつるんでる理由をなぁ!!」
「・・・そ、それは・・・。」
「俺に構うな。・・・別におまえらの仲間の輪に入ってるわけじゃねぇ。
―――ただ、今は、じっとテメェらのやる事を見てるだけよォ。」
「・・・ち、ちくしょう、待ちやがれ!!」
「・・やっと、追い詰めたわよ!!!」
「う、ウソだろ?!あの連中、結局、ここまで追いかけて来やがったのか?!」
「あ、あれ・・、ザヌレコフ様・・?」
「ディアロス・・?」
「はぁはぁ・・・、こ、こいつらが、・・・雫の結晶を―――持って・・」
「あ、ああ。知ってる。お前達・・、ずっと、こいつらを・・?」
「あ、はい・・。さぁ、いい加減、俺等によこしてもらおうか?!」
「テメェもしつこい野郎だな?!」
「ディッシェム・・、経緯はどうあれ、確かに雫の結晶はここに集まった。
ザヌレコフ・・・、お前がこれまで何故雫の結晶を求めてきていたのかは、知らない。
・・1つだけ、どうしても解せない事がある。何故、お前は、
ティルシスのロベルタクスソードを持っている?理由を話せ・・・。」
「テメェ!!・・・ティルシスの奴を!?・・・何故、知っている!!」
「・・・質問で答えるんじゃない。あいつは、そう容易く死になどしなかったはずだ。
・・・もし、おまえが、そのソードを持つせいで、ティルシスが逝ったと言うのなら、
―――私は、おまえを許すわけにはいかない!!」
「ちっ、やるのか!?・・・テメェ!!」
「10年前、私は、ここを訪れた。私と、ティルシスは共にここにいたのだからな・・。」
「・・ど、どういうことだ?!」
「・・・そうだ。あの日、私達は、ここにいた。―――今日の、この日の為に・・。」
「この日の・・ため?いったい、10年前、・・・ここで、お前達は、・・・何をした?」
「いい加減、聞かせなさいよ。・・・10年前、ここで、何があったのか・・・。」
「ザヌレコフ・・、今、お前のそばにいるマーシャ・・・。かつて、私がティルシスら
と共に旅していたときの仲間、ルシアの娘・・・、―――『悲劇の少女』だ・・・。」
「悲劇の・・・少女?―――し、知ってるぜ。あの忌まわしい『悲劇』を
引き起こした・・・、張本人―――。」
「ザヌレコフ・・さん・・・。」
「おい、もったいぶらずに答えろ・・・、セニフ。
―――お前は、これから、俺等に、・・・何をやらそうって気だ?
まさか、・・・また『悲劇』を起こそう・・・なんて思ってるんじゃ、ねぇだろうな?」
「これからしようとする事とは違う。まだ、その時が来たわけでもない。」
「けどよ、お前は、言ったよな?!今日のこの日のためだってな?!」
「忘れたわけではあるまい。マーシャについていくことの覚悟を聞いたことを・・・。」
「・・・。」
「―――ああ、そうだぜ。こいつは、・・・正真正銘、ティルシスの奴のもんだ。」
「まだいたのか。分からないなら、敢えて口に出して言おう。お前の出る幕など
ここにはない。お前の手下を引き連れて、どこか、遠くにでも逃げるといい。」
「冗談じゃねぇ。やっと、辻褄があったぜ。雫の結晶を追いかければ、
―――俺の仇どもに会って、・・・落とし前付けれるってことだったんだな・・。」
(96日目昼)
そこにいる人間、全員が、その野郎と殺りあう覚悟が出来ていた。
「・・・悲劇の少女と・・、そのお仲間ご一行様か・・・。」
「ザヌレコフ・・・さん?」
「どうした、大盗賊さんよ・・?かかって来やがれ。返り討ちにしてやらぁ。」
「どうせそんなことだろうと思ったわ。結構簡単に腹の内をさらしたわね。」
ザヌレコフの野郎は、マーシャの方を向いた。
「マーシャに、手ぇ出す気か?!」
「勘違い・・・すんじゃねぇ。―――手を、貸してやらぁ。」
「えっ?」
「悲劇の少女さんよ・・。その代わり、もう一度、・・・あんなこと、
やろうとしてみろ。―――その時にゃあ、この俺が、絶対に邪魔してやらぁ・・・、
命を掛けてでもなぁ・・。それまで、・・・俺が、テメェらを・・・。」
「・・・な、なんだ、テメェ。どういうつもり・・・だ?
テメェみたいな、盗賊風情が、・・・何を、・・抜かしてやがる・・?」
「ディッシュ・・、あんたも・・・、混乱してるんでしょ?
―――認めたくないけど、・・こいつの言ってる事、・・・おかしく・・ない。」
「・・・みなさん・・。」
それまで黙っていたセニフの奴が、口を開きやがった。
「・・・いいだろう。ザヌレコフ・・、そのソードを、持つ資格があるかどうか、
それは、お前自身がよく知っているのだろうからな。
―――そして、もう、十分、時は経ったのだからな。
私は、真実を、・・・告げなくてはならないのだろう。」
「とうとう、・・・話す気になったの・・?」
「神殿へ入ろう。―――全てが終わった時、・・・必ず、話すことを約束しよう。」
それから俺は、マーシャに闇の雫の結晶を渡した。マーシャは、軽く他の連中に
うなずいてから、4つの雫の結晶を持って、扉の前に立った。
扉の表面に刻まれてた模様に、雫の結晶からの光が伝わった。それが扉全体に
まわった時、その扉は、静かに開きやがった。
「行きましょう・・、私達6人、全員で・・。」
静寂を守るその神殿からは、例えようのない、邪悪な雰囲気が漂って来た。
「邪悪な気配が立ち込めている・・・。」
「こいつは、・・・敵だらけだな。戦闘になるぜ、きっと。」
「前は、私とディッシェムで守ろう。後の者は後ろから援護してくれないか?」
「待ちやがれ。・・俺が、先に行ってやろうじゃねぇか・・」
ザヌレコフは、私の命令を無視して、先へと進む。
「おい、テメェ!!何、勝手に行動してやがる!!協力する気があんなら、
こっちの命令に逆らってんじゃねぇぞ!!」
「手を貸すとは言ったが、誰が、お前らの言う事に従うって言った?」
「まぁ、いいだろう。ロベルタクスストーンの武具を持つ3人が揃うのならば。
・・・1人が仮に協力しなかったにせよ、十分だ。」
「俺は俺自身を守る。それだけだ。先に行くからな。」
「前だけで盛り上がってんじゃないわよ。なんだったら、私が前行ってやるけど?!」
「うるせぇ女だな。ひっこんでやがれ・・・。」
「っさいわねぇ!!あんたたち、心配しなくてもいいわよ!!
仮にこいつが遊んでても、私が、全部迎撃したげるわ!!」
「まだここは、入り口だ。先は長い、・・・奥へ行こう。」
「邪魔をする者は容赦するな!!私が倒す!!」
セニフはクローを構える。
「ちっ、遅れをとっちまった!!お前1人に任せてられるか?!」
「俺の獲物だ。1人で行くんじゃねぇぞ!!エクセレントクラッシュ!!」
だが、その横からディッシェムとザヌレコフもまた攻撃を仕掛け始めた。
「よ、よせ!!攻撃が当たらない!!」
「俺じゃねぇ!!このバカ野郎が邪魔なんだ!!」
「ちょこまかうっとうしい野郎どもだなぁ。俺の獲物に手を出すな!!」
3人が互いに足の引っ張り合いをしてるそばから、ダークマージは、
何かの魔導法を唱えた。猛烈な風と電撃を伴う閃光が3人に襲い掛かる!!
「ぐあはぁっ!!」
「・・っくっそぉ!!テメェらが邪魔しやがるせいだろうが!!」
「ねぇ、ちょっと!!あんたら、やる気あるの?!ないの!!
本当に、いい加減にしないと、三枚に下ろして、燃やすわよ!!」
「本当にやめておけ!!こいつは本当にやりかねないぞ!!」
「・・・な、ま、マジで言ってるのか、その女?」
「そっか、お前知らねぇんだな。早く慣れるんだな・・。」
「グラヴァティ!!」
そのすきに、セニフは重力でダークマージを押しつぶした。
「・・・な、人が目ぇ話してる隙に、何、一人で目立ってやがるんだ!!」
「目立つ?・・・そんなことしてる場合ではないだろう。」
最初は、こいつら3人に任せるのが、不安で仕方なかったけど、
だんだん、こいつらはこいつらで、互いの力を認め合おうとし始めたみたいだった。
「・・・ちっ、また、硬そうな野郎が出て来やがったな・・。」
「クリスタルガーゴイルだ。一体ずつ相手にするんだ!!」
「・・・1匹は、テメェらに任せる。あとは、俺が仕留めてやろう。」
「お前、俺ら2人で1匹仕留めろって言いやがる気か?!」
「いやなら、俺が全部しとめてやる。くらいなぁ、化けモンがぁっ!!」
私から見ても、ザヌレコフの奴の剣の腕が相当立つって事が分かった。
「頑丈な野郎だぜ・・・、マジで破壊してやらねぇとな!!」
クリスタルガーゴイルの奴は、ザヌレコフにバーニングスラッシュの構えを取ったわ。
そのまま放った攻撃を、ザヌレコフの奴は、何も躊躇せずに打ち払った!!
「そ、そんな簡単に、攻撃をいなしちゃうわけ?!」
何度か剣を交えてるけど、ザヌレコフの顔には明らかに余裕が見えたわ。
そんなザヌレコフの背後から、もう一体が攻撃を仕掛けてくる!!
「おっと、お前の相手は俺ららしいからな。勝手に、逃げてんじゃねぇぜ!!」
ディッシュの奴も、クリスタルガーゴイルにスピアを突きつけた!!
「ディッシェム、ザヌレコフ!!気をつけろ!!魔導法が来る!!」
「・・クリスタルブリザードだ!!」
「皆さん、続けてください、ここは私が!!マジックシールド!!」
マーシャの魔導法で、巻き起こった吹雪から、そいつらは全員無傷だった。
「こりゃあ、ありがたいぜ!!」
「グラヴァペタァッ!!」
「エクセレントクラッシュ!!」
そいつらは2体を同時に倒したわ。
「ザヌレコフ、貴様!!俺の獲物を・・邪魔しやがって!!」
「わりぃっ、間違えた。さぁて、残りは、こいつを・・・」
振り返るザヌレコフの目の前を、クリスタルガーゴイルが迫ってきたわ!!
そのまま、クリスタルガーゴイルの奴は、激しくソードで斬りつけてきた!!
「がはぁぁぁっ・・。」
(96日目夕方)
その攻撃で、ザヌレコフさんは、倒されてしまいました。
「お、おい、大丈夫か?お前!!」
「ちっくしょう、いきなり、攻撃してくるとはな・・・。」
そう言ったザヌレコフさんの横で、クリスタルガーゴイルは崩れてしまいました。
「ま、おかげさまで、脳天貫いてやれたんだがな。」
「・・・ひやひやさすんじゃねぇよ・・・。」
「無事なら、構わないが・・・。」
「よかった・・・。」
ザヌレコフさんは、ソードを拾うと、奥にある扉のほうに向けました。
「・・ありゃあ、ヤバそうな臭いがするぜ・・・。」
「いよいよ、神殿の中心部ってことか?」
「―――ああ・・、封印の泉・・、私達の目的の場所だ・・・。」
「・・・ずいぶん、テメェら落ち着いてやがるが・・、まさか、見えてねぇ
ってわけじゃ、ねぇだろうな・・?」
「ずいぶんと、でっかい飾りを、守りに立ててるわ・・・。」
シーナさんたちは、武器を持ったまま扉の方に歩いていきました。
そして、だんだん扉に近づいて行ったとき、初めて私は、それが、
扉を守っている門番であることに気付きました・・・。
「・・・簡単に、通してくれりゃいいんだがな・・・。」
「それが出来りゃ、苦労しなくて済むだろうよ。」
「―――グリーンドラゴン・・・。」
「・・・見て分かるでしょ?炎を吐くわ・・・、食らったら最期よ・・・。」
そして、扉の前に来た私達6人の姿に、扉を守るように目を光らせていた
グリーンドラゴンは、気付いてしまったようでした。
グリーンドラゴンの奴は、私を見た瞬間に、大きく口を開いたわ・・・。
「気付かれちまったぜ・・、全く―――。」
「・・・くっ、あのバカでけぇ口から、炎を吐くって気か?」
「のんきなこと言ってんじゃないわ。・・・オーロラバリア!!」
私は、突っ立ってたディッシェムを突き飛ばして、先頭に出たわ。
「・・・あんたの出番よ!!やっちゃいなさい!!」
私の肩から、フレイムバードが飛びたった・・。それと一緒に、
グリーンドラゴンの奴は、紅蓮の火炎を吹き出してきた。
それに対抗するように、フレイムバードは、ヒートバーストドームを唱えた!!
「何やってんの?ディッシュ!!あんたは、エクスプロージョンでしょ?!」
「人突き飛ばしておいて、そりゃねぇだろう!!」
「死にたいの?いいから、言う事聞きなさいよ!!」
「けっ、セニフ!!どけろ!!」
ディッシュもフレイムバードのあとを追いかけていった・・。
「あとは、あいつの爆風と私の魔法だけで、こいつの炎を止める・・。
ザヌレコフ、・・・斬り込みに行って!!」
「言われるまでもないわ、そのつもりだ!!」
「来るわ!!」
シーナ達の策を嘲笑うかのように、紅蓮の火炎は、部屋中のあらゆる場所に
駆け巡っていく。やがて、それらは、私達を包み込もうと迫ってきた・・・。
「ザヌレコフ!!さっさとケリつけんのよ!!」
ザヌレコフは、迫り来る炎を切り裂きつつ、グリーンドラゴンの足元まで走る。
「だとよ・・、こいつは、よく斬れるぜ・・・。」
ザヌレコフは、飛び上がりグリーンドラゴンの腹を斬り裂いた!!
「おい、ディッシェム!!援護しやがれ!!」
「初っ端から、・・・そう言ってりゃ、いいんだよ!!」
ディッシェムは、ザヌレコフの横から、スピアを激しく突く!!
「お、おい、シーナ・・・?お前・・。」
「くっ・・、なんで、炎の勢いが、・・・落ちてくれないわけ?!」
「取り囲まれた・・。」
「シーナさん!!」
「どうしよう、・・・だめ!!押さえきれない!!!」
突然、俺の背後から爆音がとどろいて来やがった・・・。
「シーナ・・、お、おい?!お前ら!!」
「前を向いてろ!!」
「なっ?!」
グリーンドラゴンの鋭い爪で、俺は、切り裂かれちまった・・・。
「バカやろう、他人の心配をしてる場合じゃ・・・」
そういいながら、ザヌレコフの野郎は、ソードで激しく斬り付ける・・。
「ねぇんだよ!!!!」
「・・・シーナ、生きてんのか・・?―――生きてたら、援護しに来い!!!」
返事は、返ってこない・・。
「何やってやがる・・、やられちまったのかよ?!」
「・・・こいつ、たいしたダメージを受けてないぜ!!――なんて頑丈なんだ!?」
「シーナ達を、・・・よくも、殺ってくれたなぁ!!―――テメェは、俺がぶち殺す!!」
俺は、思いっきりスピアを振り上げて、グリーンドラゴンの奴に飛び掛る!!
「おい、何をしやがる?!」
「こんな野郎は、こうしてやりゃあ、くたばるんだよ!!!デス・・・ショック。」
スピアが、グリーンドラゴンの体に突き刺さって、心臓をくし刺しにした・・・。
グリーンドラゴンの奴は、ものすごい声で苦しんでやがるようだった。
「やったか?!」
「・・・もっと早く、俺が、殺っていれば―――」
「まだ、倒してはいない!!」
さっきの爆音に巻き込まれたはずのセニフの野郎の声がした。
「なんだと?」
「何、1人で感傷に浸ってんの?」
「・・お、おまえら?!くたばっちまったんじゃ・・・」
「ふざけるんじゃない、・・俺らは何があろうと・・・、」
「この命掛けてでも―――」
「マーシャを護り通す!!」
「マーシャを守るのよ!!」
「アーシェルさん、力を貸してください!!」
「ああ。いくぞ!!」
「はいっ!!ディッシェムさん、ザヌレコフさん、よけてください!!」
「な、何をやらかす気だ?!」
「マジックアロー」
「フラッシュリング!!」
マーシャの奴がぶっ放したフラッシュリングが、1本の光のすじに集まって、
真っ直ぐ、グリーンドラゴンの野郎を貫きやがった・・・。
グリーンドラゴンの奴は、苦しみもがきながら、倒れて、動かなくなった・・・。
「・・・ったく、勝手に殺ってんじゃないわよ。」
「な、なんだ・・、心配さすんじゃねぇよ・・・。」
「私達は、大丈夫です!!」
「―――残るは、その扉の奥に進むのみ・・。」
(96日目夜)
突然、それまでの邪悪な気配が消えた。
「・・・どうしたって言うんだ?急に、・・何の気配もなくなった・・・?」
背後から爆音がとどろく!!
「な・・、しまった!!」
「・・・扉が・・・封印された!!」
「と、閉じ込められただと!?」
その瞬間だった。辺りの空間が、まるでこれまでとは別の、上も下も、
何もわからなくなるほどの異空間に取り囲まれた。
「・・・あっ!?」
それは、マーシャが上げた声だった。俺達5人はいつのまにか、中心にいた
マーシャを取り囲んでいた・・・。
そのマーシャが持つ、4つの雫の結晶が光り輝いていた・・・。
やがて、マーシャの手から離れ、空中に浮かび円を描くように、回転し始めた・・・。
まるで、あの時と同じように、マーシャの体は、青く激しく光を放っていた。
一際まぶしい閃光で目をつむった次の瞬間、マーシャのライトロッドが
空中に浮かび上がり、回転する雫の結晶の中心で止まった・・・。
「ど、・・・どうなるんだ!?」
「ど、どうしちまったんだ、俺達はいったい?!」
「な、なんだ、こいつは?!」
ディッシェムの持つその石がその力に異常に反応を示し始めた。
「ディッシェム、ロベルタクスストーンを雫の結晶の方に投げるんだ!!」
「あ、あぁ!!もう、どうにでもなっちまえ!!」
ディッシェムがロベルタクスストーンを投げた瞬間、激しい光が交錯し、
耐え切れないほどの膨大な力が、轟音とともに、この異空間内で、暴発した。
「マーシャ、・・・ライトロッドを、手に取るんだ!!」
やがて、ロベルタクスストーンの元に、4つの雫の結晶が凝集した。
雫の結晶の名の示すとおり、それらは、不思議な輝きを放つ雫となり、
ライトロッドを包み込む・・・。
「・・・これを、・・私が―――。」
マーシャは、ライトロッドに手を伸ばし、そして、強く握り締めた・・・。
その瞬間、ライトロッドに全ての結晶が集結し、その膨大な力を封じ込めた―――
「・・よし、間に合った!!」
「―――封印を、解く者よ―――。」
私は、その異空間の四方から響くその声に、戦慄を覚えた・・・。
もう、大抵のことには驚かないつもりだったけど、さすがの私も、
何が起こっているのか、何もわからなかった・・・。
「―――我らは、封印の三神。―――愚かな人間よ・・・。
闇の領域を侵す、その罪を、永遠の牢獄で償うがいい・・」
そして、それに答えたのは、ディシューマの研究所で聞いた、あの声だったわ。
「封印神よ。―――今こそ、その封印を解き放ち、我に力を授けよ!!」
「―――我らは、絶対の神。―――おまえ如きか弱き人間に、何が出来る・・」
突然、空間の一部が切り裂かれた・・、そこから、何かとてつもない力が
マーシャの方に飛んできた。巨大な竜巻となって襲いかかってくる!!
マーシャは、手に持っていたライトロッドで魔法陣を描いて、それを弾き飛ばした。
「私は、封印を解かなくてはならない!!―――ゴッド・・・トライフォア!!!」
マーシャのロッドから、強烈な電撃を伴った稲妻が、
歪んだその空間に向かって放たれたわ!!
「我らは、神。・・・神の力など、通用しない。」
別の場所の空間が切り裂かれ、今度は、数え切れないほどの隕石がものすごい速さで、
マーシャに激突してきた!!
「マーシャ?!!」
「・・・無力な・・。―――神に逆らうなど、不可能だ。」
3つ目の空間のゆがみからは、白く凍てついた空気が輝きながら
マーシャに吹き付けてきた。
マーシャは、それに向かって、つき進んで行ったわ!!
「私は・・・、負けるわけにはいかない!!!」
マーシャの体を包み込んでいる光が、すべての攻撃を無効化していった・・・。
「・・・この私、最強なる絶対の封神、アビュソルト様に向かい来るとは・・。
よいだろう、・・・己の無力さに気付くまでもなく、息絶えるがよい・・。」
「・・・マーシャ!!」
「俺達は、見ているだけしか、出来ないのか!?」
「ん!?・・何かが、来やがる!!」
「・・・いいか?・・・全員で迎え討つ!!―――覚悟は出来ているな!!」
「人間よ!!・・・自らの弱さを知れ!!」
俺の目の前まで来やがったそいつがぶっ放した何かの魔法を、
思いっきりくらっちまった・・・
「ディッシェム!!」
「す、・・すまねぇ・・・油断した・・・。」
「エ、・・エクセレントクラッシュ!!」
ザヌレコフの野郎がそいつに向かって、攻撃する。
その攻撃でそいつの動きが止まった。
「よっしゃ!!」
私は、何度もその2人に攻撃され続けていました。
「苦しめ!!・・・そして、永遠の牢獄へと堕ちるがいい!!」
「――フ、・・フラッシュリング!!」
「くっ・・、無駄な抵抗を・・・」
また、私は攻撃されて、真下に突き落とされてしまいました・・。
「・・あぁ・・あっ・・。―――もう、・・・だめなの・・?」
「ぐあぁぁっっ!!」
その時、私は、ディッシェムさん達が、もう1人の人の魔法に押しつぶされて
しまっているのを見ました。
「み、みんな!!」
「人間など、所詮は弱くか細き存在。―――神に逆らうなど、愚かなる事を・・。」
「許さない・・、人間だから、人間だからって・・・。
あなたたちは、神だからと言って、何故ここまでしなければならないのですか?!」
そんなときでした。私は、いつかどこかで聞いた事のあるその声を聞きました。
「―――マーシャ様、・・・私の声を、お聞きください。」
「あ、あなたは・・、あの時の?」
「マーシャ様の持つ杖・・、今のマーシャ様ならば、その力を引き出せるはず・・。」
それから、私は、その声に耳を傾け、その通りに杖に力を込めました・・・。
「―――なんだ、この気配は?」
「―――封印が解かれたところで、再び、杖を持つ者もろとも
封じればよいまで!!」
「闇の力よ―――、我が呼びかけに応えたまえ・・。
・・・封じられし闇の力を、今こそ、我に与えよ!!」
杖から、とても冷たく感じる何かが、私の体に流れ込んできたような気がしました。
(96日目深夜)
エターナルと名乗る者の猛攻を受け続けながら、私は、マーシャの異変に気付いた。
「マーシャ?!」
「おい、セニフ・・・、マーシャの様子が妙だ・・。」
「―――永遠の名を与えられし我から、ほんの刹那でも
逃れられたなどと思うな!!」
「また来るわ!!」
「ちくしょう!!こいつに、・・・勝てる気がしねぇ!!」
シーナとザヌレコフに、エターナルの放った魔導法が直撃する・・。
「このままじゃ、俺達、・・全滅だ!!」
「闇の波動―――、杖の力を解放しようとしている・・・。」
「・・セニフ、マーシャの奴―――、お前、もしかして?!」
「もし、支配されたなら、―――私と同じようになるだろう・・。」
「な、何?!と、止めなくていいのかよ?!」
「私達に何ができる・・?」
「お、俺は、あの時、止めてやっただろうが?!」
(86日目昼)
俺は、セニフの言ったことを聞き返した。
「な、何を言ってやがる?」
「そして、おそらくそれを見たのだろう。ザヌレコフの持つ物を・・・。」
「時の雫の結晶・・、ザヌレコフが持ってやがるって言うつもりか?」
「それなら、いくつかの疑問に一応の説明がつく。幻の雫の結晶を集落から
盗むことの出来た理由、そして、ザヌレコフ自身があのソードを持つ理由・・。」
「それなら、奴を追いかけて奪っちまおうじゃねぇか?!」
「いずれ、そうなるだろうな。だが、それを、この者達が許すだろうか・・?」
「奪われるのは、俺らでもザヌレコフ様でもねぇ。お前らだ!!」
「覚悟しろ・・、こっちは、この大勢だ!!2人に何ができる?!」
「許してもらう気なんかねぇさ。さっさと追いかけるだけ!!」
「―――ディッシェム、お前を信用しても・・・いいな?」
その時のセニフの声は、今までと違って、低い落ち着いた声だった。
「な、何をするつもり―――?」
セニフの奴は、バンダナを外した。その瞬間に、セニフのクローが、
今まで見た事もねぇような光を上げていやがった。その光を見た瞬間、
何か、いらつくような嫌な感情が込みあがってきやがった・・。
「・・闇の雫の結晶を・・・渡せ。」
「・・・い、いいのか?!こいつらの目の前で!!」
「構わない!!」
「お、おい、奴が雫の結晶を出しやがる!!そいつを奪え!!」
「け、けど、もう1人の奴の様子が―――」
「構うな!!この人数なら、力づくで奪える!!」
俺は、いそいで、闇の雫の結晶を取り出し、セニフに渡した。
その時の雫の結晶は、セニフのクローに反応して真っ黒な光を放ってやがった。
ディッシェムから雫の結晶を受け取った瞬間に、私は、流れ込む闇の波動に、
心を支配されぬように、精神を沈め続けた。
「盗賊どもよ。これが、闇の雫の結晶の持つ力だ―――、何もその力を知らぬなら、
お前達自身の目に焼き付けるがいい!!」
ロベルタクスストーンでつくられた私のクローで、闇の雫の結晶から放たれる
闇の波動を増幅した・・。やがて、その波動は、私達のいるその空間全体に
行き渡り始めた。そして、それは、確実にその影響を周囲に及ぼし始めた。
「な、なんだ、こいつは?!」
「う、うわっ、ば、バケモンか?!」
「ま、惑わされるんじゃない!!こ、これは・・。」
「おい?!なんだ?俺らの周りで飛んでやがるこいつらは?!」
「闇の波動により誘導された、幻界の者達―――。」
「くっ、・・苦しい・・・。」
「お、おい、・・・お前ら、どうした?!大丈夫か?」
「セ、セニフ・・・、お、おい・・、こいつら・・・。
―――もう、十分だろ?そろそろ、やめちまえ――― 」
セニフの野郎の顔が俺の知ってる顔とは比べ物にならねぇほど、ヤバそうな
表情に変わっちまってた。
「お、おい?!もう、十分だ!!何してやがる!!!」
「―――」
「そいつから手を放しやがれ!!」
俺は、必死になってスピアでセニフの野郎から闇の雫の結晶を手放させようとした。
だが、何かにはじかれちまった。
「な、や、ヤベェ!!」
俺は、その時、セニフの足元でぼんやり光ってるもんを見つけた。
そいつは野郎がとったバンダナだった。
「ま、まさか、こいつが?!お、おい、セニフ!!待ってろ!!」
俺は、そのバンダナを手に取った。あの時みてぇに、俺のスピアが光ってた。
俺は、わけもわからず、セニフの野郎をとりまいてる真っ黒い何かを
スピアで切り払って、一瞬できた隙間からセニフの手にバンダナを持たした!!
「おい、セニフ?!しっかりしやがれ!!」
「―――なんだ、ディッシェム?」
「なんだ・・だと?!テメェ!!何も覚えてねぇって気か?!
その手に持ってるもんは、何だ?!」
「・・・私のバンダナ、・・闇の雫の結晶―――。」
私は、右手に持っていたバンダナをしめなおした・・・。
「いきなり、闇の雫の持つ力がどうだとか言い出しやがって、
何をおっ始めるのかと思えば・・・。」
「―――私が、闇の力に、支配されそうになった・・・とでも言うのか?」
「た、たぶん、そうだろうよ・・・。」
私は、周りを見た。多くの盗賊が私を見て、何か恐ろしいものを
見るかのような表情を浮かべていた。
「と、とにかく、ここは、行こうぜ。なんだかんだ言って、こいつらビビらせたんだ。」
「に、逃がすか・・、絶対、逃がしてなるか?!!」
(96日目深夜)
あのセニフの野郎が負けちまう程の力。そんなもんを、
マーシャの奴がもし、まともに使っちまったら・・。
「ダーク、エナジースパーク!!」
「―――闇の力に支配され、自ら滅してしまうがよい!!」
「・・私がどうなろうと構わない!!・・・あなた達は、許さない!!
・・・神よ!我が願いを聞き届けよ。邪悪なる者を裁く力を我に与えよ!!
闇の輪となりて、包み込め!!・・ダークフォース・・リング!!」
マーシャの周りを取り囲んでた真っ黒いもやが、みんなフラッシュリングみてぇに
たくさんの輪になって、そいつにぶつかっていきやがった!!
「バ、バカな・・、わ、我が、体が―――崩れていく?!」
そいつの体は、その輪に何度も取り囲まれると、ゆっくり溶けていきやがった。
(97日目早朝)
「・・イ、イモータル?!おのれ、小賢しい人間め!!
すべてを消し尽くせ!!エナジースパーク!!」
「ダークフォース・・リング!!」
私は、持てる力を全て杖に込めました。ぶつかり合った魔法が、
押し合いながら、やがて、限界に近づいて暴発してしまいました・・・。
「我と同じ力を持つ?!そんなはずは・・・ない!!」
「―――その通りよ。封神の名を騙る、マルスディーノの息の掛かりし者よ。」
それは、今までに聞いたことのない声でした。
「き、貴様は―――。」
「この気配は、よもや、間違いあるまい。コロナ=クロリス・・・。」
「やはり、この者達は、闇の住人―――。」
「ついに、この時が来たというのならば、―――人間たちよ、持てる力全てを使い、
存分に戦うがよい!!我は、不滅の名を与えられし封神、イモータル!!」
「逆に我―――、お、俺達の力を封じやがった・・、小癪な真似を・・。」
「小細工は無しだ!!血祭りに上げてくれるわ!!」
ものすごい音とともに、私達の周りを取り囲んでいた空間が崩れていきました。
忘れるはずなどなかった。ここは、10年前に最後にたどり着いた場所・・・。
「封印の泉・・・。」
「・・・なんて、綺麗な場所なの・・。」
「この場所を、貴様らの血で染めてくれるわっ!!インパクトサイクロン!!」
「来るぞ!!」
「こっちから、行ってやらぁっ!!」
エターナルの放つ魔導法はマーシャのマジックシールドに全てかき消された。
「人間様をナメんじゃねぇぞ、テメェ!!」
私とディッシェム、そしてザヌレコフはそれぞれ、光り輝く、
ロベルタクスの武器を手に持ち、エターナルに向かった。
「生身の人間に、この俺の相手など出来るものか?!くたばれぃっ!!」
「ぐあぁっっ!!」
ディッシェムが、エターナルの攻撃を受ける!!
「エクセレントクラッシュ!!」
「貴様の攻撃など、もう受けぬわ!!」
ザヌレコフの攻撃が止められる。
「ならば、この攻撃も止めてみせるがいい!!グラヴァ・ペタ!!」
「ディッシェム?!」
「キュアッ!!」
「マーシャ・・、戻れ・・・」
「人間よ、砕き散れ―――、ダイアモンドダスト!!」
「あっ?!」
マーシャが離れた隙を見て、私とアーシェルの方に魔法をぶつけてきた!!
「あんたの出番よ!!」
私は、すぐにフレイムバードを奴の方に行かせた。
こっちの方にくる猛吹雪を、フレイムバードが唱えたヒートバーストドームが止める。
「ならば、直接手を下すまでよ!!」
そいつは、私達の方に向かってものすごい勢いで、走ってきたわ。
「レインアロー!!」
アーシェルの奴の攻撃がそいつに集中する!!
「まずは、貴様から、ハラワタかき回してくれる!!」
「シーナ、来い。スピードアップ!!」
「ふん、勝手に巻き込まないでくれるかしらね。まぁ、いいわ。」
俺が、マーシャから離れた時には、ザヌレコフとセニフの野郎も
息を切らしてやがった。
「ディッシェム・・、もう、いいんだな?」
「ああ、待たせたぜ。こいつの相手は俺がしてやらぁ。」
「待っちゃいねぇぜ。この野郎の首は俺が取るまでよ!!」
「溢れ出る程だったこの俺の力が・・、き、貴様らぁっ!!!」
「おいおい、弱音吐いてんじゃねぇぞ、テメェ!!」
「もういちど、くたばれ!!」
「・・・どっち、狙ってやがる。」
そいつは、思いっきり、俺の動きでほんろうされてやがった。
「ついてこれてねぇぜ、テメェよぉ・・・。」
「おのれ・・、闇の住人ども、俺に力を貸せ―――」
「ここまでだな。くたばっちまえ!!」
「―――シャドー・・ブレイカー!!」
俺とザヌレコフ、セニフの野郎が同時にエターナルの奴を攻撃した。
「この勝負、決着をつける!!」
「そうね、そろそろ茶番も終いにしましょ。」
「俺の配下の闇の住人共・・、俺に手を貸しやがれ!!」
アビュソルトの右手から何か黒い塊のようなものがいくつも
俺達の方に向かい、飛んでき始めた。
「いいな、シーナ?!」
「私の炎で地獄送りにしてあげるわ・・。いつでもいいわよ!!
・・・地獄でまた、会いましょうね―――。」
俺達は、アビュソルトの背後、至近距離まで迫り、武器をかまえた。
「トルネード・・」
「バーニング―――」
「スラッシュ!!」
「スラッシュ!!」
俺とシーナの攻撃がアビュソルトを貫く・・・。
「みなさん!!離れてください!!あとは、私がやります!!」
「マーシャ!!」
「最後のいいところは持ってっちゃうわけね。」
「やっちまえ、マーシャ!!」
「闇の住人達よ、・・・ここまでだ。」
私は、ロッドに全ての力を込めました。
「―――邪悪なる心を持つ、闇の住人達よ!!
・・・神の怒りを知れ!!!―――ゴッド・・・トライフォア!!!」
そう唱えた私の目の前に、その2人の方が現れました・・・。
「マーシャ様・・、いつでも、助けを欲する時は、その杖をもって、
私を召喚なさい。・・・イモータル、そなたの力を!!」
「我が封神の名において、闇の住人を、ここに封じる!!」
「お、おのれ・・・、悲劇の少女―――め・・・、」
「マルスディーノ様・・、お、お許しを・・・、グァァァッッ―――」
とてもまぶしい光が、2人の闇の住人達を包み込みました。
私達は、とてもそれを、目を開けて見ていることは出来ませんでした・・。
(97日目朝)
「・・・おい、みんな?・・起きてくれ!!」
俺は、シーナの体を揺すった。その時、少し離れた場所から、何かの光を感じた。
「こ、これは・・・、いったい?」
それは、光に包み込まれた、1人の女性の姿だった。
「・・君は、・・誰なんだ・・?」
「―――ジュ・・、ネイル・・?」
俺の背後で、信じられないものでも見ているかのような顔つきのザヌレコフが
その女性に少しずつ近づいていった。
「う、うそじゃねぇ・・・だろ?」
その女性は、まだ、周りの様子を見回して、少し戸惑っている様子だった。
ザヌレコフの奴は、疑う気も何もなしに、両手で彼女を抱きかかえた。
「ジュネイル・・・なんだろう?」
「お・・にい・・・ちゃん?」
「―――ジュネイル!!」
そんなやり取りを見ている時に、後ろから、誰かが俺の服をひっぱった。
「な、なんだ?」
シーナさんは、たまにザヌレコフさんの方をちらちら見ながら、小声で、
アーシェルさんに話しかけました。
「・・・ねぇ、あれ、・・・何?」
「何って・・・。」
「―――ディッシュ、あんたどう思う?・・私達、いつまで見てる気なの?」
ほとんど無理矢理起こされたディッシェムさんは、うっとうしそうに答えました。
「・・・仲間じゃねぇんだ、ここでお別れだろ?ほっときゃいいじゃねぇか。」
「い、いいのですか?」
「感動の再会って奴だろ?興味ねぇよ、あぁいうの苦手だしよ・・・。」
「あんた、人間としての心ってものがないのね。」
「あぁ?なんか言ったか?小声だと聞こえねぇんだよ。」
「だいたい、ちょっと、病的よ、あれ。まさか、あの面で、・・・シスコン?」
「―――雑談が過ぎるな・・・、もう、ここに用はない。立ち去ろう。」
「それがいいな。」
セニフさんもアーシェルさんも、立ち上がって外へ行こうとされました。
「ちょ、ちょっと待ってください。」
「なんだよ、マーシャ?ほっとけばいいだろ、あんな野郎・・・。その方が、
あいつのためって奴なんじゃねぇのか?」
「いえ、その・・、あの、・・・シスコンって―――」
「あぁ!!はい、もう、そこまで!あんたは知らなくてもいいの!!」
俺達は、ザヌレコフの野郎を置いて、神殿の出口まで歩いていった。
体中疲れちまってたが、気持ちはなんか晴れ晴れしてやがった。
俺達は廊下の途中で立ち止まった。
「お、おい、・・・あれは?」
「―――まるで、さっきの光と・・・同じ・・・。」
その娘は、俺達の目の前に、光に包まれながら、舞い降りてきた。
俺は、ただ、その様子をぼうっとしながら見てた・・・。
「―――悲劇の少女と、・・導かれし仲間達・・・。」
「・・・あ、あなたは・・・?」
マーシャは、俺の横を通って、その娘の前まで出て行きやがった。
その娘は、近づいてきたマーシャを見て、小さくてか細い声で、たずねた。
「・・・マーシャ・・さん、・・・ですね・・・。」
「え、・・は、・・・はい・・。」
俺は、いてもたってもいれなくなって、その娘に声をかけた。
「な、名前・・・何て言うんだ・・?」
「・・・ドルカ―――。」
「ドルカちゃん・・か。」
「マーシャさんは、・・・悲劇の少女―――ですね?」
その娘には、今んとこマーシャしか見えてねぇみたいだった。
「・・。」
「・・・マーシャ?」
「え、そ、・・そう・・よ。」
「今まで、・・どこにいたんだよ?」
その娘の声が、今までよりも、ずっとか細くなっちまった。
「暗い、何もないところ・・・、何も見えなくて、・・聞こえない―――」
そん時だった。ドルカちゃんが、目を閉じて、少しずつ体がかたむいてった。
「お、おい、あぶねぇ!!」
ディッシェムが、とっさにその女の子の体を支えてた。
「・・ま、マーシャよ、・・すげぇ、冷てぇ。―――こいつは、まずいぜ。」
マーシャは、まるでその声が聞こえないみたいに、ぼうっとしてた。
「おい?!マーシャ!!」
「え、は、はい!!・・でも、・・・どうして、私達のことを・・。」
「どうだっていいだろ?!早くしなけりゃ、ドルカちゃんが死んじまう?!」
「・・・ケ、・・ケミュ―――」
「どうしたんだ?!何が言いたいんだよ?!」
「―――ケミュナルス大陸へ・・・、私を、・・・連れて―――。」
「ケミュナルス大陸・・・。」
「その子、ずっと、そこに行きたがってたわ。」
私達は、その女の声に振り返った。
「えっ?」
それは、ザヌレコフと、ジュネイルという名の女性の姿だった。
「私達は、10年も前から、ここに封印されていたわ。」
「封印?」
「そうよ・・。あの時から、私達はずっと、たった2人だった。
何もない、闇の中で、たった2人で、今まで生きていたのよ・・・。」
「ジュネイル・・、いったい、なんで、こんな所に?」
「お兄ちゃん・・。―――私、・・家に、帰りたい。みんなに、早く、逢いたい・・・。」
もし、その女の子が、・・・ザヌレコフの妹だって言うなら―――。
私は、ザヌレコフの奴が呆然としてみてたあの集落の風景を思い出してた。
「この10年で、・・・とうちゃんもかあちゃんも、・・・みんないなくなっちまった。
もう、みんな、変わっちまったんだ・・・。」
ザヌレコフの一言で、その女の子は言葉をなくしたみたいだった。
「―――家に、帰ろう・・一緒に。」
「い、家って、・・あ、あんた――― 」
「世界を回って、俺は分かったんだ。―――過去を引きずったって、仕方がない。
これから、生きてくことを、・・・どんなに残酷なことだろうと、
考えてくしか、・・・ねぇんだよ。」
「・・・。」
「お、おい?!誰か聞いてんのか?!―――この娘はどうすんだよ?!!」
(97日目昼)
「お兄ちゃん・・・。―――私は、・・・一人で、帰る。」
「な・・、何言ってるんだ!?
・・・せっかく・・。せっかくまた逢えたのに・・・。なんで・・・?」
「私は、何度も、ドルカに助けられた・・。何度も、死んでしまおうと思ってた、
そんな私を、必死に勇気付けてくれたのは、・・・ドルカだけだった。
でも、私は、・・・そんなドルカに何もしてあげられない。悔しいよ・・・。」
「それなら、その娘も一緒に・・」
「きっと、お兄ちゃんなら、・・・ドルカを、救ってあげられる。
・・・だって、お兄ちゃんは、―――旅することができるんだから。」
「俺は、・・お前1人ですら、あの時、守ってやれなかったんだ・・・。
そんな俺に、・・出来るはず・・ない。俺は、もう誰も、失いたくねぇんだ!!」
「私だって、お兄ちゃんもドルカも失いたくなんかないわ!!
―――私、真っ暗な闇の中で、ほんの少しだけ、・・・少しだけ、
光が見えた事があったの。その時、お兄ちゃん、・・その方たちと、旅をしてた。」
「わ、私達と?!」
「・・・世界中を旅する、―――子供の頃からのお兄ちゃんの夢だったじゃない。」
「現実は、・・・そんな、甘くはねぇんだよ。」
「でも、私には、・・・とても、楽しそうに・・見えたよ?」
「俺は、この10年、一度も楽しいだなんて思ったことはねぇ!!
何もかも失っちまって、それをみんな俺が背負って、・・今まで必死で生きてきた。
もう、これ以上たえられねぇくらい、苦しみながらな!!」
「もう、私は、あの頃の私じゃないわ・・。10年経ったのよ・・。
―――もう、私、子供なんかじゃない。」
ザヌレコフは、そう言われて、言おうとしていたことを途中でやめた。
「―――本当は、その人たちと旅がしたい―――。
私には、わかるわ。本当のことを、お兄ちゃんが言ってないことくらい・・・。」
「お、俺は・・・。」
「お願い、1人で行かせて。―――私のわがままを聞いて。
・・・私の代わりに、ドルカを、・・助けてあげて・・・。」
その娘は、ザヌレコフに何かを手渡した。
「これ、お兄ちゃんがくれたお守り・・。ずっと、お兄ちゃんに返そうと思ってた。
いつか、きっと、・・・また、逢えるって信じてたから・・・。」
「・・・?」
「もう、覚えてないんだね。・・・お兄ちゃんがまだ小っちゃかった頃、
たった1人で、みんなが心配するくらいものすごく遠くの山まで、
1人で行って、頂上で取ってきてくれた石・・。お父さんにげんこつでなぐられて、
みんなに怒られた後で、誕生日のプレゼントって、きれいに磨いてくれた
このお守りをくれたんだよね・・・。」
「―――鉱石が取れるって・・、聞いてたんだよ、・・・ほんとは・・。」
「・・・気付いた時には、私は、このお守りしか持ってなかった。
ずっと、このお守りだけが、お兄ちゃんと私をつないでくれた・・・。」
「それなら・・・、持っていれば、いいじゃねぇか・・。
―――どうして・・、俺に返すんだよ・・・。」
その娘は、イタズラそうな微笑みを浮かべた。
「だって、やっぱり・・・、宝石じゃなくて、・・・普通の石なんだもん・・・。」
(97日目夕方)
「―――港に、俺の知り合い達が来る・・、きっと、
お前を助けてくれる。・・・1人でも、・・・元気でな・・。」
「それじゃ、・・・お兄ちゃんは?」
「おい!!マーシャ!!・・・何、さっきからぼさっとしてんだぁ?!」
「えっ?」
「あ、・・やっと気付いた。」
「その、ドルカって娘。助けてやるんだ!!
俺の可愛い妹の頼みごと・・、聞いてやれるよな?」
「あ、・・はい。」
「これで、・・・いいんだろ?」
「うん。」
俺は、マーシャの方に改めて向いた。
「マーシャさんよぉ・・・。こんな、俺だけどよ・・、命の1つや2つ・・、
救ってやれるよな・・・?」
「・・・はい。」
「そうと決まれば、急ぐまでだ。ここは、空気がよくねぇ・・・。
もっと、そうだな、・・・自然の多いところに・・。」
「ザヌレコフも、・・来る気なのか?」
俺は、そいつら全員の方に向いた。どいつも、俺のことを信用なんてしちゃ
いなさそうな顔だった。ディッシェムってガキは武器を構えようとしやがる。
「・・・テメェらに言ったこと・・、みんな忘れてくれ。なしにする。
―――ジュネイルを助けられたのは、・・・テメェらのお陰だからな・・。」
ザヌレコフさんは、突然、私達に頭を下げられました。
「な、何よ、どういうつもりよ?!」
「あたま・・、下げてんだろ・・。」
「感謝でもしてる気なのかよ、お前?」
「餓鬼にでも通じてるなら、・・・大丈夫だな。」
「誰がガキだ、おい?!」
「・・・なんか知らねぇが、お前らの事、・・・もっと知りたくなってきた。」
「お、俺達のことがか?けっ、やめろ、気持ち悪い。」
「誰がテメェの事だと言った?」
「えっ、じゃあ、私達ですか?」
「ちょ、ちょっと?マーシャ!!もし、仮にも『そうです』なんて返されたら、
どうする気なのよ、ちゃんと考えて発言してよ!!」
「おい!!」
「な・・、なんですか・・・?」
「心当たりは、・・・ないのかよ・・?―――こいつを救える、・・そんな場所はよ!?」
「そ、そうだよ、忘れてたぜ。おい、セニフ?!何かいい考えはねぇのか?」
「―――セリューク・・。・・・セリュークならば・・救えるだろう。」
「セリューク・・?」
「セリューク様なら、きっと大丈夫です!!それなら、いますぐ行きましょう!!」
「・・・ケミュナルス大陸も、その方角だ・・。」
「―――また、5人で、旅をすることになるわね・・。ま、がんばりましょ。」
「おい・・、俺を入れるのを、忘れてないか?」
「えっ?・・・あ・・・ごめん!!・・・すっかり、忘れてた・・。」
「・・・。」
「お兄ちゃんをよろしくお願いします!!」
「はい!!では、また、どこかでお会いしましょう。」
こうして、私達は、突然私達の目の前に現れた1人の女の子、ドルカちゃんを
助けるために、グリンディーノの森を目指しました。
「・・・『バルシド』も・・・『エターナル』らでも、役立たず・・・か。」
「―――奴等、確実に、力をつけているな。特に、テメェらが、
一番気にかけてる、その人間の女・・。このままじゃ、テメェも―――。」
「ふん。心配されるほど、落ちぶれちゃあいない。
だが、どうしても、じっとしてるのが嫌だってんなら、この俺が直接―――」
「マルスディーノが蘇るのを待つのが先なんだろ?何度も、愚痴聞いてるんだ。」
「ちっ、あのジジィか・・。迷惑かけやがる―――。」
「焦るんじゃあないさ。悲劇の少女だか、なんだか知らないが、
・・・テメェの力にかかれば、一発だろ?そっちにはそっちの考えがあるんだろうが、
俺は、俺で、もう少し時間がかかりそうだからな。」
「昔から、お前はそうやってネチネチした嫌な性格してやがる人間―――、
おっと、間違えたな。人の皮被った、悪魔・・か。」
「ただ、執念深いだけだ、バケモンよ・・・。」
「・・お、奴の気配だ。帰って来やがった・・・。」
「バケモンの飼い主か・・。どうせ、用がすんだら、テメェらのことだ。
ただじゃあすまさないんだろ?」
「―――さ、どうだろうな。まだ、俺は、こいつに、・・・飽きちゃねぇがな。
じゃあな、人間・・・。くっはっはっはっ・・・。」
その男は去っていくモンスターを見送り、薄笑いを浮かべていた・・・。
「・・・ちっ、バケモノめ・・。今だけだ、貴様らがバカ面並べて、
笑ってやがるのは・・・。」
古城から雷鳴轟く窓の外を眺めながら、その男はふとつぶやいた。
「―――悲劇の少女が苦しみ、泣き叫び、そして朽ち果てる姿か―――。
戯言につきあってやるのも、一興・・・か。」
その冷笑は、いつまでも古城に響き渡り続けていた・・。
「どうなされました?ティスターニア女王?」
まだ、辺りは暗かったわ。あたしに声を掛けてきたのは、部屋の見張りの兵だった。
ひどく汗をかいてた。ほとんど覚えてないけど、悪夢にうなされてたみたいだったわ。
「心配かけてしまったわね、もう、大丈夫。下がっていいわ。」
「はっ、何かございましたら、お声をおかけください。すぐ、参上致します。」
「ありがとう・・。」
眠れそうになかった。窓は、冷たく凍り付いていたわ。
「ホイッタ・・・呼んでくださる?」
「ホイッタ殿はすでにお休み―――、い、いえ、すぐにお連れいたし・・」
「いえ、いいわ。ごめんなさい。」
「よろしいのですか?」
「・・あなたでいいわ。ちょっとだけ、お話に付き合ってくださる?」
「わ、私めでよろしければ・・。」
その時、あたしの心は、もう、ボロボロになりかけてた。
「どうして、・・・こんなことになってしまったのかしらね・・。」
「女王様の責任ではございません・・、必ずや、いつか―――」
「いつか、あなたまでも巻き込んでしまうかもしれない・・・それでも?」
その兵は、答えようと言葉を探してるみたいだったけど、
いい言葉は出ないようだったわ。
「わ、私は、決して、そんなつもりでは・・。」
「あたしは、見捨てる事を選びたくはない、諦めるわけにはいかないと思ってる。
それでも、あたしがどちらかを選ぶことは、もう、国民は許してはくれない・・。
そして、・・・選ばず、こうして、隠れて逃げていることも―――。」
「女王様。・・ホイッタ殿を始め、兵は皆、女王の味方であります。
この国の行く末を、私共はこの命果てるまで、女王とともに・・・」
「そう・・、あたしが、弱気では・・・、ダメよね。
明日、ホイッタに相談する。このまま逃げずに、国民と向き合う機会を作らないと。
時間、とってしまったわね・・・。」
「いえ、女王様の元気を少しでも取り戻せただけでも、光栄であります。」
「体、冷やさないようにね・・。」
「女王様のお言葉、ありがたく頂戴いたします。失礼致します。」
あたしは、次の朝にホイッタに言うことを考えた。
「あたしは、一度、国の皆と正面向き合って話がしたい。
本当に今、あたしがするべきことを、・・・国民の皆に伝えるために・・・。
もう、皆に背を向けて、逃げるなんて、・・・出来ないわ。」
(98日目深夜)
「どうしたの?マーシャ・・。」
「え、あ、・・ご、ごめんなさい・・。」
「ずいぶん、ひどくうなされてるみたいだったけど・・。」
シーナさんの声で気付いた時には、とても汗をかいてしまっていました。
でも、どんな夢だったのか、もう何も思い出すことが出来ませんでした。
「・・・よく、覚えてはないのですが、とても、・・・いやな夢を・・。」
「疲れてるのよ、きっと・・。」
「そうなのでしょうか・・。」
「そう。夢くらい、楽しいものをみなくちゃ。ほら、楽しい事を思い浮かべるの。
そうすれば、きっと、いい夢が見れるわ。」
「楽しい・・こと・・・。」
「何か心配事があるのなら、忘れるの・・。
どうせ、嫌でも、明日になったら思い出さなくちゃならないんだから。」
「・・・はい。」
それから、少しだけ間があった後に、シーナさんは私に話し掛けられました。
「―――気のせいかしらね、少し、寒くないかしら?」
「・・・?」
「な、何とぼけた顔してるのよ?」
「だ、だって、そんなに着込んで、おまけに、フレイムバードちゃんまで
抱きかかえてるのに、・・寒いなんて・・・。」
「いいじゃない?!あったかいのよ!!」
「・・。」
「ああ、寒い寒い・・・、もう、私、寝るからね。いい夢見るのよ!!」
「はい、おやすみなさい。」
「おやすみ・・・。」
私は、静かに目を閉じました・・。
「―――う、ううっ・・。」
「・・ったく、今度は、ドルカがうなされちゃってるわけ・・?
はぁ、これじゃ、私、眠れないじゃないのよ・・、もう・・。」
私は、明日からのことを思い浮かべて眠りました。
明日からのことが、シーナさんの言う楽しい事であるかどうかは、分かりません。
それでも、きっと、明日は、昨日や今日よりも素敵な日であって欲しい。
今、私にできることは、そう願うことだけだから・・・。
2006/03/02 edited(2005/10/02 written) by yukki-ts To Be Continued.